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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第1話 いつもの朝

❀ ❀ ❀


時は遡り、西暦2030年――。

地球崩壊まで、残り2年。

———————————————————————————

「あっ、晴(ハル)。」


家を出て鳥居を潜り、長い石段を下りていると、残り10段をきったところで、階段下の鳥居の向こうから声が掛かる。

そこに居たのは、俺、桜庭晴人(さくらばはると)の幼馴染でご近所さん且つ高校の同級生でもある、風間颯介(かざま そうすけ)。


「⋯ん⋯おはよー⋯。」

「おはよー。⋯⋯相変わらず眠そうだな、お前。」

「⋯お前も⋯変わんないじゃん⋯。」

「俺はそういう見た目なの。お前は、目が半分閉じてんじゃん。イケメンが勿体無⋯くはないか。どうでも良いわ。」

「⋯⋯酷くない?俺、なんもしてないのに⋯ふわぁ~⋯。」


堪えきれずに欠伸が出る。

あ~眠い⋯。


「⋯⋯その⋯やっぱり、大変か?」

「んん?」


話し掛けられて横を見ると、わずか1cm、颯介の方が高いだけなのに、少し腰を曲げて顔を覗き込んでくる。

青縁眼鏡の向こう側、黒い瞳が心配そうに見つめている。


「⋯じいちゃんばあちゃん亡くなって、お前⋯独りだろ?神社もあるし⋯それに⋯」

「⋯あぁ、まぁ⋯。」

(⋯あ、ヤバ⋯あくび⋯くっ⋯)


再び欠伸が出そうになり、下を向いて、慌てて噛み殺す。

何となく、欠伸をする雰囲気ではないことを察したからだ。

すると、俺の横で何故か颯介が慌てだす。


「お、おい?⋯そうだよな、学校の勉強以外にも、お前ん家神社だし⋯。神社の事もやらなきゃいけないこと、沢山あるよな?ここのところ眠そうなのも、炊事、洗濯、掃除に⋯社務所や境内の掃除に、神主としての修行みたいなのもあるんだろ?」

「いや、無い。」

「⋯⋯⋯無いのかよっ!」


颯介の話に即答すると、ポカーンとした後、何故か強めにツッコまれた。

いや、神主の修行ってなんだ?


「休みの日には、俺も神社の事手伝うけど、普段は家の事だけで、神社のことは神職さん達がやるから、そんなに負担はないよ⋯。」

「なんだ⋯俯くから、泣いてんのかと⋯」

「⋯⋯⋯⋯。」


ごめん、ただの欠伸だ。

噛み殺しただけ。

他意は無い。

マジでごめん。

言ったら「紛らわしいっ!」って、怒られそうだから言わないけど。


「⋯でも⋯大丈夫って言う割には、いっつも眠そうだよな?授業中もよく寝てるし⋯。それに、顔色も悪いぞ?母さんも心配してた。」

「⋯真衣さん?なんで?」

「ん?⋯あぁ、昨日見かけたんだって、お前のこと。ちゃんとご飯食べてるのかしら?って心配してた。今度連れてこいってさ。」

「そうか、ありがとうって言っといて。」

「おー。」


昨日は散歩に出たから、その時かな。

そんなに顔色悪いかな?

「⋯⋯眠いのは、いつも眠いんだけど、⋯⋯最近、変な夢見るんだよ⋯。それで眠りが浅いのかも⋯ふぁ~っ⋯。」

「⋯⋯夢?」


にゃあ~


いつの間に居たのか、猫が颯介の足元に擦り寄ってきていた。


「お、西田さんとこの猫だな?よーしよーし。」


颯介が、しゃがんで猫の頭や喉を撫でる。

飼い猫だからか、動物好きなこの幼馴染がよく遊んでやってるからか、とても懐いているようだ。


(⋯⋯猫、かぁ⋯。)


ジッと見つめると、猫が急にビクリと怯えだす。

あっという間に脱兎の如く逃げていった。


(⋯あ~⋯悪いことしたな⋯)


「⋯お前、本当に動物に嫌われるのな⋯。」

「⋯⋯小動物だけな⋯。」


颯介に、呆れたような、可哀想なものを見るような目で見られる。


「⋯そういえば、強そうな動物は何か平伏すみたいなポーズとるよな?あれ、めっちゃ笑える。」


他人事だな。

まぁ、他人事だよな。


俺の血筋が関係しているのか、昔から小動物に怯え逃げられる。

イヌ科の動物はまだ良い。

怯えても、何とか逃げない。

けど、猫科はダメ。

すぐに逃げちゃう。

俺自身は、動物好きなんだけど⋯。


「そーいや、夢って?悪い夢見るのか?」

「ん?んー⋯そんな感じ。」

「なんだよ、歯切れが悪いなぁ。どんなの見るんだ?」

「⋯んー⋯⋯地球滅亡?」

「え⋯⋯⋯スケールがでけぇーな⋯。」

「⋯な。」

「⋯⋯お前の夢、よく当たるから怖えーよ。」

「⋯⋯さすがに⋯ただの夢だろ。」


そう、俺の夢はよく当たる。

予知夢⋯みたいに。

だからといって、見る夢が全部予知夢ってわけじゃない。

今回は、さすがに違うと思う。


「⋯⋯⋯漫画の読み過ぎかな?」

「あぁ、お前好きだもんな、異世界物。今はどんなジャンル読んでるんだ?」

「今は⋯⋯現実世界に、モンスター現れるやつ。」

「⋯⋯原因、それだろ絶対。」

「あははっ。」


目の前には大きな水溜まり。

昨夜の雨の名残だ。

通り過ぎる時に目を遣ると、亜麻色のショートの髪に茶色の瞳の俺と横を歩く黒髪黒目に青縁眼鏡の颯介が、晴れ渡る青空を背景にして映り込む。


(⋯もちろん、夢だと思う。あんなめちゃくちゃな瓦礫の山となった世界は⋯。それとも、未来でいつか本当に起きるのか⋯?でも、あの夢の俺⋯ありえない姿だった⋯。)


脳裏に浮かぶのは、瓦礫の山を見下ろして宙に浮かぶ、淡く光る桜色の髪に、黄金の目をした和装の自分と見知らぬ人達。

ありえない、と思いつつも、妙な焦燥感が胸に残った。



挿絵(By みてみん)

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