表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/99

 もし、死んだのが敦也だったら?

 泣くより、喜んでいたかもしれない。そう思い、敦也は唇を強く噛んだ。赤くなるまで。

「どうして、あなたが死ぬのよ……。ねえ……なんで……なんで私を置いてったの……。私を連れて逝って欲しかったのに……! なんでこの子を押しつけて! 先に逝くのよぉ……!」

 遺体に覆いかぶさって、母親は駄々を捏ねるこどものように泣き続ける。敦也は嘆き悲しむ母親を睥睨へいげいして、動かない父親に目をくれた。

 ――人形みたいになった……。これが……死ぬってことなんだ。

 自殺というものを、敦也は知ったのだ。

 それからも母親の幼児退化は進み、現在も出稼ぎに行くのに苦労している。毎日のように、あなたに才能があれば良かったのに、あなたが稼げる人間だったら良かったのに、とさげすんだ目で見られ、目の上のたんこぶ扱いされれば、生きているのがしんどくもなる。自分という存在を、お金を生み出すか生み出さないかでしか見てくれないから。消費するだけの自分には価値がない。お金を生み出せない才能なんてどうでもいいのだと刷り込まれてしまった。

 人に価値をつけること自体が間違いなのに。

 それを知らずに、敦也の両親は敦也に価値をつけてしまった。

 人の命は金よりも軽い。

 彼等による洗脳が、頑張り屋で才能豊かな敦也を、無感情で冷徹で怠惰な人間へと変貌させた。未だに親に縛られているから、本来の努力家に戻りたくても、戻れなかったのだ。

 全国模試で一位を取ったって、どうせ、自分はたいしたことがないし、役立たずの穀潰しなのだろうと荒んでいるのだ。どんなに頑張っても、どんなに褒められても、自分を産んで育ててくれた実の両親に全否定されてしまえば、自分を肯定できない。自分はなんの役にも立たないクズなのだと受け入れるしかないじゃないか。

 敦也が金稼ぎできる人間だったならば、両親はもっと醜く歪んでいたかもしれない。金というものは人を変えてしまう。なくてはならないものなのに、ありすぎてもなさすぎても醜悪な心をはぐくむ。普通がちょうどいいのだ。裕福すぎなくて、貧乏すぎないのがいい。だけど、普通の環境を得るのは、異常の環境を得るよりも難しいことなのだ。

 人の命は、金よりも重い。

 人を人とも思わないような人が悟る日は一生来ないだろう。誰かが言ったところで、根本的な部分は変わらないのだ。自分が変わろうと思わなければ、変わらない。

 人の心を変えるのは、どんな難問よりも無理難題だ。心理学を学んでいるからこそ、人間の心を簡単に変えられないことがわかっている。悪意を悪意だと思っていない人の心は、どう足掻いても変えられない。すべて無にす。徒労に終わる。

 だから、向き合おうとしない。

 どちらも無関心でいることを好むのだ。ぶつかったって、どうせわかり合えっこないと敦也は思っている。何を言っても無駄だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ