第29話 俺の預かり知らぬところで
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翌日。
土曜日ということもあり、昼近くまでぐっすりと眠った俺は、お腹が空いて、目が覚める。
「ふぁ〜⋯よく寝たぁ〜⋯。」
軽く服を着替えて、ダイニングに向かう。
「お、坊ちゃん。おはようさんでーす。」
「おはよう、千里⋯。あ、寝起きだから、ご飯は軽くで良いよー。」
「お昼はサンドウィッチっす。」
「おー、ありがとう。」
千里が目の前に置いてくれた、ミルクティーを飲みながら、サンドウィッチに手を伸ばす。
んーー、美味い。
もぐもぐと食べていると、テレビの音が聞こえてくる。
『⋯ーいやぁ、今朝入ってきたニュースですけど⋯ちょっとびっくりですねぇー。』
『ほんとですよね、あの大企業の系列会社での事故のニュース。』
『ねぇー。⋯では、もう一度詳しく内容を見ていきましょう。事故が起きたのは、昨日の夕方。山間にあります、桜山高校の敷地内にあります旧校舎です。』
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?」
聞き慣れた学校名に、口に入れる直前だったサンドウィッチを持つ手が止まり、そのまま意識はテレビに向く。
テレビはちょうど休日向けのワイドショーだった。
ゴシップ色が強めだけど、芸能、政治、スポーツ等のなんでもあれで、司会者とゲスト達が、ワイワイと意見を言いながらも笑いを提供する番組。
ゲストの半分近くはお笑い芸人だ。
『この旧校舎、6月に取り壊しが決定していたようで、最後の機会に、と、昨日は生徒主催で肝試しが行われていたようです。』
『おぉー、肝試し!しかも旧校舎って⋯⋯今はもう中々無いシチュエーションじゃないですか?』
『いやー、青春ですねぇ。』
勝手なこと言わないでほしい。
参加したくてした訳じゃない生徒もいるんだぞ。
青春真っ只中なのに、「青春」って言葉が嫌いになりそうだ。
『ちゃんと学校側の許可も得て行われたんですけどね。最初は順調だったようなんですが、次第に戻ってこなくなる生徒が出始めて⋯⋯』
『えっ、怖っ!』
同感です。
肝試し中に、人が戻らなかったら、怪異です。
『そんな状態で、学校側は肝試しを続けてんですね?』
『発覚したのが残り数グループというのと、残りのグループに学内の人気者がいたようで、旧校舎内で合流しようと待ってるのでは?という意見もあったみたいですねー。』
「はあ?」
何、その迷惑な人。
おかげで、俺がどれだけめんどくさい事になったと?
『いやぁー、それでも学校側は一度、確認に向かうべきでしたねー。』
ですよねー。
そして中止になれば良かったのに。
⋯⋯いや、そうすると中で倒れてた人達は、今頃大変な事になってたな?
『で、結局何が起きてたんです?』
『それがですねー、どうやら旧校舎内に何らかのガスが発生していたようでして⋯⋯戻ってこなかった生徒は、意識を失って倒れ、最後に入ったグループの生徒がそれに気付いて倒れた生徒を1ヶ所に集め、介抱している間に、上階の一番端にある教室で爆発が起きた、という事みたいです。』
「⋯⋯⋯ガス爆発?」
なぜ、そんな事に?
『爆発?!』
『そうなんです。どうも、その教室内に入った生徒さんからも、異臭があったと証言があったようです。』
異臭⋯⋯⋯?
“ーーその時何か⋯⋯例えばガスのような変な臭いがしたとか⋯
「うん、臭かった(床の血が)⋯⋯」”
あ。
あれか?
あれは、逆五芒星からの血の匂い⋯⋯
「まあ、嘘は言ってませんよねぇー。坊ちゃんは「臭かった」としかいってませんしぃー。」
千里が自分の分のコーヒーをもって向かいに座る。
「⋯⋯え?千里、聞いてたの?」
「保健室の外で、バッチリ。」
「⋯⋯⋯何か、大事になってるんだけど、俺、嘘で捕まったりしないよね?校舎壊した罪とか⋯」
「いやいやー。聞いた相手が勘違いして受け取っただけですし、坊ちゃん、嘘はついてないでしょ?」
「いや、まぁ⋯そうだけど⋯。」
「まぁ、本当は丸め込むために霊力で惑わせようと待機してたんですけどね?」
「ええ?!」
「でも、寝惚けて小学生レベルまで思考力落ちてた坊ちゃんのおかげで、何もしなくても、上手く事が運びましたー。さすがっす!」
「⋯何が?ねぇ、褒めてるの?ねえ?」
納得いかないんだけど?
空中で忘れられていたサンドウィッチに、かぶりつく。
⋯⋯うん、美味い。
「じゃあ、校舎の天井が吹っ飛んだのは⋯⋯」
「何らかの原因で起きたガス爆発って事で、捜査は進んでるみたいっすね。」
「ほー⋯」
良かったぁー⋯⋯⋯良かったのか?
でも、ガス爆発って⋯あそこは⋯⋯
「あんな場所で、ガス爆発って⋯⋯」
ニヤリと、千里が笑う。
あー⋯なんかしたな?
「まぁまぁ、見ててくだせぇよ。」
千里がニヤニヤしながらテレビを見るので、俺もテレビを見る。
『ガスの原因となる物は見つかってはいないようですし、爆発で、ガスも飛んでしまったようなんです。教室一つの半壊程度なので、量もそんなに多くなかったのでは、と。』
『そもそも、何故そこにガスが?って話になりますよね。』
『そこで、その旧校舎なんですが、解体業者が既に決まっているんですが、それがなんと、隣市の大企業、高坂グループの系列会社なんです。』
『あの高坂グループの?⋯なんでわざわざ、隣市の高校の?しかも建て直しでも無く、旧校舎の解体だけでしょ?』
『⋯⋯大企業がわざわざ乗り出すような案件かねぇ?』
「今喋ってる、フリーのアナウンサー、狐人(人化した妖狐)ですよ。」
「⋯ええ?!あの人、人気のアナウンサーだよね?妖狐なの?!」
「その子孫の半妖ですね。人間と妖狐のハーフ。たまにいるんですよ。この家建てたのも、うちの気狐達と狐人の大工達ですし。箱庭の家もそうでしょう?」
「確かに⋯」
箱庭の中には、各々特化した能力で、人化して仕事をこなしている気狐達が居て、俺達は「狐人」と呼んでいる。
こっちにも、俺が知るより多くの気狐達が暮らしているのか?
考えている間にも、テレビは進む。
『最近では、高坂家のご子息が、この学校の付近で見掛けられたりと、色々ありますしねぇ。警察も任意で事情聴取をしているようです。』
『⋯昨夜から、色々とネットでも話題が出てますしねえ?⋯⋯オカルト的な⋯こういうのねえ?』
『⋯昨夜も深夜に、高坂家の所有する車が高校の裏山に停まってるのを見た人がいるとかいないとか⋯』
『⋯それは、どっちやねん、って言う⋯』
『あははははっ』
『詐欺集団じゃないかとも、書き込まれてますね。』
『まぁ、あくまでネットの噂ですけど、政界に出るのでは?と噂されていた高坂氏には、大きな痛手でしょうねぇ。』
「⋯⋯⋯⋯高坂?⋯⋯⋯マジで?⋯⋯昨日のアレ、何か関係あるの?」
「十中八九有りますねぇ。坊ちゃんから預かった魔鏡には、奴らの匂いが残ってましたし、高坂の長男が深夜に旧校舎でなんかしてるのを、この目で見てましたからねぇ。」
「⋯え?見てたの?」
「だって、絶対来るって思ってましたもん。」
「⋯⋯⋯⋯まさか、あの情報って⋯⋯」
「俺がバッチリ、ネットに流しておきました!」
ウインクして得意気な、金髪美青年。
⋯⋯なんだか楽しそうだね?
⋯⋯⋯⋯まぁ、俺に害がないなら良いけど⋯。
ご愁傷様、高坂の人達。
諦めの悪い自分達と、暇を持て余した仙狐に見つかった運の悪さを呪ってくれ。
呉々も、俺を標的にしないでね。
「⋯⋯そういえば、魔鏡はどうしたの?」
「あぁ、あれ。あれは、ああいうのを喜んで研究しそうな所に送っておきました!」
「⋯ちなみに、どこへ?」
「蘆屋家です!」
わぁーい、喜んで研究しそうだねぇ。
主に、史道さんが。




