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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第32話 暗転

❀ ❀ ❀


今日は一日、グッタリと過ごした。

今朝、神社下の鳥居で合流した時から、颯介の視線が痛い。

朝からずっと、眉間に皺を寄せて心配そうに俺を見ている。

颯介だけじゃなくて、クラスの皆も気遣わしげな視線を送ってくる。

その視線に気付いていない訳じゃないけど、今日は愛想笑いする元気は無かった。

まぁ⋯⋯いつもしてないか。


ーー放課後。


重い体をノロノロと動かし、グラウンドに向かう。


(これじゃあ、かえって邪魔だな。知識は詰め込んでも、体の動きは別だし⋯。)


メンバーが集まり、練習が始まる。


「もう無理だと思ったら、抜けるね。」


そう声を掛けて、皆に心配されつつもキーパーのポジションにつく。


「無理するなよー。」

「お前に何かあったら、俺たちの命が⋯⋯。」


⋯⋯⋯なんか、命が脅かされているみたい。

俺もこんなんだし、世の中物騒だな。

怖い、怖い。


キーパーは、他のポジションのように走り回りはしないけど、ボサっと立っているわけじゃない。

もちろん、素人の俺に、指示を出したりなんてことは出来ないし、求められていない。

メンバーから依頼されたのは、


「とりあえず、ゴールに向かってきたボールを止めてくれ。それなら手も使ってよし。」


それだけ。

けど、ちゃんと流れを見ていないと、構えられないから、常に見ていないといけない。


「「「キャーッ!桜庭くん、頑張ってぇー!」」」


⋯⋯⋯なんか、ギャラリー多くない?

あの子達、練習無いの?

しかも、俺⋯⋯⋯まだ、立ってるだけだけど?

頑張るって事は、ボールを追い掛けるの?


「ダメだ、桜庭っ!お前はそこから動くなっ!」


ビクッ


「⋯⋯⋯まだ、動いてない⋯。」


思わず足が一歩、動いたけど。

なんで分かったんだ?

あの子達⋯⋯紛らわしい応援しないでほしい⋯。


あぁ⋯ドッヂボールだったらな⋯。


そうこうしている間に、敵チームがボールを蹴りながらこっちに向かってくる。


「⋯来たっ!」


いつでも動けるように、構える。

味方チームも必死にボールを奪おうと攻めたてる。

味方チームの間を抜けて敵チームの1人が近付いてくる。

よし、止めてや⋯⋯ ズキンッ


「え?⋯⋯⋯あ⋯。」


左胸に、鋭い痛みが走る。


ズキン ズキン ズキン ズキン ズキンッ


「⋯ぐっ⋯!」


あまりの痛みに、思わず胸を押さえて膝をつく。

同時に俺の顔の左側をサッカーボールが横切っていく。

ボールはそのままゴールに入り、地面を転がる。


「桜庭っ?!」


遠くで、驚愕の声があがる。


脈打つ痛みに胸が詰まる。

呼吸が苦しくなり、慌てて空気を吸い込む。

途端に噎せて咳き込み、赤黒い血が吐き出された。


あちこちで悲鳴が上がり、それを聞きながら、俺の意識は段々と遠のいていったーー。


❀


ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ⋯⋯


ーーーなんだろう⋯⋯機械の音⋯⋯⋯


少しずつ意識が浮上し、ゆっくりと目を開けると、視界には白い天井。


(⋯⋯どこ、ここ⋯⋯)


「⋯⋯⋯晴?」


名前を呼ばれてそちらを向くと、泣きそうな顔をした颯介がいた。


「⋯⋯⋯颯介?」

「大丈夫か?⋯⋯お前、サッカーの練習中に倒れたんだよ。覚えてる?」

「⋯⋯⋯⋯ああ、そうだった⋯⋯急に胸が痛んで⋯」


そう言いながら、左胸に触れる。

触った感じは何も無い。


「お前、血を吐いてるし、意識は無いしで大騒ぎになって⋯。先生達が救急車を呼んで病院に運ばれたんだよ。」

「じゃあ、ここは⋯⋯病院?」

「うん。今、環さんと千里さんが医者(せんせい)から話を聞いてるよ。」

「そっか⋯。」


あー⋯結局、迷惑掛けちゃったな。

やっぱり休んでおけば良かった。

慣れない頑張りはするもんじゃないな。


「坊ちゃんっ!!」

「晴人様っ!!」


千里と環さんが慌てた様子で病室に飛び込んでくる。


「⋯⋯⋯2人とも、ここ病院⋯⋯」

「そんなことより、大丈夫ですか?!」


そんなことって⋯。


「あーー⋯なんか、ごめんね?」

「晴人様が謝る必要はございません。」

「そうだぞ?⋯⋯こうなったらもう、あの野郎どもを⋯」

「こらこら⋯。証拠も無いんだし、ダメだよ?」


千里が握り拳を顔の前でプルプルさせて怒っている。

あの野郎どもって、きっと高坂家の事だと思うけど、確証も無いしな。

呪いって、簡単なものなら祓うのは簡単だけど、手の込んだものや、術師が絡んでいると中々難しい。

祓うだけでなく、媒介となっている呪具自体を破壊するなり祓わないといけない。

⋯⋯⋯って事は、俺の呪いにも呪具が存在⋯⋯する?


「あの、医者(せんせい)はなんて?⋯晴、なんか大変な病気だったりします?」


颯介が環さんに、尋ねる。


「いや、簡単な検査では異常は見当たらなかったようで⋯。ただ、喀血しているということもあり、検査入院になりました。追加検査をしながら経過観察をし、その上で精密検査をするかどうか決めていくことになりました。」

「まぁ、呪いじゃあ異常は⋯」

「え?」

「あ。⋯いやいや、こっちの話。」


おーい、千里。

心の中で呟いてー。


(⋯⋯でも、現実的に症状が出始めたって事は、やっぱり術の完成が近付いているって事だよな⋯⋯。)


ちらっと千里を見ると目が合い、小さく頷き、更に眉間の皺を深くする。

千里も同じ事を思ったようだ。


「とりあえず、颯介くん、家まで送りましょう。」

「え?でも⋯」

「我々も慌てて来たので、晴人様の着替えや手続きに必要な物を取りに一度帰りますので、ついでにお送りしますよ。」


環さんに言われて、颯介が心配そうにこっちを見る。

また、色々抱えているのかもしれない。

俺を休ませればよかったとか、思っていそう。

⋯⋯⋯俺が、元気になったら休ませてくれ。


「大丈夫っすよ、颯介くん。和泉さんがこっちに向かってますから。お説教も、お世話も、教育的指導も、後始末も、全部やってくれると思いやすぜ!」


おい、怒られるのが2つなかった?!


「⋯⋯後始末?」


もう、本当に千里くん⋯⋯お口にチャックだよ。

俺のジト目を気にすることなく、颯介の背中を押して、病室から出ていったのだった。

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