表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/99

 香名は片方の腕を支えてから、人差し指を立てた。わかりやすいジェスチャーだ。

「私が彼を救います。私に彼を預けてください」

「……なんて? 今なんて言ったの?」

 母親は聞き違えたとでも言うかのように、片眉を吊り上げて、目元を歪ませた。口元に薄ら笑いすら浮かべて、顔が全体的に引きっている。痙攣している。

 香名は胸に手を当てて、宣言した。ともすれば、プロポーズのようにも聞こえる。

「敦也くんを私に任せて、あなたは引き下がって。隠居でもすればいいってこと」

「……はあ? はあ? 何が言いたいの、あなた。こんな役立たず一人抱えて、生きていくの? それがどれだけしんどいことか、あなたにはわからないのね?」

「この人はね、将来必ず大物になるから。あなたが思っているよりもよっぽど人の役に立つわ。あなたがいつも馬鹿にしている彼はね、幾億の人々の役に立てる、人間国宝に相応しい賢人なのよ。あなた程度の人なんて、そこら中にいっぱいいるわ。要するにね、あなたの言葉なんて、無価値なのよ。あなたみたいな人間が天才を潰すのだから。凡人は黙ってなさい。彼の類い稀なる才能は、あなたみたいな人が簡単に潰して、踏みにじっていいような有象無象うぞうむぞうの凡愚どもの才とは違うのよ。あなた、彼の本気を見たことはあるの? 彼の本気は、あなたが思っているようなものじゃないわよ? 凡人が天才の何をわかると言うの? 凡人には天才の考えなんて、一生かかってもわからないわよ。だからあなた達は凡人なのよ。金、金、金とお金ばかりで人の才のなんたるかを知らないような、守銭奴しゅせんどの元にいたら、彼は救われない! この人を役に立たないと言うのなら、あなたの方が全くこの世の役に立たないわよ。あなたとこの人は違う。だから私は彼を助けた」

 凡人だと言っていたのに、ここでは天才と言い出す。これでもか、と巧みな話術で、敦也の秘められた才を語り尽くし、聞かされているこちらが恥ずかしくなるほど持ち上げる。天才なのか、凡人なのか、どっちなんだ。香名は嘘吐きだから、どちらが本心からの言葉なのか、図りかねるのだが、多分こちらが本音なのだろう。あんなに熱く弁舌を振るっている彼女を見れば、そうであると捉えられる。

「さっきから聞いてれば……、人のことを侮辱して……! 人様の事情に首を突っ込んで……何様のつもりよ!」

 母親は頭が悪いので、それだけしか言い返せない。

「あなたが侮辱されるような人間だからよ。……人の家の事情に首を突っ込むのは、野暮と言うのは間違ってはいないけれど、彼は救われたがっているのだから、何も問題はないわね?」

「性悪……」

「あなたほどではないと思うけど? それで? この話はすぐに答えが出るでしょう。早くイエスと言って。この書類にサインしなさい。特別養子縁組よ。彼を養子に出しなさい。もう彼は成人。未成年ではないし、あなたが育てる必要もない。それに、今の彼は絶対にあなたから離れた方がいいと思うわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ