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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第33話 暗中模索

❀ ❀ ❀


千里達が帰った後、看護師さんが来て、明日の検査について、色々説明してくれた。

その後しばらく、眠っていたようで、目を覚ますと、窓のカーテンは閉められ、代わりに照明が点いていた。


ーーまた、夜が来る。


病室を見渡すと、簡素な個室なのが分かる。

夜中の胸の痛みの事を考えると、周りに人が居ないのは助かる。

きっと環さんが気を利かせてくれたのだろう。


ベッド上のテーブルには、いつの間にか食事が置いてあった。


(そういえば、朝はミルクティーだけだし、昼はパンだけ⋯流石にお腹空いた⋯)


身体を起こして、テーブルを手前に引いて、箸を取る。

病院食は薄味で美味しくないと聞くけど、普通に美味しい。

色々制限があったり、病状によって粥だったりするんじゃないかな。

せっかくその人の身体を思って作ってくれてるのになぁ。


食事を済ませて横になっていると、ノック音が響く。


「はぁーい。」


返事をすると、ドアが開き、明さんが入ってきた。

約10日ぶりの明さんだ。

顔を見た瞬間、一気に安堵した。

ホッとして、心が温かくなる。

身体中の力が抜ける。

同時に、自分がどれほど緊張していたのかを知る。

心も、身体も。


「⋯明さん⋯⋯。」


明さんが俺の顔を見て、いつもの穏やかな笑顔を見せる。

そのままベッドサイドまで来て、椅子に座る。


「大変な、11日間だったようですね。」

「はいぃー⋯。」

「そんな時に傍に居られず、すみません。」

「いや、そんな⋯!誰も予期出来ませんし、それに⋯明さんも大変だったでしょう?」


少し前に史道さんから聞いた、神託の話を思い出す。

明さんは、仕事とは別にその件でも色々動いていたはず。


「ええ、まぁ⋯⋯本当に⋯⋯何年経っても彼は⋯⋯」


明さんが若干疲れた顔をする。

彼とは、史道さんのことかな?

でも、そうなら名前で言う?

確か、当主会議があるって史道さんが言っていたけど、そこで何かあったのかな?


「当主会議が上手くいかなかったんです?」

「ああ、史道に聞いたのですね。まあ⋯⋯大丈夫ですよ。」

「当主っていうのは、直系の方々と?」

「それもありますが⋯メインは、違います。蘆屋家、賀茂家、あと⋯本来なら桜庭家、ですかね。今回は私が代理です。」

「え?そうなの?⋯⋯⋯賀茂家っていうと、平安時代に安倍家と双璧と言われた、あの?でも、あそこは⋯」

「ええ。あそこも直系は戦国時代末期に断絶、傍流の幸徳井家(こうとくいけ)も今は表舞台からは消えていますが、安倍家と同様、史実とは別の隠れ傍流が存在します。それが平安から脈々と続く賀茂家の裏の直系、そして現当主は賀茂光希(かも みつき)です。⋯⋯私や史道より1つ上の、少々癖のある男ですよ。」

「へぇー⋯それは知らなかった⋯。」

「まぁ、この辺は、当主になった時に伝えられる話なので、今の晴人くんが知らなくても仕方が無いですよ。⋯それより⋯身体はどうですか?」


明さんが、心配そうに眉を寄せる。


「今は⋯⋯とにかく身体が重くて⋯⋯何か気力が無い?うーーん⋯やる気が起きない⋯?かな?」

「それは⋯⋯困りましたね⋯元々、晴人くんのやる気は低空飛行なのに⋯。」

「⋯⋯⋯そんなこと⋯⋯」


明さんにニコッと微笑まれた。

ありますね、あります。

俺のやる気はいつも低空飛行です。


「⋯⋯今は、墜落の危機です。」

「それは、大変です。」


そうなんです。

もう、俺、ベッドから降りたくないもの。


「⋯晴人くんの身に起きていることですが、これは、呪いです。」

「⋯⋯やっぱりですか?」

「ええ。今、玄と輝が、病院に集まってくる黒蛇を一匹ずつ捕獲していますが⋯次から次へとやってきますね。」


それで2人の姿が見えないのか。

それにしても⋯


「黒蛇?」

「黒蛇は、使い魔です。しかも、高坂家が代々好んで使役しているそうです。」

「高坂⋯⋯じゃあ、この呪いも?」

「恐らく⋯⋯。今、史道が調べてくれています。晴人くん、最近、高坂家の者と接触しましたか?」


明さんに聞かれて記憶を呼び起こし、ここ1ヶ月くらいを遡る。


「⋯⋯⋯⋯いえ、記憶に無いですね。休日も村から出てないし、村の人か学校の人としか接してないです。」

「⋯うーん⋯学校の関係者に、新しく仲良くなった人は?」

「⋯⋯仲良いのは、颯介だけです。」


あ、なんかちょっと可哀想な子を見る目になった。

いやー、知らない人と接するのは疲れるし、あまり周りも寄ってこないんです。


あっ、そういえば⋯⋯。


「⋯⋯⋯そういえば、10日前までストーカーされてたのと、肝試しで、颯介以外に女子が2人居たのと、サッカーで、クラスの男子が何人か⋯⋯話したかな?」

「ストーカー⋯⋯⋯それは?」


山下さんの話をする。

まぁ、例の口が触れた件はぼかして。

口に出すのも、こうして話して思い出すのも、本当は嫌だ。

記憶ごと消してしまいたいくらいに。

けど、いつ、どんな時に、どんな記憶が必要になるか分からないために、実際に消すことはしない。

まぁ⋯⋯消したいくらい嫌な思いでも、この1件だけだけど。

今は極力思い出さないように封印状態。


「⋯⋯⋯独特な⋯変わった子ですねぇ。お疲れ様。」


明さんに頭を撫でられた。

そう、俺は頑張ったんですよ⋯⋯再封印しても良いかな?


「今、その子との接触は?」

「無いです。⋯⋯そういえば、彼女、あれからずっと休んでるって颯介が言ってましたよ。」

「⋯⋯そう、ですか⋯⋯。聞く限りは、そんな繊細なタイプには感じませんが⋯。」

「⋯⋯あ。⋯この間史道さんが、その日、俺が帰った後に、俺の異母兄(あに)が、学校に現れたって言ってました。」

「⋯⋯君の兄が⋯?ふーむ⋯。」

「⋯⋯⋯そう、そういえば、千里もあの肝試しの日も、深夜に異母兄が旧校舎に居たって言ってた⋯。」

「ふむ、どちらも異母兄⋯⋯高坂秀治(しゅうじ)ですか。」


もう、高坂が無関係っていう方が無理があるな。


コンコンッ ガラッ


返事をする間もなく、ドアが開き、史道さんが入ってくる。

⋯⋯ノックの意味とは?


「よう、晴坊。お前⋯⋯次から次へと⋯⋯面白いことになってるな?」

「史道さん⋯⋯。」

「何、呑気なことを。」


他人事のように言う史道さんに、明さんが注意をする。

史道さんは素知らぬ顔だ。


「それで、晴坊から聞けた事は?」


明さんが、さっきまでの話を史道さんにもする。


「ああ、例の⋯顔が酷え事になってた時か。」

「そうです。」

「それから、肝試しの時の呪具に、高坂秀治ねぇ⋯⋯。」

「あ、あの時の魔鏡は?」

「ああ、あれはこのまま、こっちで預かる。」


何やら研究するんだね。

良い事に使われることを祈る。


「何か分かりました?」


明さんが尋ねると、史道さんが顎に手を当てながら答える。


「まず、これは“丑の刻参り”又はそれの類似呪術だ。これは、分かるな?」

「はい、そうじゃないかとは思ってました。」

「⋯通常、丑の刻参りは7日間毎夜儀式を行い、7夜目に願いが叶う。ただ⋯⋯俺達陰陽師や呪術師の呪術と、邪術師の儀式が同じかは分からない。更に、改良されている可能性もある。ただ⋯初めに痛みが出てからの様子を聞くに、日数的には7夜である可能性が高い。」

「7夜⋯今日は5夜目⋯。」


明さんと史道さんの顔に真剣味が増す。


「晴坊。丑の刻参りには、藁人形が呪具として使われる。これは知ってるな?」

「はい、知ってます。」

「そして、より効果を強めるには、藁人形に対象者の写真を貼ったり、藁人形の中に対象者にまつわるものを入れる。」

「対象者のってことは⋯」

「お前の物ならなんでも。常に身に付けている物や、髪や爪、体液なんかだな。」

「体液⋯⋯血を吐いたのは今日だし、俺の髪や爪⋯⋯そんなもの⋯⋯⋯」


『高坂の長男が深夜に旧校舎でなんかしてるのを、この目で見てましたからねぇ。』


旧校舎?


「⋯⋯⋯あ。髪の毛⋯⋯。」

「何か思い当たる事でも?」

「いや⋯⋯あの肝試しの時、邪気が凄くて⋯。皆が体調を崩していたから、護符と俺の髪で、簡易御守りを作って、颯介と女子2人に渡したのを思い出した。けど⋯。」

「あー⋯なるほど。⋯⋯その時に余分に抜けた髪を落としたのを拾われたかもな⋯。渡した奴らが、高坂の関係者じゃなければ、だが。」

「メンバーはクジ引きだったし、あの女子2人が高坂の関係者とは思えないけど⋯⋯。めっちゃ怖がってたし、霊力なんて全然。」

「その子達、今は学校には?」

「普通に来てましたよ?来てないのは、意識不明だった12人と⋯⋯あの例の彼女と⋯⋯あ、あと取巻の人が1人噂をばら蒔いた後から来てないって颯介が⋯」

「うーん⋯そうか。まぁ、それは一度調べてみよう。ただ、呪具は強化されてる可能性が高いな。」

「ええ。肝試しの後に旧校舎に現れたというのもそうですね。後で千里に詳しく聞いてみましょう。なぜ始末しなかったのかも含めて。」

「うん⋯⋯ん?始末?」


ニコッと笑う明さんと、無言の史道さん。

聞き間違いかな?


「⋯でも、髪の毛って、あの旧校舎で見つけられるものですか?」

「普通の人なら難しいですが、奴らには使い魔がいますからね。」

「晴坊の髪なら、例え1本だろうと、かなり霊力を含んでるだろうからな。霊力を含んだものを探させればいい。」

「あ⋯⋯そうか。そうだね。」


お守りの御神体に使えるわけだから⋯霊力感知さえ出来れば、難しくないのか。


「やる事は2つ。まずは、今夜。送られてくる呪いを祓う。もしくは、身代わり人形に呪いを移す。あとは、呪具の回収。」

「呪具の回収は、使い魔達に頼むしかないでしょうね。証拠も無いのに、生身で乗り込む訳にはいかないですし。」

「ああ。最終手段だな。」


ん?

最終手段って事は、それも最後にはありうるの?


「あとは、祓うのに失敗した時の為に、身代わり人形も作っておきましょう。晴人くんの髪を後で1本くださいね。」

「はい!」


明さんと史道さんを中心に、今後の流れが決まっていった。

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