第41話 残ったふたり
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二神から、開始の声が掛かるも、皆ザワザワしているだけで、一向に誰も動かない。
(あれ?試験開始なんだよね?皆、行かないのかな?面白そうなのに。)
やはり、ザワザワとしているだけだ。
何人かは、他の子に話し掛けたりしていて、チームを組んでいるのかもしれない。
(じゃあ、俺が先に行っちゃおう!)
鳥居を振り返って、1歩足を進めた時、慌てた声が掛かる。
「ま、待ちたまえっ!」
「待て、そこの狐の陰陽師っ!止まって動くなっ!」
ビクッとして、動きを止める。
あれ?最近もこんなことあったような?
そして、今はなぜ止められたの?
試験なんだよね?
「え?どうして?」
「お前は最後だ、馬鹿者!」
「え?なんで?」
「このダンジョンは、他国の神々も関わる大事なダンジョンだ。お前が先に入って壊されては堪らん!」
「ええ?!そんな簡単に、ダンジョン壊れませんよね?!」
「試験用の初心者ダンジョンに、上級ダンジョンのような耐久を求めるな!」
「俺だって、戦闘経験はそんなに無いですよ?」
「なら聞くが、Lv.1のお前がLv.2のモンスターに出会いました!お前はどうする?」
「え?⋯⋯俺より強いなら、ちょっと多めに霊力を練って、狐火で様子見ですかね?」
「「ちょっと多めに。」」
「はい。」
「さっきもちょっと多めに霊力を練ったんだろう?結果は?」
「⋯⋯⋯⋯あはは。」
「さすがにあれくらいではダンジョンは壊れん。が、他の者の経験を害するやもしれぬ。故に、お前は最後だ。」
ガァーーンッ
なんて事だ。
てことは、皆が行ってくれないと、俺は入れないのか?
涙目で、皆の方を見ると、皆が慌てて目を逸らす。
今頃きっと、俺の耳と尻尾は垂れ下がっていることだろう。
二神を見上げると、「うっ」と、唸られる。
早く行きたいなぁ~。
それまで、何してれば良いの?
「待ち時間は、天之御中主神様が話し相手になってくれるだろう。」
「は?待て。」
「え?天之御中主神様?」
天之御中主神様が、慌ててるけど?
火之迦具土神が、息を吸い込み大きな声を出す。
「良いか!いつまでもダラダラしていないで、さっさと始めろ!」
「あの、人数制限とかありますか?」
「無い。1人でも全員でも好きにするが良い。」
皆、顔を見合わせて、さっきまでの不安そうな感じが幾分晴れたようだ。
でもさ、もし皆で行っちゃったら、必然的に俺はソロ決定だよね?
ソロ希望だから良いけどさ。
それよりも、天之御中主神様とマンツートーク?
偉い神様なのでは?
天之御中主神様が渋々な感じで、俺の前にやって来た。
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
お互い顔を見合わせ、無言。
ですよねー。
火之迦具土神様ったら、無茶振りでしょう!
天之御中主神様はどう見ても寡黙そう⋯⋯⋯あ、そういえば、天之御中主神様と言えば。
「あの、うちの何代か前の先祖に「桜庭」の家名と木花之佐久夜毘売様の神格を与えてくださったのは、天之御中主神様、ですよね?」
「⋯ああ、そうだ。」
「その、ありがとうございました。俺、「桜庭」っていう家名、凄く好きです。」
「そうか。礼は不要だ。お前の先祖の功績に対する褒美である。代わりに、大きな役目を負ってもらったのだしな。」
「大きな役目?確かにそう伝わっていますが⋯⋯その役目とはなんでしょう?」
「いずれ分かる。今はまだ、その時ではない。」
「はぁ⋯。」
なんで、皆こう濁すんだろう?
こう、スパッ!とスッキリしたいと思うのは、俺だけ?
「すまん。」
天之御中主神様に謝られた。
あ、そうか。
心の声が筒抜けなんだった。
「この試験が終わったら、話そう。」
「はい、お願いします。」
やった。
何らかのお話が聞けるらしい。
それよりも⋯まだかな?
ワクワクダンジョン。
「亜神候補試験である。」
そうそう、そんな名前。
あれ?俺、脳まで幼児化してないよね?
振り返ると、グループがいくつか出来ていて鳥居を潜り始めている。
女子はまとめて行くみたい。
「この試験って何人くらい参加してるんです?」
「この地域は86人。他の二ヶ所も、おおよそ同じ人数だ。」
「全員、人外の血筋なんですか?」
「ああ。」
うーん、それは何か理由があるんだろうか。
選考基準の一つのような気がする。
「さて、そろそろ君も準備するが良い。」
そう言って、天之御中主神様は火之迦具土神様の隣へと戻って行った。
人気の無くなったこの空間で、ポツンと取り残されると、捨て猫ならぬ捨て狐の気分になる。
まあ、でも、もうすぐ行って良いって言ってたし。
最後に残っていた5人組が、鳥居を潜る。
そろそろかな。
何気なく皆が居た空間を振り返る。
すると、1人の男の子が、ポツンと座り込んでいた。
一度神々に質問した、金髪ヨレヨレの男の子だ。
あれ?行かないのかな?
皆が行ってくれないと、俺、行けないんだけど。
「ねえ、君。君は行かないの?」
男の子に近寄り、声を掛けた。
しゃがみこんで目を合わせてみる。
前髪の隙間から、オレンジと赤が混ざったような綺麗な瞳が垣間見える。
すごく綺麗な瞳だ。
宝石みたいに輝いている。
じっと見ていると、彼が目を逸らす。
前髪を押さえ付けている。
あんなに綺麗な瞳なのに、嫌なのかな?
「もったいない⋯」
「え?」
「あ、いや、何でもないよ。」
思わず言葉が出ちゃったけど、嫌なら触れない方が良いね。
「あのさ、他の子は皆行っちゃったけど⋯君は行かないの?」
「⋯⋯⋯。」
「ソロで行くの?」
返事が無い。
どーしよーかなー。
「⋯⋯⋯⋯ぃ。」
「⋯⋯⋯⋯え?」
今何か言ったよね?
「⋯⋯どうしたら良いか、⋯⋯分からない。」
⋯なるほど?
「⋯君、ゲームした事ないの?RPG系のやつ。」
「⋯ない。」
「そっかぁー。じゃあ、異世界転生系のマンガとか、アニメとか観たことは?」
「⋯ない。」
「そっかぁー。」
知識が何も無いなら、不安になっても仕方が無いかぁ。
うーん。
「じゃあ⋯⋯俺と一緒に行く?俺、異世界物とか好きだし、ゲームもよくやるし、実際に戦った事もあるし、そこそこ強いよ?」
「⋯⋯⋯え?」
「どうする?」
彼に向かって、手を差し出す。
俺が差し出した手を、彼がじっと見つめる。
まるで、信じられないものを見るみたいに。
え?なに?ダメだった?
「⋯⋯俺なんかと、一緒に⋯行って、くれるの?」
「え?うん。」
「俺は⋯⋯皆に、嫌われて⋯」
「ぅん?それはよく分からないけど⋯俺も友達は1人しかいないよ?」
「⋯⋯足手まといに、なるかも⋯」
「その時は、バーンって霊力ゴリ押しで⋯」
「「おい!」」
何か、後方から突っ込まれたけど、気にしないでおこう。
今は、この子を連れ出さないと。
「君が行かないと、俺も行けないしさ。だから、一緒に行こう?」
警戒心を和らげる為に、ニコッと笑いかけてみる。
こうすると、学校ではだいたい皆、優しくなる。
颯介以外は。
差し出した手に、そろそろと手が伸びる。
お?
警戒心は解けたかな?
「よし、行こう!俺の名前は桜庭晴人。君の名前は?」
「⋯天道四季。」
「試験の間、よろしく!」
「うん、よろしく⋯。」
ちょっと元気の無い仲間を連れて、いよいよダンジョンだ!




