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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第26話 なんか生えたっ!

❀ ❀ ❀

「「はぁぁぁぁー⋯⋯っ」」

「「お、お疲れ様、2人とも⋯」」


保護した人達が居る教室に、最後の女子生徒を連れて行くと、思わず長い溜息が出た。

まぁ、丈夫で回復の早い俺でも疲れたんだから、颯介はもっと疲れただろう。

山田さんと中村さんに、凄く不憫そうに労われた。

体力は回復しても、気力は最低値。

⋯⋯もう、帰りたい。

はっ!

もしかして、俺⋯今回も無償労働じゃない?!

はぁ⋯⋯。


さてと。


「よし、さっさと行ってくるか。」

「え?もう??お前も疲れてるだろ?大丈夫なのか?」

「そうだよ、もう少し休んだ方が良いよ?」

「危ないよ⋯。」


それは、どちらかというと皆の方だろう。

山田さんの茶色のショートヘアは、来た時と違い乱れているし、中村さんの一つに結んでいた長い黒髪も、乱れて解けてしまっている。

顔色も、未だに青ざめたままだ。

颯介も髪は乱れて、顔は疲労困憊。

まぁ、3人とも部活後だしな。


「いや、大丈夫。颯介も知ってるだろ?俺、昔から体は丈夫で、回復も早いから、既に体力はほぼ満タン。」

「⋯それは⋯そうだけど⋯⋯。」

「それに、こうしてる間にもどんどん、陰気⋯悪い気が増している。⋯⋯さっさと元凶をどうにかしないと⋯⋯」

「「「⋯⋯(ゴクリ)。」」」

「俺のやる気が最低値を更新する。」

「「⋯⋯???」」

「⋯⋯⋯お前のやる気の問題かよ⋯。」

「と、言うことで、行ってくるよ。帰りたくなる前に。」

「だ、大丈夫⋯?」

「うん。あと、ここにも簡単な結界を張っていくから。外からは、よっぽどじゃなきゃ入って来れないけど、中から出ることは出来ちゃうから気を付けて。そこで、気を失ってる人達が目覚めたら、説明してあげて。」


俺は、話しながらマイボトルの中の水を、皆の周囲に円を描くように撒く。


「⋯⋯それは?」

「うん?うちの神社の水。これが今から、結界を張ってくれる。」


神社の水というか、箱庭の山の湧水。

そこには、先祖が住む前から棲んでいる、水神様がいる。

その水神の蒼月(そうげつ)に、昨日のうちに貰ってきた、神水だ。

これだけでも陰気や邪気は寄せ付けない。


「あとは、この水を踏んだりして消したり、途切れさせたら、効力が無くなっちゃうから、気を付けてね。」

「わ、分かった!」

「起きても寝かしておくね!」

「⋯⋯⋯気を付けろよ。」


山田さんが、笑顔で手刀を落とすポーズ。

⋯⋯頼もしいな。


颯介は⋯⋯心配そうだ。

長い付き合いだけど、颯介は俺が陰陽師であることも、先祖がかの有名な陰陽師だということも、知らない。

ただの友人として、心配してくれている。

大丈夫だよ、颯介。


「ああ。じゃあ、ちょっと行ってくる。」


俺には、那智の羽も、めちゃめちゃ強い家の使い魔も、まだまだ奥の手があるんだから。


(ダメだと思ったらすぐに、どっちか呼ぼう。)


教室を出て、念の為教室の扉に護符を1枚貼り、軽く結界を施す。

陰気が入らない程度ではあるけど、これで二重結界。

甘く見ると、昇降口を閉じられたみたいに、状況が悪化するから。

もし、目覚めた人が神水の結界を削っても、最低限、教室を出なければ、なんとかなるように。

流石にそうなる前に、颯介が手刀を落とすだろう。

あいつも小さい頃から、うちで古武術習ってきたし、合気道は今も続けてるから、普通に強い。


(よし、これで多分大丈夫。⋯⋯行くか。さっさと帰る為に。)


元凶を探すのは、人間を探すより簡単。

靄が流れてくる元へ、向かえば良いのだから。


階段を上がり、踊り場を抜け、校舎の左側の廊下を奥へと進む。

突き当たりにある一際広い「音楽室」。

引き戸の扉の隙間から黒い靄が吹き出している。


(⋯ここだな。この扉を開ければ、陰気⋯⋯これはもう邪気だな⋯)


肌に刺さるような禍々しさ。

ここまで濃いと、霊気を纏うか結界を張っていないと中には入れないだろう。

いったい、何があるんだ⋯?


扉を開けると同時に祓う為に、右手で印を結んで、額に指を当てる。

かなり念を込めないと、意味が無いだろう。

全身に霊気を纏いつつ、念を込める。

さすがにここまで大掛かりなことを、自分一人で行うのは初めてだ。

額から汗が流れる。


(⋯よし、今だ!!)


ガラッ!


勢いよく扉を開けて、教室の中へと指先を向ける。


「ーーー祓えっ!!」


術が発動すると、辺りからザザァーッと靄が消える。


(今、一瞬、床に何か⋯⋯よし、もう一度⋯)


もう一度、右手で印を結び指先を額に当てて、集中し始める。

念を込め始めると、靄が襲ってくる。


(⋯⋯なんだ?重いぞ?⋯⋯質量が増した?!)


体にかかる負荷に、思わず目を開ける。

すると、さっきまでただの霧状だった靄が、雲のようにまとまり始めている。そしてその一つが頭や肩に伸し掛かっていた。


「くそっ⋯⋯⋯祓えっ!」


指を振り抜けば、周りから靄は消えるが、念を込めきれず、威力は薄まる。

見る見るうちに、また靄が集まり始めている。


(これじゃあ、五芒星を描いても念が溜められない⋯⋯。)


どうする?

小刻みに連発する?

さっき見えた床の異変も気になるし、この教室の状態も確認したいのに、靄が邪魔過ぎる。

どうにかさっさと吹き飛ばしたい。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯吹き飛ばす?


(⋯⋯そういえば⋯)


左胸のポケットに触れる。


『晴はさぁ〜、すぐに色々な事に巻き込まれるからさぁ〜、はい、これ。お守り代わりにあげる。なんと、この那智様の霊力が籠った羽だよー!これねぇ、使うとちょっとした風を吹かせるの。まぁ、そよ風みたいなものだけど。普通に使えば、10回位は使えると思うよ?術の名前はねぇー⋯⋯』


ポケットから生徒手帳を取り出し、挟んであった5cm位の那智の羽を、右手に持つ。

霊力を込めると大きくなり、ちょうど握り拳ぐらいの長さになった羽軸を握り締める。

霊力を込めると、羽にある那智の霊力が熱を持つ。


(そよ風なら⋯⋯ちょっと強めで良いな。そんじゃまぁ、一気にいきますかっ!)


「ーーー風早(かざはや)っ!!」


術名を唱えながら、羽を教室の中心に向かって上から下へと薙ぎ払う。


びゅぅぅぉぉおおおーー


「⋯⋯⋯へ?」


ごおぉぉぉぉぉぉーー

ごかんっ ばきぃー どがぁーん


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」


目の前には、荒れ狂う小型の竜巻。

既に天井は吹っ飛び、窓のベニヤ板もガラスも見る影も無い。


(ぅわぁーい、青空教室⋯⋯⋯曇天の上に、日も落ちかけてるけど⋯)


竜巻が消えると同時に、靄も消え、教室内が露わになる。


(⋯⋯⋯那智とは、後で、ゆっくりお話し合いだな⋯⋯)


脳内に、さっきの那智の羽に霊力を込めた辺りからの一連の動きが再生される。

そしてーー


“晴人式攻撃系呪術

・狐火

・火走り

・大火

・大炎上

・風早ーɴᴇᴡ!”


「⋯⋯⋯⋯え?何か、術、生えたっ!」


なんで?

もしかして、那智の霊力から術式の構築を学んだの?!

凄いな、晴ペディア!

なんか、もう⋯⋯ラノベに出てくる「システム」みたいになってない?!

すっごい⋯⋯⋯⋯けど、あの威力だと、どこで使うんだ?


新しい呪術が使えるようになって喜んだのも束の間⋯⋯ボロボロになった教室が目に入り、一気に気持ちが萎えていった。


⋯⋯⋯⋯これ、どうすんの?

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