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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第34話 反撃の狼煙

❀ ❀ ❀


ーー午前1時50分。


いつも釘を打つような音が聞こえるのは、決まって午前2時。

律儀だよねぇー。


ベッドサイドには明さんが、足元には史道さんがスタンバっている。

そして、外では玄と輝が、性懲りも無く集まってくる黒蛇を払い除け、千里と環さんは千里眼を使って黒蛇の元を探っている。

そして俺の顔の横には、「身代わりの藁人形・改」も、準備万端。

これは、史道さんお手製の改良版。

本来の身代わり人形は、呪われた人の代わりに呪いを受けてくれるだけの人形。

呪いの種類や強さによっては数回受けてくれるけど、「死」を招くような呪いには1回で黒焦げになる、言わば使い捨て。

そして、呪いが届く前に祓ってしまえば未使用で終わる。

けど、この「改」くんは、たとえ祓っても、近くで呪いの邪気を感知すると、少量ずつ溜め込み、人形の中で倍に増やし、解呪と共に、術者の元へ邪気を送り返す「倍返し人形」くんなのである。

怖い。

絶対に、史道さんを敵に回してはいけないのである。

まぁ、そもそも人を呪わなければ良いんだよ。

人を呪わば穴二つ⋯⋯俺は入らない予定だよ、墓穴には。


カチッ カチッ カチッ カチッ⋯

2時まであと1分。


「晴人くん、そろそろです。」

「はい。」

「晴坊、今夜は俺達がいる。気を楽にな。」

「⋯ありがとう、ございます。」


皆がいる。

皆が、俺を助けようとしてくれている。

だったら俺も。

こんな卑怯なやり方には、絶対に負けてやらない。


カチッ


⋯カーンッ カーンッ カーンッ⋯


来た。

丑の刻参りが、始まった。


ズキン ズキン ズキン ズキン ズキンッ


痛みが出るのも早くなったな。


明さんが、刀印を結び指先を顎につける。

明さんの霊力が、高まっていくのが分かる。

前から思っていたけど、明さんって、凄い霊力量だよな。

先祖返りの俺と、そんなに変わらないんじゃないか?

もし、御先祖様が生きていたらーーいや、御先祖様がもし、既に生まれ変わっていたとしたら。

明さんぐらいの力を持ってるんじゃないだろうか。


ズキンッ


「ぐっ⋯!」


一際強い痛みに胸を押さえる。


「ーー反呪!!」


明さんが、空に五芒星を描いて、俺に向かって反呪術の呪文を唱える。

明さんも、うちに来てからは「晴人式」である。

まぁ、効果は明さんの方が、断然上だけど。


俺の身体が、優しい光に包み込まれる。

それと同時に、胸の痛みが引いていく。

そして、さっきまで見えていなかった、窓の外から長く伸びる黒い靄が、突如頭上に現れて、俺を包む光に跳ね返されて戻っていく。


「千里、環っ!」

「「はっ!お任せを!」」


史道さんの呼び掛けに、千里と環さんが、窓の向こうで応える。

そして、黒い靄を追いかけて行った。


「⋯⋯ひとまず、これで様子を見ましょう。⋯⋯晴人くん、身体はどうですか?」

「明さんが術を発動させてからは、痛みは消えました。ありがとうございます。」

「それは、良かった。今回は、術者を見つける為に、呪いの打ち消しでは無く、防御に重点を置いたのですが⋯さてさて。2人が帰ってこないと分かりませんね。」

「呪詛返しとは違うんですか?」


さっきの呪文。

あれは、呪術全般への対抗手段だ。

防御、無効化、解除、封印、遮断、打ち消し⋯どこに重点を置くかは、術者のイメージ次第。


「まぁ、呪詛返しでも良かったんですが、ほんの少しでも返せない確率を残したくなかったんで、防御に全振りです。まぁ、成功すれば、呪いは術者の元へ戻るので、結果は似たようなものですね。」

「まぁ、馬鹿じゃなければ、向こうも何かしら対策はしているだろう。そういう意味じゃあ、この「身代わり人形・改」が後で良い仕事するだろうよ。」

「呪いは少しでも吸収出来ましたか?」

「ああ、バッチリ。」


うわぁー⋯2人して、悪い顔でニヤって笑ってるぅー。

俺が敵なら、土下座して謝ってるよ。

明さんと史道さん。

2人がいれば、怖いもの無しに思えた。


❀


「「すみません、やられました。」」


環さんと千里が、項垂れて帰ってきた。


「やられた?」

「はい、あの黒靄が戻っていく先を追っていったんですが⋯」

「その先には、身代わりに使っただろう、藁人形が残されていただけでした。⋯⋯これです。」


千里が黒く焦げた藁人形を、ベッドテーブルの上に置く。


「⋯まぁ、そうするでしょうね。」

「あいつら、お前が戻ってきた事を知ってるようだな。」

「ええ。」


明さんと史道さんが、顔を見合わせる。

そして、皆の視線が、藁人形に集まる。

まぁ、呪いをかける以上は、返される事も視野に入れるよねぇ。

家業としてやってるなら尚更。


「これは、俺が焚きあげておこう。」


そう言って、史道さんが藁人形を護符で包む。


「こちらはどうなりましたか?」

「うん、今回のは祓い返した形になるね。あとは⋯史道の「藁人形・改」もちゃんと機能している。」

「と、言うことは⋯」

「とりあえず、あと2夜だな。報復はその後だ。」


環さんの問いに、明さんと史道さんが答える。


「今回は返す形になりましたが、相手の術者は無事。なら、明日、明後日と、続くでしょうね。晴人くん、大丈夫ですか?」

「⋯うん、大丈夫。俺には、皆が居てくれるから。」


そう言うと、皆の表情が少し柔らかくなった。

術の完成まで、恐らくあと2夜⋯⋯。

絶対に乗り切ってやる。

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