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息をするのを、忘れていた。呼吸困難になり、暫くして両親に発見された。救急車で病院に搬送され、意識を取り戻したときは両親が上から覗いていたが、敦也は喜悦を感じなかった。死んだような目をして、笑った。
嘘吐きで、くだらない両親に振り回され、敦也は狂った。
「あは。あは、あはははは! アハハハハハ!」
「ど、どうしたの……」
「どうしたんですか、先生? 敦也は何かの病気ですか?」
両親は心配しているふりをして、医師に尋ねた。
「病気……。いや、精神的なショックによるものでしょう。恐らく、酷く疲れているだけです。薬を出しておきましょう」
――クスリなんかで、僕の心は……。僕はいらない子。そんなもの、いらない。
敦也は突然起き上がって、涙を流しながら叫んだ。髪の一部が白く変色していた。
「みんな死ね! しねしねしねしねしね! 死んじゃえ!」
その場にいる全員を指差して、敦也は瞳に涙をためて悲しげに微笑んだ。
「みんなが死ねば、僕も死ぬ。……そしたら、みんな幸せでしょ?」
医師も看護師も両親も、その場にいる全員が呆気に取られた。
両親は敦也が反抗するような心を持っているはずはない、あれは機械のようなものだと高を括っていたのに、泣きながら死ねと連呼されたことに、驚愕している。敦也のその表情で良心を取り戻したのか、両親は敦也を抱き締めてごめんねと何度も言った。大量に溢れ出る涙は、嘘泣きのようにも見えた。
謝ったところで、忘れられない。罪は消えない。それだけでは済まされなかった。
綺麗事では金は生まれない。どうあっても運命とは変わらないもので、働き口が見つからない父親は遂にぐれた。借金をしてギャンブルに溺れ、酒に呑まれ、女に遊ばれるくだらない人間のクズになってしまった。酔っ払うと暴力を振り、母親も敦也も傷つけた。たくさんの傷と恐怖を刻みつけ、父親はいい気になっていた。
そして、現在の住居に至る。
父親が我に返ったとき、頭を抱えて心中を吐露した。血も吐いた。畳が血で汚れた。
「……俺は……もうダメだ……。生きてる価値なんかない」
「……そうね……」
腕に無数の打撲を負った母親は、唇を震わせ手で覆った。瞬きの回数がいつもの倍だった。
「先、逝くわ」
そう言って、父親は胸を押さえて白目を剥き、口から大量の血を吐いた。びくびくと身体が痙攣し、やがて息絶え、無様な死に顔を晒す。母親は父親の顔を覆い、目を閉じさせた。
畳に散らばる粉末を見て、母親は徐々に実感する。
「あ……ああ……あああああ~……!」
目を覆い、母親は泣き叫んだ。唇を噛み、自身の喉を引っ掻いて、泣きじゃくる。父親の亡骸に身体を乗せて、おいおいと泣いた。あんなになっても、母親は父親のことが好きだったのだ。愛していたのだ。




