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客員教授が呼びかけると、みんながこぞって質問攻めをしに席を立った。客員教授の前に長蛇の列ができあがっていく。まだ講義中なのに、客員教授は嫌な顔一つすることなく、一人一人の質問に答えていく。教員みんなが優しくていい人ではないが、客員教授のような優しくていい人がいると嬉しくなる。もっと学びたいと思うのだ。そしたら、教える立場の人のことも考えられるような感じがする。
哲学の教科書の巻末に、哲学者ではない偉人の名言や格言も載っていた。
「トーマス・アルバ・エジソンは言った……。九十九%の努力は一%のひらめきによって本物になると。 結局は才能が物を言うってことか……。俺は才能なんて皆無だけど……好きこそものの上手なれって言うし、狙ってみるのも悪くはない……よな」
敦也はぼそぼそと独り言を言って、レポートを書き出した。レポートを書き終えて提出した人から退出してもいいことになっている。大学は高校とは全く違う。自由度が高い。客員教授の言うように、学びたいことを学べる場所だ。高校の教員よりも知識が豊富だから、色々なことを聞ける。経験も豊かで面白い意見も聞ける。教授と話し合わなければ絶対に損をする。教授と深みのある話をして興味を開拓していけば、有意義な時間を過ごせるだろう。
友達は陽太だけでいい。陽太が敦也を裏切ることは絶対にない。信頼も信用も置ける、かけがえのない友達だから。
敦也は五分ほどでレポートを纏めて、鞄を持って席を立つ。椅子に座って書類の整理をしていた客員教授に手渡した。客員教授は笑顔で受け取り、礼を言った。
「あ、いや。こちらこそありがとうございます……」
「教授会でもあなたの話が上がっていますよ。あなたが将来、教授を目指してくれるんじゃないかって。勉学に目覚めて角が取れたと、他の先生方がおっしゃっています。もしかしたら、香名さんを超える逸材が現れたかもしれないと……。実を言えば、あなたの成績は急激に右肩上がりなんです。まるで別人のように、学問に興味を示すなんて。後期が期待できそうですね」
「ほ、ほんとですか!」
敦也は歓喜して、声を大きくした。食いついてしまい、敦也は縮こまる。
「あなたが大学院に行って、博士号を取ってくれること、期待しています」
博士号と言えば、修士課程と博士課程を修了しなければならない。博士課程の前期・後期と一貫しているカリキュラムもあるが、修士号取得後の進学は本人次第。私立大学の大学院は大抵修士号まで。博士号まで取得できる研究科目もある。レベルの高い大学の大学院ほど、博士号取得への道が開かれる。取得できるかどうかは、本人の実力だけが左右するとは限らないかもしれない。医学の博士課程ならば十年ほどかかるだろうが、文系の修士・博士課程は五年ほどだろう。その頃には二十代後半になっている。大学卒業後に大学院にすぐ入れるかどうかが問題だが。
「推薦はしてくれないんですか……」




