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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第三章

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 ――哲学の教授って、どうやったらなれるんだろうな……。

 哲学に興味はあるものの、自分が哲学の教授になる姿が想像できない。さっきの話と自分の将来像が結びつかないのだ。想像できないものは、つまりなれないということ。そこまでは客員教授には訊けない。常勤教授なら、取材費代わりに物を渡せば、ちょっとばかり情報を訊き出せるものの、客員教授は他にも仕事があるし、レベルも高いので時間を取ってもらえない。現にアポイントを取るためのメールをしても、オッケーサインを一向にもらえない。電話なんてしても、多忙な客員教授には取ってもらえない。

 学者の言葉を訳しているだけで教授になれるのか、学者の言葉を自己解釈していくだけで教授になれるのか……。どうしてなれたのか、どんな風に教授になったのか、想像できない。

 それだと、先人の知恵を解いているだけ。

 凄い人というのは、自分で名言や格言を生み出していくものだ。それを他者に解いてもらい、たくさんの解釈を生み出させる。哲学とは、人が考えるあしになる学問。名言や格言の意味を明言してはならない。考える余地のある言葉を生み出さなければならない。

 ――難しいな……。

 哲学の入門書から読んで、哲学のことを基本から知った方がいいと敦也は考えた。ちょっとかじった程度の知識で、知っているなんて人に言うのが恥ずかしいと思ったのだ。無知蒙昧むちもうまい浅学せんがくな自分を晒すことはないだろう。学識をひけらかすのも、今はやめた方がいい。

 謙虚に、堅実に、今は勉強するのみ。天狗になってはいけない。

 彼女である香名に嫉妬する自分を許せなくて、ひたすらに本の虫になった。


 放課後にカフェで待ち合わせして、敦也は香名と会うことにした。

 香名は会うなり、頬を膨らませて敦也に文句を垂れた。

「どうして来なかったの? あんなに講義楽しみにしていたでしょう? どうしてサボったりしたの。先生、がっかりしてたわよ。私もあなたにはがっかりよ。もうサボらないって決めたんじゃなかったの? その程度の決意だったの?」

「……や、ごめん……。ちょっと」

 後ろめたさに、目を逸らす。香名はすぐに気づく。

「そう。後ろめたいことがあるの。私に?」

「哲学の客員教授にさ、お前の方が才能あるって言われて、ちょっとむしゃくしゃした」

「それで?」

「サボった。本読み漁ってた」

 香名は噴き出して、テーブルを叩いた。

「何それ。おかしい……」

「なんだよ。笑うなよ。男が女より上がいいと思って、何が悪いんだよ。俺んちではなあ、男は女を守って、男は女より強くあるべきだって考えなんだよ! 女に負けんのなんて、我慢ならねえんだよ! 男としてなぁ、女にゃ負けたくねえんだよ!」

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