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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第36話 反撃、そして⋯

❀ ❀ ❀


ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ⋯


電子音が聞こえる。

うん、またこの展開かぁ⋯。

せっかく、この機械外れたと思ったのにぃ⋯。


「晴人くん?気付きましたか?」


声のする方に目だけを動かす。


(⋯⋯⋯あれ?身体が動かないぞ?)


「晴人くん、身体、動かせます?」


声の主は明さんだ。

明さんに聞かれて、もう一度身体を動かそうとしてみる。

やっぱり、上手く力が入らない。

動かそうと強く力を入れてみるも、体が固まったみたいだ。


「どうやら無理そうですね⋯⋯。」


明さんが、とても不安げな表情だ。


「晴坊、声は出せるか?」


今度は史道さんの声。

明さんと反対側から、聞こえた。

声⋯⋯声か。

先ずは口を動かしてみる。

ほんの僅かだけど動いた。

次は、声⋯⋯⋯⋯無理だ。

喉にも力が入らない。

声を出すって、意外と筋肉を使うのな。


「⋯⋯出せないか。」

「⋯⋯ちょっと待っててくださいね。」


明さんが、病室を出ていき、次に戻ってきた時には玄を連れていた。


「千里と交代で、玄を連れてきました。⋯⋯晴人くん、玄は君の使い魔なので、恐らく「念話」で話せると思うんですが⋯⋯霊力を練る事は出来ますか?」


明さんに言われて、そっと目を閉じる。

身体に力は入れず、刀印を結ぶイメージをする。

そして、額に意識を集中させる。


ズキンッ


左胸に小さな痛み。

丑の刻参りの影響か、いつもより練りづらい。

それでも、痛みを無視して少しずつ霊力を高める。


「大丈夫ですよ、晴人くん。それくらいあれば、大丈夫。では、玄、頭の中で、魔力を込めつつ、晴人くんに話しかけてください。」

「おう、分かった!」


『⋯⋯は⋯⋯』


ん?何か聞こえた気がする。

頭の中で、何かが響いたような変な感じ。


『⋯⋯⋯ーい⋯⋯⋯か⋯⋯⋯⋯。』


ん、あともう少し⋯。


『⋯⋯おーい、聞こえてるか?晴っ!』

『⋯⋯聞こえたっ!』

『うおっ!デカイ声出すなよ、ビビるだろ?』

『いや、音量調節とか、ちょっと分かんないけど⋯⋯今はどう?』

『おう、ちょうど良いぜ!』


「どうです?出来そうですか?」

『はい!』

「うす!大丈夫だ!」

「では、玄、通訳をお願いしますね?」

「任せろっ!」


念話が成功し、俺の言葉は玄が伝えてくれる事になった。


「颯介くんが、慌てて私に連絡してくれたんです。時間も時間なんで、彼には帰ってもらいましたけど。颯介くんから大体のことは聞きました。⋯大変な目にあいましたね。」

「まさか、ストーカー少女が来るとはなぁ⋯⋯。ナースステーションも、たまたま看護師が居なかったらしいぞ。」


あー⋯だから病室まで⋯⋯あれ?


『なら、彼女は看護師さんに聞いて病室まで来たわけでは無いって事?』

「⋯⋯そうなるな。」

「颯介くんも、何故彼女が入院先を知っていたのか不思議がってましたよ。」


だよねぇ。

病院内にもセキュリティが必要かもしれない。

悪意を遮るやつ。

⋯あーー⋯でも、彼女の場合は、あれが悪意なのか分からないな⋯。

元々、思考が少し変わっているだけかもしれない。

⋯⋯そっちの方が怖いな。


「ただまぁ、色々と仮説は立てれる。⋯が、先ずは晴坊の状態についての説明だな。」

「ええ。⋯⋯晴人くん、君、丑の刻参りとは別の呪いに侵されています。」

『⋯⋯丑の刻参りとは別の⋯?って事は、2つの呪いに掛かってるの?俺。』

「そうです。それで⋯⋯原因も分かっています。」


明さんがそう言うと、史道さんが護符が貼ってある透明な瓶を、横になっている俺にも見えるように掲げる。

中に入っているのは、紺色のリボン。


「例の少女が持ってきたクッキーのビニール袋を縛っていたリボン。これ、裏に呪詛が描かれています。」

『呪詛が?』

「恐らく、身体の動きを奪う呪いだ。」

『身体の⋯⋯これ、いつまでこの状態なんですかね⋯』

「分からん。だが、ずっとという訳ではないはず。」

「ええ、恐らく。一応封印していますが、このリボン自体にはもう、効力は無いですね。一度きり、しかも、晴人くんが気付かない程度の霊力しか無かったはず。」

「せいぜい1日か2日⋯⋯晴坊の今の抑えられてる霊力だと、長くて3日ってところか。」

「まるで、丑の刻参りの補助をしているみたいですね。」

『補助⋯⋯⋯なんで彼女が?意味が分からない⋯。』


彼女は何がしたかったんだ?

あれだけ好きって言っておきながら、なんでこんな事に?


「さっき言ってた仮説だけどな?⋯晴坊がストーカー少女に虐められた日。あの日、お前の異母兄(あに)が、あの場に現れたって話したろ?覚えてるか?」

『あ、はい。覚えてます。』

「研は離れた所に居たから詳しい事は分からないが、もしかしたら、そこであの少女と高坂秀治の間で繋がりが出来た⋯もしくは何かしらの取り引きがあった⋯のかもしれない。」

『兄とあの子が?』

「断定は出来ないが⋯⋯今回の事や今の状況を考えると⋯⋯可能性はある。」

「かなり高いと思いますよ。さすがにただの女子高生がこの呪詛を持ち込むなんて⋯⋯これが普通だったら、世も終わりですよ。」

「まぁな。」

『確かに⋯。』

「それと、こんな状態なので、しばらく退院は出来ません。」

「医者も、何が起きてるんだって慌ててたからな⋯。」

『でも、このままだと、病院も困りませんかね?』

「このままだと⋯少しまずいかもしれませんね。」

「とりあえずは、今夜だ。」

「そうですね。この新しい呪いの影響があるかどうかも分かりませんし、今夜で終わるかどうかも⋯。」

『うん。』

「さっさと呪詛返しで終わらせたいが⋯身代わり人形がな。後は、奴らの正体を暴けるかどうか。狐共にかかってるな。」


玄がビクッとしたけど、触れないでおこう。


「少し休んで、備えましょう。」

「ああ。」

『はい。』


❀


午前2時。

時間だ。


⋯カーンッ カーンッ カーンッ カーンッ⋯


釘の音と共に、左胸に痛みが走る。

けれど、今は身体が動かせない為に、左胸を押さえることも、呻き声をあげることも出来ない。

左胸を押さえても痛みが軽減する訳じゃないけど、押さえていないといつも以上に痛みを強く感じる。


ーーもどかしい

ーー痛い

ーー苦しい


「今夜、ケリをつけましょう!ーー反呪っ!!」


明さんが術を発動させると、黒い靄の形をした邪気が可視化される。

俺の傍で動きを止め、来た方向へと戻っていく。


「今日は多いな。そして、濃い。」

「ええ。あちらも勝負を賭けてきたのでしょう。」

「まあ、それはこっちもだけどな。⋯おい!狐共!後を追って、その先で待機だ!この邪気が消えたら、「身代わり人形・改」を発動させるっ!それを追えっ!」

「はあ?!なんでお前に指示されなきゃ⋯」

「千里。⋯⋯やってくれますね?」

「⋯⋯⋯⋯いえっさー。」


うわぁー⋯明さん、笑顔で千里を黙らせた。

千里、明さんの事怖いって言ってたもんな⋯。

明さん、本当に一瞬だけど、霊力上げたよね?

頑張れ、千里。

俺の為に。


そして、1分と経たないうちに、邪気が全て病室から出ていく。


「次はこいつだ。奴らの身代わり人形は、今の跳ね返りで、既に使い物にならないだろうからな。」

「ええ。向かう先は⋯⋯」

「「術者だ。」」

「身代わり人形・改ーー解呪っ!!」


改くんが、光を放ち、大量の黒靄が立ち上がる。

そして、さっきとは別の方向へと飛んでいく。

飛びながら、先が幾つかにバラけていく。


「何ヶ所かに分かれているようですね。」

「ああ、他の気狐達も呼んでおいて正解だったな。あとは⋯呪具の回収だ。」

「ですね。」


明さんが、こちらを向く。


「晴人くん。これから私と史道も奴らの方へ向かいます。ここは一時的に空になりますが⋯⋯結界を張っていきます。看護師さんが来るかもしれないので、絶対防御にはなりませんが、悪意を持つ者は入れませんので、安心してください。」


俺は、明さんの言葉に、瞬きで返事をする。

それを見た明さんが微笑む。


「必ず、呪具を回収してきますね。」


そう言うと、窓のサッシに手をかけ、2人とも飛び降りた。


ーーここ、三階ですけど?


いや、俺は何も見てない。

あれは気のせいだ。

もしかしたら、俺の勘違いで、ここは2階なのかもしれない。

⋯⋯⋯いつか俺も、三階から飛べるかなぁ⋯。



ガチャッ


ん?今、扉が開いた音がしなかった?

くそっ、体が動かせない。


コツ コツ コツ コツ コツン


「ハルくん、見ぃ~つけたぁ。ふふふっ。」


⋯⋯⋯ああ、地球よ。

頼むから、滅びるなら、今。

今、滅びてほしい。


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