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神の箱庭へようこそ!~創って、護って、派遣して~  作者: 緋桜
第一章 まだ始まってない

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第25話 ⋯⋯転がしたい

❀ ❀ ❀

「居たーっ!こっちに居たよ!」


中村さんの声に、皆が集まる。

昇降口の左側3つ目の教室だ。


俺達はまず、右側の教室⋯正確には保健室や職員室、給湯室、応接室、校長室等、授業では使わない部屋を手分けして見ていったが、こちらには人は居なかった。

その後、昇降口を挟んで左側の教室を、また、1人ずつ分かれて確認していた。


「何人?」

「8人居るよ!」

「⋯⋯じゃあ、残りは4人か⋯。」

「時間がもうないね⋯。」


中村さんが腕時計を見せてくれる。

こういう時、スマホは使えなくなるから助かる。


「まずは、これ以上人を増やさない方が先かな。二手に別れよう。⋯⋯⋯山田さんと中村さんは昇降口で、あとから来るグループに中に入らずに待っててもらって。俺と颯介は、もう少し奥を見てこよう。」

「今から来る子達に戻ってもらって、先生を呼んできてもらう?」

「⋯⋯⋯霊媒師でないなら、呼んできてもらっても一緒かな。むしろ人が増えるし、先生だと止めても中に入ってきそう。それは困る。」

「あー、確かに。」

「よし、とりあえず動こう。」


奥の方で倒れてたら、この濃い陰気を長く、深く、吸収しているかもしれない。

こういう気は、体以上に、心に、精神に、影響を与える。

まさに、「心の毒」なのだ。

陰気が濃ければ濃いほど、量が多ければ多いほど、理性が壊れ、我欲や本能を抑えられなくなる。

猜疑心、暴力性、幻覚や幻聴など、所謂覚醒剤や大麻などの違法薬物を摂取したのと似たような状態になる。


(早く見つけて、保護しないと⋯!)


隣の教室に入って辺りを見回そうとした瞬間、昇降口から、名前を呼ぶ声が聞こえる。


「さ、桜庭くーん!風間くーん!昇降口が⋯!開かないっ!!」


「⋯は?」


急いで、教室を出て昇降口に向かうと、空いていたはずの扉が閉まっている。

中村さんと山田さんが一生懸命扉を開けようと押しているが、ビクリともしない。

颯介もやってきて、二人で体当たりをしてみるも、全く動きもしない。


「⋯⋯⋯⋯結界に、閉じ込められた。」

「「ええ?!」」

「⋯⋯結界って⋯⋯じゃあ、このまま出られないのか?!」


想定が甘かったな⋯⋯。

こうなる事も、考えておくべきだった。

やっぱり、彼女達は帰すべきだったんだ。


「⋯⋯⋯はぁー⋯。ごめん、ちょっと、想定が甘過ぎたみたいだ。」

「⋯⋯どうにかならないの?」

「⋯⋯⋯方法はある。⋯元凶を見つけて、祓う。」

「そんな⋯」

「⋯⋯⋯出来るのか?そんな事⋯⋯」

「うーん⋯多分。」

「多分って、お前⋯」

「一応、万が一の手段もあるし、アイテムもまだある。」

「違う!」

「え?」

「⋯⋯それ、お前がやるんだろ?⋯⋯お前は大丈夫なのか?安全なのか?!」

「颯介⋯⋯。あぁ、大丈夫。お前の知らないところで、ちゃんと修行してるから。」

「⋯⋯⋯無茶だけはするなよ?」

「ああ。」


颯介、お前って本当に良い奴。

帰ったら、特別に念を込めた御守りをあげよう。

数年もつようなやつを。


「とりあえず、中村さんと山田さんは、さっき見つけた8人の元にいて。颯介、俺達は残りの4人を、早く見つけよう。」

「おう!」

「あと、変なものを見つけたら、触らないで、俺を呼んで。⋯⋯絶対に触るなよ?」

「分かった!」


3人が、それぞれ目的地へと走っていく。


俺は、その場に留まり、右手の中指と人差し指の二指を延ばしてくっつけ、残りの指を握って印を組んで口元に当てる。

所謂、刀印(剣印とも言うらしい)。


俺は普段、念を込めて呪術を発動する時は、この指を額に当てて、集中して念を練る。

そして、長い詠唱はせずに、念を練りながら、イメージを固めてから、単発の発動語を唱えながら、その印を対象物に放つ。

従来の呪術から見ると、とても型破りな為、じいちゃんが「晴人式呪術」と呼んでいた。


ただし、例外がある。

簡単な結界を張る時と、索敵をする時。

自分とその周辺に簡単に結界を張るだけならそこまで念を練らないし、索敵の場合は、いくら目を閉じてても、目の前に手がある感覚が、気が散って索敵の邪魔になるからだ。

陰陽師が映画やドラマでよくやってるポーズ、と言えば分かるかな。


刀印を結んだ俺は、体内の霊力を四方八方、蜘蛛の巣状に細く長く張り巡らせていく。


(ここにいるのは霊体だろうから、生命反応を探せば良いよな⋯)


焦りを抑え、ゆっくりと巡らせていく。


(居たっ!2階だ!)


勢いよく目を開け、駆け出しながら颯介に向かって叫ぶ。


「颯介っ2階だ!」


少しすると颯介が廊下の奥から走ってくる。


「2階?!」

「ああ。多分⋯⋯入ってきてすぐに上に上がったんじゃないか?たまにいるよな?上から下に順番に回る人っ!」

「ああ!お前だなっ!」

「⋯⋯⋯⋯⋯。」


そうだった。

だって、上から見た方が、あとで楽じゃない?

降りるだけだよ?


木の床をギシギシと音を立てて、階段を駆け上がる。


(元凶も近いな⋯。どんどん靄が濃くなる。こういう時は、見えてる方が不利だよな⋯視界が奪われる⋯。)


もう一度、さっきより強く念を込めて、呪文を放つ。


「ーー祓えっ。」


颯介がチラッとこちらを見たけど、またすぐに前を向く。

察してくれてありがとう。

いつか、ちゃんと話せると良いな。

⋯⋯⋯⋯地球が崩壊する前に。

あ、嫌な事思い出した。

でも、今はそれじゃない。

どうせあれだろ?

夢で見たやつ。

なら、あんな規模の災害、俺にはどうすることも出来ないよ。

そういや、最近みなくなったな?

未来視だと確定したからか?


⋯⋯⋯今はそれじゃないってば。


階段を上がりきって、踊り場に出ると、男子3人と女子1人の計4人が倒れていた。

皆、顔色は蒼白で、呼吸が浅い。

脂汗なのか、全員びっしょりだ。


「⋯⋯⋯よりによって、男子が3人⋯⋯。しかもデカい⋯バスケ部か?⋯更に、気を失ってちゃあ、余計に重い⋯。」

「女子も大きいな⋯⋯俺よりデカくない?」

「「⋯⋯⋯詰んだ⋯⋯。」」


本当に、よりによってだよ!

なんで2階に来ちゃったんだよ!

運ぶ人のこと、考えて!!

⋯⋯どうしよう⋯⋯いっそ、叩き起こす?


起きるまでビンタ → 起きる → 異常に気付く → 騒ぐ → 手刀を落とす → 気絶


⋯⋯ダメだ。

振り出しに戻るだけだ。

⋯⋯⋯かくなる上は⋯⋯。


「⋯⋯⋯転がすか。」

「めちゃめちゃ同意したい。」


二人で溜息を吐く。

結局、1人に1人だと、かなり時間が掛かるだろう、と、2人で両端から挟んで⋯⋯⋯だと、足を引きずるので、後で怪我をしただの文句を言われないように、頭と脚を持って運ぶことにした。

重い。

滑って落としそう。


「⋯⋯⋯落とした場合はもう⋯⋯⋯しょうがないよな?」

「ああ。俺達は全力を尽くした。」


無心で運ぶ。

往復4回。

1人1本ずつジュースを買ってくれてもバチは当たらない。

⋯⋯むしろ、文句を言われたら⋯⋯⋯祟るぞ?


戻ってこなかった人達、合計12人。


無事、捕獲成功ーー。


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