③
「そんなこと言われても、興味ないもんは興味ないし」
「頑なだなあ……。日本人なんだし、投票もできるんだから、国のこと知ろうと思いなよ」
「俺が投票しなくても、他の奴が投票するだろ。俺一人投票しないからって、なんだってんだ。俺の力なんて、高が知れてるだろ。どーでもいいんだよ、国のことなんか」
敦也はぷいっとそっぽを向いて、これ以上の言及をさせないようにした。いつもなら陽太も引き下がるのに、政治の話となると途端に食い下がるのだ。敦也の捻くれ度も陽太の政治好き度には毎度のことながら惨敗する。政治が好きな陽太を撒くことができず、その場から立ち去って逃げても議論をやめさせてもらえない。しつこいぐらい話し続ける。
「そういう考えだから、若者の投票率が低いんだよ? 政治に参加したいなら、投票しないと。文句言いたかったら、選挙に参加しなきゃ。国民投票ができるって、いいことなんだよ。世界を見てみなよ。国民主権は今日日、珍しいかもしれないじゃないか。批判しても殺されないなんて、いい国だと思うけど?」
「大袈裟だな。だからさ、何度も言ってっけど、投票なんか行ったって、白紙で出すか、暴言書くかのどっちかだって。なんで律儀に赤の他人なんかに票入れなきゃなんないんだよ。政治家なんか、みんな似たり寄ったりで支配者面したクズばっかりがやってるおままごとだろ。国民のことなんか、一切考えてねえだろ、あいつらは」
腐った連中なんだよと敦也は、相手をろくに知りもしないで偏見を押しつける。
「――自分の心を、託すんだよ」
「はあ?」
「自分のね、思いを……出馬している人に託すんだ。好きな政党に票を入れるんだ。僕が選んで、僕の思いを受け取って欲しいと思って、投票する。それを受け取ってくれたら、どんなに嬉しいか。僕も日本人だな、日本に生まれてきたんだなって再確認できるんだよ」
「……女みたいな意見だな。キモ」
「失礼な! 僕は誰よりも男らしいよ。女々しいのは、敦也の方」
敦也の眉がぴくりと動く。的を射抜かれて、苛立つ。ゾワゾワと肌が粟立つ。
「……っんだよ」
「そうやって、いろんなことに悩んで、自分一人で抱えて。自殺しようなんてしたんでしょ? 僕がいるのに。頼らないしさあ。こんなに頼もしい友人がいるのに、頼らないなんて、お前ってやつは……。どうしようもないバカだな! 僕等ってやっぱり、見せかけだけの他人か?」
普段から穏やかで優しい口調の、陽太の語気が荒くなる。荒っぽい男の喋り方になって、敦也は驚いた。陽太は以前から敦也の心中に気づいていたのだ。
陽太は敦也の胸倉を掴んで、引き寄せた。敦也は茫然としている。
「どうなんだよ。お前、何考えてんだよ」
「はっ? 急にどうし……」




