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22話:れっつ、おきがえ!

  さてさて。

  俺は生まれてこの方、スカートなんてものを自分で好んではいたことはない。当然といえば当然である。

  じゃあ今身につけているものは何かと言われれば、間違いなくスカートではあるのだけれど、これはこの世界に来てからこれしか装備品がなかったから着ているだけで、決して俺の意志ではない。

  まぁ、今まで散々スカート姿で走り回ったり、お使いをしてみたり、遊びまわったりと色々やってきて何を今更と思うかもしれないが、やはりこの、自分の意思でスカートを身につけるというのには、些か抵抗があるというものだ。

  そんなわけで、着替えるとするなら、るなが着ているようなショートパンツ、最悪でもりんの着ているようなキュロットスカート、スカート風の半ズボンに留めておきたいところなのだけれど。


「ひなちゃんには、これなんか似合うと思うのよねー」


  お姉さんが意気揚々と持ってきたそれは、白とピンクのグラデーションが綺麗な、ひらっひらのスカートでした。

  段々になっているフリルのスカートを、俺の顔にグイッと近づけるお姉さん。その顔はにっこり素敵な笑顔だ。俺にはそれが、悪魔の笑顔に見えるけれど。

  そのお姉さんの後ろには、靴下やヘアゴムなどの小物を持ったるなと、白の清楚なピンタックブラウスを持ったりんが小悪魔のように顔を覗かせていた。

  これは、どうにも逃げられそうにはない。


「あーもー!きればいいんでしょっ!」


  俺がしぶしぶそう言うと、お姉さんが笑顔のままシステムウインドウを操作する。そうすると、俺の目の前にもシステムウインドウが表示される。


《レインボーダー てんしゅ れいね からあいてむがおくられました》


  レインボーダーはこの店の名前で、レイネはお姉さんの名前だろう。

  俺はシステムウインドウをそのまま操作して、装飾品一覧画面を開き、今送られたアイテムを次々に操作していく。

  ピンクのフリフリスカートを自分に装備するように操作すると、今まで自分が身につけていた初期装備スカートが光り輝き、ぱんと弾けたと思ったら、次の瞬間にはフリフリスカートに変わっていた。まるで女児向けアニメの変身シーンのような変化の仕方だった。

  まぁ、これでリアルに脱いで穿いてだったらそれこそ18禁ゲームになるよな。もっと他のことにも悪用できそうだ。

  そんなわけで目の前で着替えても裸を見られるわけじゃないので、次々に着替えていく。その様子をるなにりん、それにレイネお姉さんがニヤニヤと見ているが、気にしない。……というよりも、気にした方が後で絶対弄られる。だから、耐えろ、俺。


「はぁ、きがえおわったよ。これでいい?」

「かわいい……お持ち帰りしたいわぁ……」


  そう言うと、レイネお姉さんが不穏なことを言いながら、親指をビシッ!と立ててサムズアップしていた。……鼻血は早めに拭こうね。

  るなとりんは何処からか姿見を押して持ってきた。姿見に映る俺の姿は、どこかのお嬢様のような格好だった。

  ピンクと白のフリフリスカートの下には黒のニーハイソックス。膝の少し上のソックスの入り口には、フリルとリボンがあしらわれている。上半身を包むブラウスは真っ白で清楚なお嬢様を演出し、しかしピコピコの触覚の髪の根元には、小さいひよこの編みぐるみのついたヘアゴムが付けられて、それがとても子どもっぽく見える。


「はわぁ……」


  つい声が漏れてしまう。いやだって、これは仕方がないと思う。

  自画自賛じゃないけれど、これはよく似合っている。るなやりんもよく似合っていたけれど、自分が自分じゃないみたいな、それぐらいによく似合っていた。


「……ひーちゃ、すてき」


  バッと振り返ると、みづきがいた。

  彼女も初期装備ではなく、淡い水色のワンピースを着ている。元々彼女が持っていた水色の髪とマッチしてて、よく似合っている。

  でもそれよりも、背中に背負ったそれに目が行くわけで。

  みづきはリュックサックを背負っていた。ただのリュックサックではなくて、みづきの半分ぐらいの大きさだろうか、大きなうさぎのぬいぐるみのリュックだった。

  ただでさえ俺たちよりも少し小さく、余計に子どもっぽくみえていたみづきが、さらに幼く感じてしまう。


「みづきも、よくにあっているよ」


  そう言って、お互いにいつものあれ。ぎゅーっと抱きついた。るなとりんもお互いにビシッとサムズアップして笑い合っていた。

  こうして俺たち4人とも、新たな衣装を手に入れたのだった。

  ……ってお金払ってないし!


「あのっ、おねえさん、おいくらですかっ」


  俺は慌ててレイネお姉さんに値段を訪ねた。

  せっかく素敵な服を選んでもらったのに、お金が足りない予感がひしひしとする。とくにみづき。あの子は100ぺたしかないから、絶対に足りないだろう。どうにかりんに借りるしかないかなと考えていたら、レイネお姉さんはにっこり笑ってとんでも無いことを言い出した。


「タダでいいよ?」

「……はぇ?」


  ええええぇぇぇぇ!?っと俺たちの驚く声。どうやら誰一人として知らなかったらしい。


「うふふ、おねーさんは太っ腹なのよ。……うん、大丈夫」


  見えないようにやっていたつもりだろうが、自分のお腹の肉をつまんで何か確認していた。……なんで自爆してるんだろうか。そんなことよりもだ。


「えっと、ほんとうにただでいいんですか?」

「あーうん、大丈夫よ?その代わりというか、その服なるべく着て他のプレイヤーに見せてあげてね。かわいい君たちがその服を着て見せてくれたら、その服代ぐらい簡単に稼げそうだしね」


  なるほど、この服を着て見せて客寄せパンダになれということらしい。

  そういうことなら、貰ってもいい……のか?しかし俺が悩んでる間に、


「おねーさんありがとー!」

「おねぇちゃんめっちゃいいひとやんなぁ、うちおねぇちゃんのことすきやー」


  るなとりんはそんなことを言いながら、レイネお姉さんに抱きついた。レイネお姉さんはプルプルと震えていた。……鼻血は出さないでくれよ?


「……おねちゃ、ありがと」


  ついにみづきまでお礼を言いだしてしまったので、俺もお礼を言うことにする。


「すてきなおようふくを、ありがとうごじゃいます!」


  ……盛大に噛んだ俺を、皆が温かい目で見ていた。


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