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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第31話 厳重体制です!

❀ ❀ ❀


「坊ちゃん。」

「晴人様。」

「「学校、休みましょう。」」


眉間に皺を寄せて、そう言った環さんと千里。

2人共、苦しげに顔を歪めている。


「え?いいの?」


いつもなら、学校に行くように言われるのに、今日は休んで良いと言う。

ベッドから起き上がると、千里が傍らで膝をつき、俺の頬にそっと触れ、そのまま親指で目の下の涙袋をそっと擦る。


「坊ちゃん⋯⋯⋯死相が出てます⋯。」

「しそう⋯⋯え?⋯死相?」

「また夜中に、胸に痛みが走ったんですよね?」

「うん⋯」


月曜日の夜に突如現れた異変は、毎晩現れ、今日で4日目だ。


「今日は金曜ですし、今日休めば土日を入れて3日、休めますよ。」

「⋯⋯⋯そんなに酷い顔してる?」

「酷いなんてもんじゃないっす。ごっそり生気が抜かれてる⋯。」


千里が、珍しく懇願するような目をしている。


「⋯⋯⋯てことは、やっぱりこれは⋯⋯」


左胸に手を当てる。

今、左胸には霊力の低い者には見えない、黒い釘のようなものが刺さっている。

今朝、目覚めた時に現れた、昨日までは無かった物。

中々起き出さない俺を心配して、見に来た千里が慌てて環さんを呼んできた。

そして、これを見た瞬間、2人の表情には怒りと焦り、そして心配が入り混じっている。

やがて、環さんが口を開く。


「それは⋯⋯⋯呪い、です。」


部屋の中に沈黙が落ちる。


「呪いって⋯⋯⋯俺、そういうのに強いはずなんだけど⋯⋯⋯。」

「ですよね⋯。」

「ええ⋯。」

「「「うーーん⋯⋯。」」」


3人とも、腕を組んで悩む。

呪いと言えば⋯⋯


「⋯⋯高坂、かな?」


俺には一つしか思い当たらない。

最近、色々あったばかりだし⋯。


「可能性は高いです。」

「十中八九。」

「ですが⋯⋯、そうだと言い切る証拠も無いです。」

「まぁ⋯そうだね⋯。」


けど、それ以外で、呪いをかけられる覚えも、掛けられそうな術者も、俺は知らない。


「これ⋯⋯⋯どんな呪いか解る?」


俺が尋ねると、2人はじっと、俺の胸元を見る。

そして、ほぼ同時に首を横に振る。


「徐々に生気を奪い、死に至らしめる類(たぐい)のものとしか⋯」

「俺達は、陰陽師じゃないから、そこまで詳しくないんだ⋯」


2人揃って、シュンとしている。


「しょうがないよ⋯⋯俺も分かんないし⋯。この間の件と言い、経験不足が身に染みるよね⋯。」

「それこそ仕方が無いっすよ。」

「ええ。むしろ⋯この時代に、晴人様の年齢で、呪いに詳しい訳が無いです。」

「そうですよ!」


俺は、あまりこの村から出ないこともあって、呪具なんてものは、昔、じいちゃんと見た一回きりだ。

基本的な勉強は、陰陽師としてしていても、なんせ実践が足りない。


「これ、釘みたいに見えるよね⋯。時間帯も深夜二時って言うと⋯」

「⋯⋯丑の刻ですね。」

「うん。どうしても、丑の刻参りが浮かぶよね⋯。」


呪いの儀式として、一般人によく知られている儀式。

用意する物も、比較的簡単。


「でも、実際に民間伝承で知られているものと、呪術師が行うものは違ってきますからねぇ。しかも、邪術師だと、どう変貌を遂げているかもよく分からないっすよ。」

「⋯幸い、今夜、和泉殿がようやく帰ってこられる。」

「明さんが?帰ってこられるの?」

「ええ。彼ならおそらく、呪いの事にも詳しいかと。」

「⋯だと良いなぁ〜⋯。」


何となく、明さんならどうにかしてくれるような、そんな気がする。

明さんの名前に、心が軽くなる。


「⋯⋯じゃあ、頑張って学校、行ってこようかな。」

「え?」

「ええ?!」


俺の決意に、2人がとても驚く。

そうだよねー。

いつもの俺なら、間違いなく喜んで休む。

なんなら小躍りしちゃうかもしれない。

けど⋯。


「⋯⋯今日も、練習があるんだよ⋯。俺、キーパーを舐めてたわ⋯⋯。」

「坊ちゃん⋯。」

「晴人様⋯。」

「⋯⋯だからさ、今日は行ってくる。で、帰ってきたら、明さんに見てもらおう。そしたらきっと、今夜からぐっすり眠れるはずだもん。」


まぁ、絶対とは言いきれないけど、期待を込めて言う。

俺の願望でもある。

頼みますよ、明さん。


環さんも千里も、納得はしていないようで、眉は下がったままだけど、小さく息を吐いた後、それぞれ朝の準備を手伝ってくれる。

環さんは、ご飯の準備に階下へ向かい、千里は制服を出した後、ふらつきながら立ち上がった俺を支えてくれる。


「本当は休んで欲しいんですけどねー。真面目に学校行くなんて⋯坊ちゃんらしくない。」


なんて、ブツブツと不満を垂れる千里。


「ふふっ⋯⋯それじゃあ、俺がいつも不真面目で学校サボってるみたいだからやめてくれる?」

「だって、いつも「眠いー」「めんどくさいー」「休みたいー」って言ってるじゃないですか。」

「⋯⋯それは、本心だよ。出来れば今も行きたくはないよ。けど⋯⋯やっぱり、クラスメイトに迷惑かけっぱなしだからね。ちょっと頑張らないと⋯。」

「⋯⋯⋯無理はしないでくだせぇーよ?」

「うん、分かった。」


着替えてゆっくり階下のダイニングに向かい、食欲は無いので、いつものミルクティーだけ飲み、ギリギリまで時間を使って、支度をする。


(⋯⋯体が重い⋯⋯気落ちする⋯⋯これが呪い⋯⋯)


日に日に弱っていく体。

霊力を練ろうとしても、栓をされているみたいに上手くいかない。


(もしも、丑の刻参りか、その系統なら⋯術が完成する日数があるはず⋯通説なら7日間。あと、3日⋯)


準備が整い、玄関で靴を履いていると、千里がやってくる。

その両隣には、俺の使い魔の玄と輝。


「あれ?2人ともどうしたの?修行中じゃなかった?」

「坊ちゃん、今日はこの2匹を連れてってください。」


千里が2人の背中を押す。


「え、でも⋯」

「こいつらには、他の人間には見えない位置で見守るように言ってありますんで。こんな弱ってる時に、悪い奴らが近付いてきたら、あっという間に攫われますぜ。」

「あ⋯⋯。」

「晴様、よろしくお願いします。」

「任せろよ、晴。」


玄が胸を張り、輝がペコリとお辞儀をする。


「うん。こちらこそ、よろしく。なんか、ごめんねぇ。」


「晴様が謝る事ではありません。」

「そうだぞ!俺達は、お前の使い魔なんだから!」

「ありがとう。」


ニコッと2人に笑いかけると、とても嬉しそうに尻尾をブンブン振っていた。


「⋯⋯とりあえず、耳と尻尾は隠せよ?」


と、千里に耳を引っ張られている。


「「痛いっ!」」


千里に見送られ、いつもより遅い歩調でゆっくりと歩き、颯介と合流して、バス停に向かった。


挿絵(By みてみん)

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