第14話 晴れのち曇り
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「ハルくん、見ぃ~つけたぁ~~っ!」
ぞわぞわぞわっ
その甘ったるい声を聞いた瞬間、背筋をぞわぞわと寒気が這い上がる。
全身に鳥肌が立ち、それを抑えるように両手で腕を摩る。
(勘弁してくれよ、もう⋯)
せっかく見つからないように、あちこち場所を変えてお昼を食べていたのに、どうやったのか、結局山下さんに見つかってしまった。
「ハルくん、なんでゆんとご飯食べてくれないの?!ゆん、彼女なのにぃ~!」
(⋯めんどくさい⋯⋯)
「⋯⋯ゆん⋯⋯?」
「⋯なんか、自分のことらしい⋯。」
「へぇ⋯⋯。」
聞くだけ聞いて、どうでも良かったらしい。
颯介は既に興味をなくし、弁当の残りを食べ進める。
さっきまでだって、大した会話をしてたわけじゃないけど、今の俺達の空気は急激に冷え込んでいってる。
今日の天気は快晴だけど、俺達の頭上だけ暗雲が立ち込めている。
さっさと避難しなければ。
1.5倍速で、食べ進める。
「ねぇねぇ、ハルくん。ゆんも、ここで食べていい?ね~え~、いいよね?」
「あ、もう食べ終わるから、居てもいいけど、俺達は行くよ。」
「ええ~!⋯じゃあ、明日は?あ、明日、お弁当作ってきてあげるぅ~!」
「いや、明日は食堂行くから。」
「ええ~!ゆんも行くー!」
「⋯⋯ごめんだけど、昼は颯介と食べるから。」
颯介の名前を出すと、隣で颯介がビクってなった後、食べ物を喉に詰まらせて、噎せている。
悪いとは思うけど、巻き込むからな。
山下さんを見ると、明らかに不機嫌な顔。
「風間くんばっかり、ずるいっ!」
「ずるい?」
「ずるいって⋯」
山下さんの言いように、不快感が湧き起こる。
⋯もう、湧いてはいたけど、更に。
噎せていた颯介も、怪訝な顔だ。
「だって、いっつも一緒じゃない!⋯ゆんだって、ハルくんと一緒にいたいのにっ!うち、彼女なんだよ?!」
「⋯⋯⋯はぁ⋯⋯。」
俺は、望んでない。
ちょっと面倒だったから頷いただけ。
それが、こんな事になるとは⋯⋯考えが足りなかったな。
あれだけ付きまとわれたんだから、お試しでも付き合えば、更に酷くなるって、なんで思わなかったんだろう。
「⋯山下さん。俺の条件、覚えてる?」
「⋯条件?」
なにそれ、みたいな顔しないでください。
「俺に恋人らしいこと求められても困るし、する気もない。今までと変わる気もない。それを強要しないなら、1ヶ月だけ。けど、それを破るなら、この話は無かったことに。そう、言ったよね?それで良いって、言ったよね?」
山下さんの勢いが萎えていく。
「で、でも⋯こんなに放置されるなんて、思ってなかったし⋯」
「俺はね、何度も断ったよ?恋愛に興味が無いって。」
「だけど⋯」
「⋯ふぅー⋯。1週間経って、残り約3週間。どうする?続ける?やめる?」
是非、やめると言って欲しい。
そんな俺の願いは、彼女の言葉に虚しく散ってしまった。
「そんなの⋯や、やめないっ!」
「ええー⋯⋯。」
「絶対、好きにさせてみせるんだからぁぁぁぁっ!!」
そのガッツは別の所に発揮しては如何でしょうか⋯?
本当に、もしあの日に戻れるなら、1週間前の自分を揺さぶって、「おい、自分。諦めんな!めんどくさいからって考えを放棄するな!もっと面倒になるぞ!」って言ってやりたい。
さすがに、いくら陰陽術でも、過去に戻ることは出来ない。
「はぁー⋯。」
大きな溜息を吐くと、横から視線を感じる。
「⋯ん?どうした?」
「お前⋯⋯あんまり山下さんを邪険にするの、良くないかもしれない。」
「⋯え?まさか⋯お前まで、クラスの皆みたいに「ちゃんと相手してやれ」って、言うんじゃないよな?」
「いや、俺は思わないけど⋯。ただ、お前、嫌な噂が流れ始めてるぞ?」
「噂?」
「うん。⋯お前が、山下さんを弄んでるって。」
「⋯はあ?」
「ほら、山下さん、お前と付き合ってるって言いふらしてるって言っただろ?けどお前⋯先週ずっと避けてたじゃん。彼女もお前を探し回ってたし、お前が構ってくれないって、泣いて愚痴ってたみたいでさぁ⋯。」
「それで?」
「山下さん、俺達や一部の女子には、煙たがられてるけど、男子には割と人気あるらしいんだよ。金曜に部活で聞いた話だと、既にあの子の周りの取り巻きがかなり怒ってるって⋯言ってたぞ?」
「そんなの、いい迷惑なんだけど⋯。」
「まぁ、そうだろうけど⋯。俺はお前のこと知ってるし、山下さん苦手だから、お前の気持ちは分かるけど、このままだと⋯⋯かなり面倒な事になりそうだぞ?」
「えぇー⋯。」
颯介に、哀れみのこもった目を向けられる。
怒りにも似た、なんとも言えない負の感情が、俺の中に蓄積された。




