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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第四章

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 敦也が目覚めたのは、手術から三日後。

 それまで深い眠りについていて、全く起きなかった。全身麻酔が切れるのは、術後すぐくらいなのに。敦也は意識不明のまま緊急搬送された。心肺停止状態ではないが、暫く目を覚まさなかったのだ。幸い、脳に後遺症は残らなかったものの、失ったものは大きかった。

 敦也の家は貧乏なのに、多額の手術費がかかることを、母親が許すはずはなかった。母親は親の風上にも置けないような物言いで、敦也を勘当かんどうした。身体が本調子でない敦也に心身への負担をかけるような、こくな一言だ。その場にいた香名が、敦也の母親の頬を引っ叩いた。

「あなた、それでも本当に親なの?」

「……あなたに、何がわかるって言うのよ! ろくに金も稼げないような息子を養うことが……どれだけ大変か……。愛する人もいなくなって、私がどれだけ苦労してきたか……あなたみたいなこどもに何が! なんの苦労もしたことがない、あんたみたいな箱入り娘に! 何がわかるって言うのよ!」

「ここは病院です。お静かに。敦也君のお身体にも障ります」

 母親がぶち切れて仕返しをしようとしたのを、看護師がなだめて落ち着かせた。母親は香名を睨めつける。腹を空かせた獣のようにいきどおる母親に、真正面からぶつかっていく香名。冷静に相手を見据え、敵愾心てきがいしんを粉々にさせる正論で、右ストレートを放つ。

「わからないわ。あなたのことは。でも彼のことはわかる。彼は寂しがっていて、愛に飢えている。あなたの役に立ちたいと、今でも思っている素直な人なの。真面目で、頑張り屋さんで、ちょっぴりおバカなところもあるけど……あなた達がもっと立派な人間だったら、もっと早くに世界へ旅立つはずだった。彼の成長を遅らせたのは、足手纏いだったのは、あなた達親よ。あなたが彼と向き合わないから、自殺なんて考えたのよ。この私と同じ道を歩もうとしていた。すべてあなたのせい。あなたが愛情を持って接さなかったから。あなたは責任を持って、彼の今後を見届けるべきよ」

「……」

「私なんかより、彼の方がずっと役に立つわ。この世界の、ね……」


 霞む目。ぼんやりとくらむ天井。息がし辛く、喉が痛む。敦也が今どんな状態なのか、知ってか知らず、か、香名と母親は敦也のことを話し合っていた。看護師は邪魔者と言われているようで不快といった表情で、こっそりと戸を開けて出て行く。

 声が出ないので、敦也は二人の様子をずっと見ていることにした。敦也が覚醒したことに気づいているかどうかはわからない。

「あなたがいれば、彼は救われない」

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