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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第四章

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 義理の祖父母は敦也が少しだけ元気になって喜んでいた。順応じゅんのうの早い人達だ。もう家族の一員として迎え入れている。迷いが一切ない。すべてを受け入れ、すべてを照らすような太陽みたいな人達。幸せそうで、周りも幸せにしてくれそうな、立派な志を持った人達だ。

「無理しないでくれね。わし等はきみには幸せになって欲しいと思っている。とんでもない不幸があった。人生のどん底にいた。わし等にもそういう時代はあった。戦時中は、それはもう、仲間が死に、敵が目の前で死に、辛く苦しくて毎日血反吐を吐いておった。焼夷弾の欠片が脚に埋め込まれていて、わしはまともに走れん。わしの愛しい婆さんはわしのとお下だが、原爆の放射線に長い間被爆してしまい、先は長くない状態だ。きみはまだまだこれから先がある。もう二度と、自殺なんかしちゃいかん。幸せを知る前から、死ぬなんて、勿体ないだろう! これからは幸せになって欲しい……。幸せに暮らして欲しいと思っているよ」

 見返りを求めない、優しすぎる人たち。義理の祖父母は人格者。香名の正義感の強さの理由に帰結する性格の良さだ。香名も若干悩みどころがあるところを除けば、性格が良くて素晴らしい人だ。二十歳とは思えない。香名がああなったのは、この人達のしつけの賜物か。いや、厳しい躾をしていたのではなく、優しく諭していたのかもしれない。

「幸せというものがどんなものか、あなたに知って欲しいと思っていますよ」

「この人達が、私の家族。羨ましいでしょ。とても優しくて、最高なのよ」

「そうだ。血は繋がっていなくとも、わし達は家族なんだ」

 その言葉で、敦也は悟った。香名が天涯孤独の身だということを。

 彼女がいつも死にたがっているのは、早く両親に会いたいからなのかもしれない。




 敦也のリハビリテーションは数週間に渡る。全身打撲と複雑骨折、頭部挫傷ざしょう、内臓破裂を経験し、後少し遅ければ命はなかったと医師に説明された。正しく、生死のふちを彷徨っていた。二人の共通点がまた増えた。二度と経験したくない死線をくぐり抜けたが、話す内容が増えたことは素直に嬉しい。

 事故に遭い、緊急オペを施されたことによって、正真正銘の死と向き合うことができる。自分の思い描いていた空想、安楽な死ではない。本物の色濃い闇で、恐怖に埋め尽くされた、色のない暗黒の世界だ。得体の知れない何かが間近に迫ってきて、尋常でない怖気おぞけが走り、逃げても逃げても捕まってしまう。もうダメだと観念して目を瞑った瞬間、現実世界では目を覚ましていた。悪夢だ。思い起こすだけで、身震いがする。あんな恐ろしい……いや、痛くて苦しい思いをしなきゃいけないのか。しかも、医者曰く、自殺は失敗する確率の方が高いとか。死にたいなんて、もう二度と口にしない。自殺なんて馬鹿な真似、もうやめよう。

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