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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第三章

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 今週の日曜は、香名と初デートの約束をしている。今までの敦也だったら、一ヶ月と待たずにベッドで一発ぶちかましていたが、今度の彼女は大事にしたいと思っているのだ。好きな女のためならば、何年でも待てるというのが今の敦也の心持ちだ。香名もそうして欲しいと言っていた。初デートの日も手を出さずに、飯を食べに行くくらいでいい。

 しかしながら。この間のように時折おかしなことを口走るのが、悩みの種だ。あれさえなければ、もっと楽しく過ごせるのに。香名のように勉強もできて頭もいい人が、怪訝な顔をする敦也に気づいていないとも思えない。人間だとか神だとか、そんな話をしなければいいのにと敦也は思う。宗教の勧誘か何かかと思って、シャットアウトしてしまう。大学の近くでそういった怪しい宗教活動が一時期流行っていたから。要するに、何が言いたいのかよくわからないのだ。意味不明なことをどこででも言い出すので、敦也は総じて話を聞いていない。聞かれていなくても話し続ける香名。どう考えても病気……としか思えないのだ。敦也には。

 近頃好きになった哲学の講義中に敦也は悶々(もんもん)と考え続ける。哲学の講義は毎回レポートを提出して点数をもらう、試験がないタイプの講義だ。試験勉強に時間を費やさずにすむし、哲学が面白いので、敦也は気に入っている。教えてくれるのは年配の女性。客員教授だ。常勤ではないが、実力者。

 電気をけずにスクリーンに資料を映し出す形式の講義なので、退屈と言えば退屈だが、心理学の教授のおかげで敦也はこの授業形態が好きになった。あの日以来、敦也は心理学の講義をサボタージュしたいと思う気持ちもなくなり、みんなの白い目が輝く目に変化した。勉強に励む元不良にみんなが感化されていく。人は変わるものなのだとみんなが信じた。

 客員教授はマイクを持ちながら今日の課題について説明していく。

『このとき、カントが思ったこととは何か? 本日のレポートで提出してください』

 敦也は挙手をして、声を張り上げる。客員教授は敦也の名を呼んだ。

『はい。なんでしょうか、大守君』

「模範解答を書けばいいんですか? それとも、自己解釈でいいんですか?」

『学生の皆さんの判断に任せます。哲学は最早答えのない学問。答えがわかるのは、本人だけです。なので、自己解釈は大いに結構ですよ。辻褄が合っていれば、点数を差し上げましょう。大守君の解釈、いつも楽しんで読ませていただいています』

 敦也に向けて言った言葉を、敦也は凄く嬉しく思った。同時に恥ずかしくも思っている。

「ありがとうございます」

 客員教授に向かって、礼を言うと客員教授はニコッと笑った。

『皆さんもわからないことがあれば、どんどん質問してください。大学は高校とは違い、受け身にならずに能動的に学ぶところです。受け身でいては、学びたいことを学べなくなってしまいますよ。大学の四年間は長いようで、とても短いです。今のうちにたくさんのことを勉強してください。やりたいことを見つけて、人生を楽しんでください』

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