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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第三章

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 敦也は香名との初デートの待ち合わせ場所を、大きな時計のある公園にした。

 日曜日になり、待ちに待った初デートの日がやって来た。遅刻しないように、早めに起きて支度したくをする。適当に服を見繕みつくろって、貧乏に見えないよう工夫した。

 香名は持つ者なので、金持ちの家に生まれている。みすぼらしい格好をしていけば、恥をかくのは必至。彼女に釣り合うような人間でなくてはならない。外見だけでも。彼女が恋愛や恋人をどう思っていようが、敦也は香名とデートができて嬉しいのだ。香名ほど人を救いたいという願望はないが、どうにか香名の考えを変えられないかとは思っているのだ。

 香名の才能を、美貌を泥の中に埋まらせてはいけない。

 ――あいつが俺を救えるなら、俺もあいつを助けられると思う……。

 金を使わなくても、行ける場所はたくさんある。貧乏なりに、エスコートしてみせると敦也はガッツポーズを取る。プライドくらいはあるし、彼女におごらせようなんて思っちゃいない。靴を履いて、オンボロなアパートを出た。十分じゅっぷんあれば、公園に着く。待ち合わせ時間は十三時なので、あと三十分はある。徒歩でそこまで行くことにした。公園前の信号で、信号待ちをしていると、一人のこどもが道路に飛び出した。友達とじゃれ合っていて、ひょんなことから黄色い点字ブロックを踏み越えてしまった。つんのめるように、前に前にと出てしまう。

「うわっ」

「あぶな……」

 手を伸ばす敦也。場所が入れ替わり、こどもを突き飛ばす。敦也が前に出た。道路の中央に。

 ――……っ!

 反射的に飛び出した敦也の横――肉薄する距離を、暴走する車が通り過ぎようとしていた。あのときとは違う。悪意ある心が、優しさを持ち始めた敦也の心を打ち砕く。


 そいつは、どんな顔をしていたか?


 にぶい音が、赤黒い鮮やかな色が。宙を舞う。

 倒れ伏す敦也の周りには、血だまりができていた。力のない、生気の抜けた顔。見る見るうちに失血していく。誰が見てもわかるほど重体で、今にも黄泉よみいざなわれそうな空気を纏い。

 断末魔の叫びのような、悲痛な悲鳴がとどろく。叫声きょうせい憤怒ふんぬ焦燥しょうそうが空気を震撼させた。


 なんでも知っているはずの香名は、敦也が今日事故に遭うことを、知らなかった――。

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