④
「どうしたもこうしたもない。僕はずっと考えてた。敦也が楽しく過ごせるようにって。どうすれば、お前を楽しませられるか、ずっと考えてた。それなのに……お前に友情とかないわけ? いつもお前は冷たい態度ばっかり取るよな。僕が真剣に話をしても、はぐらかすし、適当に合わせるし。つまんないんだったら、なんで僕と一緒にいるんだよ。いなくていいなら、さっさと縁切れよ、大馬鹿野郎!! お前なんかいなくても大丈夫だって言えよ! 一人じゃ生きていけない、捨てられた仔犬みたいな顔しやがって……。僕だって、お前の世話ばっかりしていられるほど暇じゃないんだぞ! お前のそういう中途半端なところが、ムカつくんだよ!」
早口でまくし立てられて、敦也は何も言い返せなかった。陽太がこんなに感情的になって、乱暴に胸倉を掴んで、殴りかかりそうな表情をするとは思ってもみなかったのだ。
怒鳴り散らされて、言葉を失う。何か言い返さなければ、と敦也は声を漏らすが、何も言葉を紡げない。陽太はこんなに我の強いやつだったのか。
「僕をそこらの奴等と一緒にするなよ? 何年友達やってきたと思ってるんだよ」
「……」
「気づかないと思う方がおかしいよ。お前の感情の機微には、とっくの昔に気づいてた。お前が触れて欲しくないって壁作ってるから、言い出さなかっただけだ!」
陽太は乱暴に手を放して、服を整えて敦也を睨めつけて呟いた。
「バカは死んでも直らないからね」
じゃあねと陽太は鞄を持って、教室移動するため、走って行った。
「……なんなんだよ……」
敦也はチッと舌打ちして、斜め下を見た。血も涙もない人ではなかったので、後ろめたい気持ちはあった。しかし、面と向かってそのことを指摘されると、反発したくなる気持ちもある。陽太があんな風に怒鳴るなんて思ってもみなくて、敦也はびっくりしたのを怒っている。
あんな風に感情を爆発させる陽太に、何も言い返せない自分が腹立たしいのだ。
だが、謝らないと。今までずっと陽太に気を遣わせて、あんな顔をさせて、傷つけた。最低だ。
また癇癪を起こしてしまいそうだったので、大事を取って敦也は午後の講義をサボタージュすることにした。両目を瞑って頭をわしゃわしゃとかきながら教室を出ると、ドンと人に当たった。倒れたような気配はないが、相手の足音でよろけたことに気づく敦也。目を開いた。
「悪い。ちょっとボーっとしてた」
「あなたのせいで鞄おっことしちゃったじゃないの」
敦也は変な声を出して顔を引きつらせた。あの女が戻って来たのだ。
「何よ、その顔は……。ヤな奴に会ったとでも言いたそうな顔ね」
「実際やな奴だろうが」
「そう。さっき、あなたのお友達が走って出て行ったわ」
「俺のこと嫌いなんだろ? だったら、お前には関係ねえ」




