⑧
一目惚れをしていたのは、香名の方だった。
敦也は手紙を読んで、涙を溢れさせた。手紙のインクが滲んでゆく。
自分の境遇と似通っていると、敦也は思ったのだ。なんの役にも立てない自分が嫌いで、嫌いで仕方なくて、誰かに助けて欲しくて、でも誰も助けてくれなくて。
男の子は泣いちゃダメなのに、涙が出てしまう。思いが溢れてしまう。
自分のことを好きだと言ってくれる女性が現れて、しかもその女性も自分と同じで生きることに苦しんでいて、共感しないはずがない。傷の舐め合いだと人に罵られようとも、構わない。望んでいた存在が、目の前に現れてくれたのだ。紛れもなく、スーパーマンが。――傷心状態だったのは、計算違いだったが――。ずっと、ずっと会いたかった。
「……んだよ……。俺のことが好きって。そんなの嘘だろ? なんで俺泣いてんだよぉ。はは……カッコ悪いな……くそ……なんで止まらねぇんだよ……くそぉ」
涙が溢れて止まらないし、泣きっ面で不細工になるが、敦也は嬉しくてたまらなかった。
――なあ、中坊んときの俺。会えたよ。俺を救ってくれるヒーローに……スーパーマンに……会えたよ。俺と――お前の夢、叶ったよ。叶ったんだよ。女だけど。こいつなら、俺を救ってくれるって、なんとなく……わかるんだ……。そんな気がする……。
「共感した? 返事は?」
敦也は拳で涙を拭って、告白し返した。
「俺もお前のことが好きだ……」
香名はパァッと表情を明るませ、頬を緩めた。
「付き合いましょう」
こうして、敦也は絶世の美女、香名と付き合うことになった。




