第2話 ⋯彼女?
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田舎⋯というより、緑溢れる山の中の小さな集落に暮らす俺達は、村の入口にあるバス停から15分程バスに乗って高校へ通う。
両サイドには延々と樹木が並び立ち、歩道の無い片側1車線の下り坂。
麓までバス停も信号機も無く、乗客も俺と颯介だけの貸切状態。
バスも街中を走るような大型バスではなくて、マイクロバスのサイズ。
ここ最近は、短い仮眠タイムだ。
学校前のバス停で下車。
颯介と並んで歩く。
学校前の桜並木は葉が生い茂り、強い風に煽られザワザワ、ガサガサと、葉擦れの音を鳴らしている。
「⋯おい、晴。あそこ⋯彼女、待ってるぞ?」
「⋯⋯⋯彼女?⋯お前、いつの間に⋯」
「ちっげぇーよ。お前のだよ。お前の彼女の山下由美だよ!」
「⋯⋯ん~?」
「⋯なんでいつも、「いたっけ?そんなの」みたいな感じなんだよ⋯。」
颯介凄いな。
心が読めるんじゃないだろうか?
まさに、そんなのいたっけ?って思ったところだよ。
颯介の視線を辿って顔を向けると、いかにもゆるふわ系の(頭の中も)女子がこちらに向かって手を振っていた。
「ハッルく~ん!おっはよぉ~♡⋯⋯きゃあ!」
鳥肌立ちそうな程甘ったるい声で彼女が挨拶した瞬間、突風が彼女を襲い、クルクルしたセミロングの茶髪は顔面に張り付き、髪の毛のお化けみたいになっている。
パンツが見えそうなくらい短いスカートは、捲りあげられ、慌てて両手で押さえるも、パンツは丸見えである。
そこらかしこで、小さな歓声が上がる。
「⋯今どき、スカートの下にスパッツとか履かないのかよ。」
「⋯なー⋯。」
颯介がげんなりした顔でボソリと呟く。
同じくげんなりした顔で、俺も同意する。
「んもうっ!何この風?!エッチなんだからぁ~!⋯あっ!ハルくん、見たでしょ?!」
語尾に「ぷんぷんっ」とか、「ぷんすこっ」とか付いてそう。
ひらがなで。
「⋯見たくない。」
あ⋯思わず本音が出てしまった。
「えぇ~?!ハルくんどういうこと?!ひっど~い!⋯⋯あっ、もしかして⋯照れてる?うふっ!」
「いや、まったく。」
朝から疲れるから、マジで勘弁してほしい。
おっも~いため息を吐きつつ、颯介を促して彼女の横をそそくさと通り過ぎる。
「えっ?!ちょっと?ハルくん?!」
喚いている声を気にすることなく、下駄箱でササッと靴を変えて、教室に向かう。
階段を登りながら、横から視線を感じる。
言いたい事は何となく分かるから、前を向いたまま、颯介に問い掛ける。
「⋯⋯⋯⋯なに?」
「⋯⋯昨日も聞いたけど、⋯なんでC組の山下さんと付き合ってんの?全然、好きなようには見えないんだけど?」
「⋯⋯⋯⋯付き合っては無い。」
「⋯⋯は?いや、彼女皆に言って回ってるぜ?お前を落としたって。それに、すんげぇ付き纏ってるよな?お前に。」
「え?⋯まだ、2日しか経ってないのに⋯。⋯⋯何度も何度も、何度も!断った!⋯俺、恋愛に興味無いし。けど、本当にしつこくって⋯。試しに1ヶ月だけって、それでダメなら諦めるっていうからさぁ⋯。」
「⋯うわっ⋯ご愁傷さま⋯。」
憐れむな。
そんな目で見るな。
俺だって本当は、1ヶ月だけでも嫌なんだよ⋯。
「でも、1ヶ月って、嫌々だと結構長いぞ?大丈夫か?お前⋯アセクシャルかもって言ってなかった?」
「んー。⋯それも伝えてある。けど、それでもって。だから、俺からは特に何もしないってのが条件。もちろん、性的な接触も俺からもしないけど、向こうからもしないって事で。それが無理なら、そこまで。」
「⋯⋯付き合う、とは?」
「さあー?⋯俺にも謎。」
朝から男2人で、難しい顔をしながら、2年A組の教室に入っていった。




