第10話 セキュリティ強化事案発生
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家に戻って、明さんと一緒に夕食を摂る。
今日は使い魔の狐人(人型の状態)達が、腕に縒りをかけて作ってくれた、俺の大好きな豚の生姜焼きだ。
夢中で食べていると、明さんが話しかけてくる。
「そういえば、さっきの話なんですけどね。」
⋯⋯⋯え?
まだ続くの?!
「ぅぐっ⋯!ごほっ、⋯⋯⋯えっと、セキュリティ強化ですか?」
「⋯⋯⋯⋯何の話でしょう?」
明さんの笑顔が一瞬、固まった気がした。
⋯⋯⋯しまった。
あれは、俺の心の決意であって、明さんとの会話にはまったく出てきてない。
「あ⋯⋯⋯いえ、なんでもないです⋯。それで、さっきの話って?御先祖様の事です?」
何とか誤魔化して、話の内容を聞いてみた。
けれど、明さんは首を横に振る。
「いえ、そこではなく。⋯⋯晴人くんは、「呪術師」というのを知ってますか?」
「霊力を使って、呪いをする人ですよね?主に呪いを掛けたり、解いたり⋯。ちょっと待ってくださいね。」
呪術師⋯ ⋯日本では、呪いや祓い、占い、暦、方位判断などを扱う人々のこと。とくに陰陽師は、古代中国の陰陽五行説等をもとに、日本で形づくられた陰陽道の担い手で、朝廷や社会の中で役割を持っていた。国立歴史民俗博物館は、陰陽師が占いや祭祀を行い、呪符や神札を配って生活の安寧を祈ったと説明されている。中でも安倍晴明は、伝説的に語られることが多い。
「⋯⋯え?陰陽師?」
「?」
「あ、いや前見た記憶では、“特に陰陽師は、そういった役割を持っていた”って、中でも安倍晴明は伝説的って⋯」
「そうですね。陰陽師も呪いを掛けたり、解いたり、また、その力で祓ったり⋯。わた⋯⋯安倍晴明が行っていた召喚も、呪術に入ります。ただ、彼が最も得意としたのは、天文学と占いですけどね。」
「占星術ですね?⋯現代に安倍晴明がいたら、めちゃくちゃ当たって、引っ張りだこで大変だっただろうってテレビで見たことがありますね。」
「ふふっ⋯。どうでしょうね。まぁ、それは置いといて、呪術とは、言葉や道具、儀式を通して、現実に影響を与えることです。ただ、悪いことばかりではない。怪我や痛みを取り除くことも、呪術ですから。」
「⋯そう言われれば、そうですね。そうなると、使い魔達も⋯」
「えぇ。呪術の1つです。」
「でも⋯御先祖様のことを「呪術師」とは、言いませんよね?」
「その力をどう使うか、で、呼び名が変わります。主に人々の生活をより良くする為に使う者を「陰陽師」、主に他者に害を及ぼす為に使う者を「呪術師」と呼びますね。⋯⋯⋯「蘆屋道満」を知っていますか?」
「はい、もちろん。御先祖様のライバルですよね?」
「⋯⋯⋯まぁ、向こうが勝手にライバル視してきただけですけど」
「え?」
「⋯いえいえ。彼は、陰陽師でもありますが、当時は呪術師としても名を馳せていました。」
「へぇ⋯。何となく、悪い陰陽師のイメージはありましたけど⋯⋯明さん、詳しいんですねぇ。」
「⋯⋯うちの家伝にそうありました。」
「なるほど。やっぱり、それぞれ書いてあることが違うんですね、家伝って。」
「まぁ、家伝ですからね。」
確かに、その家の志向によって違うところもあるんだろうな。
一度、全部の家の家伝を読んでみたいなぁ。
「晴人くんは、君のお父さんのことをどこまで知っていますか?」
「父さん⋯ですか?」
「ええ。」
明さんに言われて、父親のことを思い浮かべる。
高坂政秀⋯1000年以上の歴史を持つ、高坂家現当主にして、大企業・高坂グループの代表取締役社長。長男秀治と次男晴人の二人の子を持つ。性格は、傲慢で不遜。
非道で非情。金に目がなく、強欲である。
「⋯うん、悪そうな奴としか知りませんね。」
「⋯その、父親への愛情は⋯」
明さんが、聞きにくそうに訊ねる。
父親⋯⋯そうか、父親かぁ⋯。
うーん⋯⋯⋯⋯。
「難しい問題ですね。」
「難しい⋯とは?」
「俺、生まれた時からじいちゃんの養子として育てられたから、俺にとってはじいちゃんばあちゃんが親であり、家族なんですよね。祖父母というよりも「親」なんです。母さんは⋯何度か里帰りした時に会ってはいるし、「母親」なんだという認識は持ってます。でも、会ったのはたった数回。颯介ん家の真衣さんなんて、数日に1回は会ってますよ。⋯風間一家は、子供の頃からお世話になっている、もう1つの家族みたいで⋯⋯俺、「家族」って、「血」ではなく「情」だと思ってます。」
頭の中に、子供の頃にかくれんぼ中に寝てしまって、皆に心配かけて真衣さんに怒られた時の映像が再生される。
あの時は怖かったな⋯。
目が覚めたら周りが真っ暗で、家に帰ったら、めっちゃ怒られた。
「⋯それに、初めて会ったと思ったら、じいちゃんの遺産を奪おうとするし、無理矢理拉致られそうになるし⋯⋯俺にとってあの人が「父親」というのは、ただの形で、言葉ですね。そこに、「情」はありませんし、むしろ今は、俺の平穏を乱す「敵」ですね。俺、元々「情」が閉鎖的なんで。」
やだやだ、あの人思い出したら、またセキュリティ強化を思い出しちゃった。
もう、村の入口に狐、置こうかな⋯。
俺が他のことを考えていると、明さんの顔からふっと力が抜けた。
⋯⋯⋯なんだろう?
「⋯⋯彼に対する情が無いなら、話がしやすいです。」
「⋯⋯あの人が何かしでかしました?⋯そういえば、今日もあの黒塗りの車、居ましたけど⋯。」
「⋯なにかされました?」
父親の部下の車が居たことを話すと、明さんの顔からスッと表情が消える。
怖い。
「いえ、大丈夫です。車が居たのは高台で、俺達は、皆で反対側のいつもの道をダッシュしましたから。」
俺の言葉を聞いて、穏やかな顔に戻る。
⋯⋯今度あいつらが何かしてきたら、やつらの命は無いかもしれない⋯。
事件が起きると面倒だ。
また、警察に事情聴取される⋯。
⋯⋯⋯村の入口のどの辺りに祠を建てようかな。
目眩しの札付ければ、問題無いよね?
「何も無くて、良かったです。⋯ことが起きれば、向こうが損するだけですけどね。」
「⋯⋯⋯⋯ですねー。」
そうですよねー。
やっぱりなにか、する気ですよねー。
⋯⋯⋯待てよ?
奴らが来なくなれば、この村に平穏が戻るな。
その上で、村の入口に祠設置すれば、万々歳だな。
⋯⋯頑張って、明さん!
明さんに視線を合わせれば、ニコッと微笑まれる。
俺もニコッと微笑む。
ニコニコ ニコニコ ニコニコッ。
「話を戻しますね。では⋯高坂家のことは?」
「高坂の家ですか?⋯1000年以上続く名家で、元々は不動産業で財を成し、今や他産業も手広く行う大企業⋯ですかね?」
「まぁ、そうですね。⋯ふふっ、晴人くん、記憶を再生する時、虹彩が一瞬光りますね。」
「え?⋯マジで?」
「淡い光ですし、本当に一瞬煌めくだけだから、普通の人には分からないと思いますよ。私も、たまに光って見えるな、と思うくらいで、気付いたのは君の能力を知ってからですし。」
「⋯⋯気付かなかった⋯。」
「まぁ、自分の目なんて、能力使っている時に、鏡を凝視しない限り分かりませんよ。」
「で、ですよね⋯。」
まぁ、見られても光の反射にしか見えないだろう。
今度、鏡見ながら使ってみよう。
どんな感じに光るかな。
「それで、高坂家ですが⋯今、晴人くんが言ったのは、表向きの顔です。」
「表向き?」
「はい。Wikipediaに載っていない、高坂家の裏の顔。それは⋯⋯「呪術師」です。」




