表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/99


 あの女の名前は、香名椎菜かなしいな。変な名前とケチをつける敦也。

 陽太談だ。知っていても名を呼ぶつもりがないので、見るまでもなく嫌そうな顔をする敦也。

 政治学の講義は陽太も取っている。一つ席を空けて座っている陽太が、いぶかしげに口を歪めた。

「なんでそんな顔するんだよ」

「俺があいつのこと、だいっっきらいなの、知ってるよな……? 名前なんか、無駄情報だって。覚える気ねえのに。陽太って、たまにお節介だよな」

「美人の名前くらい、憶えておいても損はないよ。だって、憶えていたら、僕等のことも憶えてくれるかもしれないし。美人の友達って、目の保養だし、お得だと思うけどなー」

「そんなことないと思うけどな。あいつ、他人には興味なさそうだし」

 敦也がボソッと台詞を吐くと、陽太は不思議そうな顔をして言った。

「それは敦也も」

 敦也はドキッとして、陽太を見た。陽太は真剣な目で敦也を見据えていた。陽太が先に目を逸らして、教室のドアの方に注目した。ドアが内側に開く。

「……先生来たよ」

「は? あ、ああ……。そそそうだな」

 敦也は面食らって、間抜けな返事をしてしまった。決まって、政治学の准教授は遅刻する。重役出勤さながらに、遅刻しても謝らない。偉そうなのは偉いから。それを不満に思う学生もいるが、悪いところよりいいところの方が多いので、人気の講義だ。講義は五分前に終わり、学生がちょっと遅刻したくらいならば遅刻扱いにはしない。人気を博す理由はそれ。

 甘くなければ、学生は教員を好きにならない。学生もこどもなので、ゲンキンなのだ。

 人数が多くて後ろの方まで声が届かないので、准教授はマイクを持って挨拶をした。

「それでは、講義を始めます」

「……きたきた」

 陽太は嬉しそうにシャープペンシルを回して、ノートとレジュメを机に並べた。

 ――なんでいつもこいつは嬉しそうにするんだか……。

 たかが講義。されど講義。陽太は勉強熱心で、特に政治学が好きなのだ。将来は政治家になりたいそうだ。一週間に一度しかないこの講義が、楽しみで仕方がない様子。敦也もこのくらい熱中できるものがあれば、生きることが辛いなんて思わずに済んだかもしれない。敦也は陽太が羨ましく見えた。今の自分は、何にも情熱を注げないから。燃え尽き症候群なのかもしれない。

 無意識のうちに、敦也は陽太の横顔を眺めているのだ。しかし、陽太は講義に集中していて、敦也の視線に気づかない。陽太は将来、大物政治家になるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ