23話:みちなるせかいへ
「じゃあねー。また何時でも遊びにいらっしゃい」
「おせわになりました!」
るなが代表してお礼を言った。俺たちもぺこりと頭を下げる。そして手を振りながら、とたたたたーと走っていった。
後ろを振り向けば、いつまでもレイネお姉さんが手を振っていた。……いや、仕事しようよ……。
新しい服に着替えた俺たちは、特に目的もなくそこら中を駆け回っていた。
フリフリのスカートはちょっと恥ずかしかったけれど、なんとなく、新しい服って嬉しいからかな?
意味もなく目的もなく、ただただ走っていた。
「るなちゃん、まてっていうてんやんかー!」
「りんー!おそいってばー!」
「ふたりともまってぇ」
「……るーちゃとりーちゃ、はやい」
るなとりんが、競うように追いかけっこをする。それをみづきの手を引き、俺が追いかける。
きゃーきゃーと駆け回っていると、いつの間にか大きな建物の前に着いた。
「ふわぁ……」
着いたのは、よくある総合デパートとでも言えばいいのか。スーパーとショッピングモールが合わさったような、そんな建物が俺たちの前にそびえ立っていた。
「めっちゃでかいやん!」
りんが、袖で隠れている両手で口元を押さえながら驚いていた。
大人の時に見てもそこそこ大きな建物だが、この幼女の身長で見るとさらに大きく見える。
「いってみようよ!」
「ええやん!」
るなとりんは、俺とみづきを置いて、スーパーの中へと入っていってしまった。
「まってよぉ!」
急いでみづきの手を引きながら追いかけたものの、不自然なぐらいのその人ごみの中で、るなとりんの姿を見失ってしまった。
見渡す限りの人、人、人。人だかりで周りが全然見えない。
後ろから何かが、コツンと当たって、よろけてしまう。
「あら、ごめんねぇ」
どうやら今のおばさんのカバンが当たったらしい。特に何かあるわけでもないが、威圧感を感じる。
「……ひーちゃ、だいじょうぶ?」
「う、うん。だいじょうぶだよ」
人だかりの中に置いて行かれたことを考えると、俺もいくらか恐怖感を覚えてしまうが、みづきの手前怖がってばかりもいられなかった。
とにかく、まずはるなとりんを探さなければいけない。
あの2人のことだ。走り回って何か楽しいものでも見つけて遊んでいるのだろう。場合によってはしばらく戻ってこないだろう。
「とにかく、るなとりんをさがさなきゃ……」
「……うん、さがそ」
はぐれないようにぎゅっっと手をつなぎ、とてとてと歩き出す。
しばらく歩くと、色々な服屋や雑貨屋などが並ぶショッピングモールのようなところにでた。せっかくなので物色しながら歩く。
売っているのは子ども服ばかりだけれど、店の名前を見てみれば聞いたことがある店の名前ばかりだ。後からレイネお姉さんに聞いたところ、レイネお姉さんのように個人デザイナーはもちろん、企業単位でも参加しているらしい。今も子ども服を売っているブランドから、これから子ども服業界に参入しようとする企業まで様々だ。
よくよく考えれば非常に合理的だ。ヴァーチャル世界なら実際に服を作るコストはかからない。服自体は作ってないのに、その服を着たらどうなるのか、何がダメなのか、客観的に見ることができる。もしあまり売れなくて失敗なら、現実で服を売るのをやめればいいだけだ。人気が出ればそのまま売り出して、利益を出すことができるだろう。
よくできた仕組みだと思う。まぁ、俺たちプレイヤーには何も関係のないことだけれど。何も関係ないは言い過ぎか。いろんな種類の服を着て楽しませてもらうことができるのだから。
それにしたって。
「……あれ、いい。すごく、いい……」
「めいどふくとか、そんなのまであるんだ……」
ショーウインドウの1つを、みづきがかぶりつくように見ていた。
そこに飾られていたのは、白と黒のエプロンドレス。スカートは短く、袖は半袖のパフになっていて、肩のところが膨らんでいる。傍らにはホワイトプリムのカチューシャも置いてあり、セットでついてくるようだった。
そんなメイド服を、じーっと見つめている。
「みづきのおかねじゃたりないでしょー。はやくいくよー」
「……ひーちゃにきてもらいたかったのに……」
「……やだよぅ」
まさかの俺に着てもらいたいだった。
いやいや、冗談だよね?……あ、マジな目だ。いつもの半眼が見開いている気がする。当社比1.1倍ぐらい。あれを俺が着るの?あんな萌え萌えな衣装を着て、オムライスにケチャップかけながら、
「おいしくなぁれ♪」
とかやれっていうのか?断固拒否したい。
いつまでも未練がましくメイド服を見るみづきの襟首をつかんで、一向に見つからないるなとりんを探すべく、俺は先へと歩いていった。




