第28話 眠いって言ってるのにぃ
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階段を早足で駆け下り、左側校舎の颯介達が待つ教室の前に立ち、護符を剥がしてから扉を開ける。
ガラッ
「晴っ!」
「颯介、皆っ!」
「「大丈夫かっ?!」」
⋯⋯⋯おう、見事にはもった。
なんか⋯ちょっと恥ずかしい。
「ねぇ、さっき物凄い爆発音がしてたけど、何だったの?」
「そーそー。あれ、何だったの?」
「晴?」
「あれは⋯⋯」
早速、聞かれた。
何って、言われても⋯⋯俺は、誤魔化すのとか苦手だし。
「⋯なんか、風が吹いたと思ったら、急にバーンって⋯爆発した?」
「「「⋯⋯⋯は?」」」
くっ⋯。
千里に言われた通りに答えたけど、果たして、これは正解なのか?!
「なにそれ、怖いんだけど⋯」
「てか、そんなとこに居合わせて、桜庭くん、大丈夫なの?!」
「お前、怪我は?!」
⋯⋯⋯案外、上手くいきそう?
「怪我はしてないから、大丈夫。あと、結界も解けたから、皆を起こして出よう。多分⋯警察も来てるっぽい。」
「け、警察?!」
「え⋯、だ、大丈夫かな?」
「まぁ⋯あれだけの規模の爆発じゃあな⋯」
「行方不明者もいるしね⋯」
「校舎、すごく揺れたもんね⋯」
「お、おう⋯」
まぁ、竜巻起きたからね、小型と言えど。
「人数多いから、起こさないと無理だな。」
「だね、起こそう。」
「起きるかな⋯」
あの騒ぎでも起きないとなると、状態はよろしくないかもしれない。
清めたくても、神水は使っちゃったし⋯
強めに祓っておくか。
「ちょっと離れてくれるか?応急処置するから。あと、眩しいかもしれないから目を閉じてて。」
「「う、うん。」」
「分かった。」
3人が教室の隅に移動したのを見てから、刀印を結び、額に指先を当てて、霊力を練り高めながら念を込める。
そのまま、眠ったままの12人の方に指先を向け、空中にゆっくり大きく、五芒星を描く。
五芒星を描きながら霊力を込め続けることで、額に貯める以上に、霊力を高められるからだ。
五芒星の頂点から頂点を辿り、最後の頂点へーー。
そして、12人の生徒に向かって、発動ーー
「ーー“祓え”っ!!」
今回は、身体の怪我や異常では無いため、「快癒」ではなく「祓え」を選択。
どこまで効果があるかは分からないけど、体の中に俺の霊力が染み込み、それぞれの体から黒い靄が押し出されるようにイメージする。
12人が光に包まれる。
光が収まると同時に、彼らの口や鼻、耳から黒い霧状の靄が抜け出し霧散する。
(⋯⋯はぁ〜〜⋯これで、ほぼ大丈夫⋯⋯⋯あっ)
ガクンッと力が抜け、床に膝をつく。
「っ⋯⋯ははっ、さすがに力の使いすぎ⋯⋯」
「お、おい、大丈夫か?!」
颯介が慌てて駆け寄る。
「颯介⋯⋯俺⋯」
「どうした?!」
「もう⋯⋯⋯帰るぅ〜⋯」
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」」」
なんで皆、無言なんだ。
俺、今日頑張ったよ?
一昨日、颯介から肝試しの話を聞いた時に『俺に祓え、と?』なんて、自らフラグ立てた事が、無性に悔やまれる。
「⋯⋯晴。⋯⋯それは多分⋯⋯無理だ。」
「え゙。」
「だって⋯警察がもし、来てるなら⋯⋯この後事情聴取じゃないか?」
「え⋯」
「それに⋯この子達もまだ⋯⋯」
「これから救急車とか、呼んで大騒ぎじゃないかな⋯」
「えぇ⋯」
「特に桜庭くん、中心で動いてたし、2階のことは私達じゃ分かんないし⋯⋯」
「あー⋯」
もう⋯やだぁ⋯⋯まだまだ帰れないなんてぇ⋯⋯。
そう、心の中で打ちひしがれると同時に、昇降口の扉が大きな音と共に開かれ、先生や警察官がなだれ込んで来た。
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意識が無かった12人は、救急車が待つ間に何人かは目を覚ましたが、皆、旧校舎に入った辺りから記憶があやふやで、自分がいつ、どこで倒れたかも覚えていなかった。
疲れ果ててフラフラだった俺だが、意識もしっかりしており、怪我も無いって事で、とりあえず保健室で休憩しながら、先生や警察から「ちょっと話を聞かせてくれるかな?」という体での事情聴取を受けた。
さっさと眠りたいモードに突入した俺は、結構適当に答えていたと思う。
ーー急に風が吹いて?爆発したって?
「⋯あぁ⋯はぁ⋯⋯。そう、ビューッてきて、バァーンッて⋯⋯」
ーーその時何か⋯⋯例えばガスのような変な臭いがしたとか⋯
「うん、臭かった(床の血が)⋯⋯」
ーー誰かが前もって入ったみたいな形跡はあったかな?
「あれは絶対そう⋯⋯鏡が⋯」
ーー鏡?落ちてたの?⋯手鏡みたいなの?それとももっと大きいのかな?
「手のひらサイズ⋯⋯もう、ダメ、眠いぃ〜⋯」
ーー分かったよ、ありがとう。また、何かあったらその時はご協力お願いします。
その後、颯介達も話を聞かれ、色々なゴタゴタが収まるまで、俺は保健室のベッドで眠りについた。
その後、颯介の迎えに来た真衣さんの車で一緒に帰り、
食事も摂らずに自室のベッドに倒れ込むように眠りについた。
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❀別視点❀
ギシッ ギシッ ギシッ⋯
古い廊下を、ゆっくりと進む全身黒で統一された装いの男。
まるで、闇夜に溶け込むように⋯。
階段を上がり、2階突き当たりの半壊した教室に忍び込む。
「⋯⋯⋯どうやったら、こんな風に窓も天井も吹き飛ばせるんだ⋯⋯くそっ。」
男はゴソゴソと、教室の中を何かを探すように、散らかった木片をどかしながら歩き回る。
「魔鏡が無い⋯。持ち去ったのか?⋯⋯あれは、呪具の中でも、貴重なのに⋯⋯。はぁ⋯⋯とんだ失態だ。」
男が溜息を吐いていると、足元に這いよる黒い影。
男の使い魔の小さな黒蛇が、口に何かを咥えている。
「ん?⋯⋯⋯へぇ、良い物を見つけたな。」
黒蛇からそれを受け取り、月明かりに照らしてそれを見つめる。
「くくっ⋯⋯これで、今回の借りは返せそうだ。せいぜい、今のうちに笑ってると良い、桜庭晴人。」
そうしてまた、男は来た道を戻っていった。
❀千里視点❀
晴人の通う高校の裏山近くに停められた、黒塗りの車に、黒尽くめの男が乗り込み、間もなく発車する。
その光景を近くの大木の枝に座って見ていた金髪の男。
桜庭家執事兼神職兼使い魔の仙狐、千里である。
遠くに走り去る車を見て、ニヤリと笑う。
「まぁ、来ると思ったぜ。犯人は、犯行現場に戻るってな。」
さてさて、どうしてやろうか⋯⋯。
最近の平和に少し退屈だった彼は、今少し、楽しくて仕方がない。
「坊ちゃんに手を出したんだ⋯⋯少しは痛い目、見ないとな?」
頭の中で色々計画を立てる彼の顔は、いつになく楽しそうだった。




