③
お盆にそれらを乗せた。敦也は箸とスプーン、水の入ったコップを二つずつ置き、お盆を持ち上げる。おばさんがニコッと白い歯をこぼした。
「おまちどお。いつも残さず食べてくれて、ありがとね」
「いや……。こちらこそ、どもっす」
首を押さえつつ、照れ臭そうにぺこりと頭を下げてはにかんだ。
「大守君。明るくなったね。纏う空気が違う」
「え……。そう……ですかね?」
「彼女でもできたかい?」
ハハッと乾いた笑い。半ば冗談で言われたことを、敦也は真に受けてそうなのかと信じた。
「そうかもしれない……っすね。あいつがいたから」
「おや、そうかい! ハハハ、良かったじゃないかあ! 彼女さん、大事にしないとね」
傍らにいたら背中でも叩きそうな豪快な笑いで、おばさんは敦也を祝福した。
「うっす」
敦也は席に戻り、スプーンとハヤシライスと水を陽太に渡した。
「ありがとう。チャーシューメンも美味しそうだね。今度頼もっかなー」
陽太はよだれを垂らしそうな顔でハヤシライスの香ばしい匂いを嗅ぐ。手を合わせて、がつがつと食べ始めた。敦也も手を合わせてから箸でラーメンを掴み、ずるずると啜っていく。口の中で熱を冷まして、咀嚼する。美味いと口ごもりつつ、前を見る。
「ハヤシライスもいいな」
「……昔だったら交換もできたんだけどね。でももう、そういう歳じゃないしなあ」
「そうだな。はっきり言って、男同士でそれはキモいな。女ならまだしも」
「だよねー」
陽太は笑い飛ばして、熱々のハヤシライスをほんの数分で食べ切る。敦也はラーメンをはふはふしながら啜っている。まだ半分も食べ切っていない。水を口に含んで飲み下してから一言。
「相変わらず、食うのはや」
「だって、お腹空いてたしさあ。もう一個注文しようかな。敦也もいる?」
「いや俺は……。まだ食い終わってねえし。買って来いよ」
陽太は水を一気に呷り、コップをテーブルにドンと置いた。
「わかった」
陽太は席を立って、券売機に行った。人が並んでいたので、時間がかかりそうだ。
食堂のおばさんに言われたのを思い出して、敦也は喜々としていた。




