2026年9月17日
## 2026年9月17日
「今日、なんかあるらしいよ」
朝の教室で、ありさが言った。
「何が?」
ゆいが鞄を机の横に掛ける。
「知らない」
「知らないのに言ったの?」
「うん」
「なんで?」
「なんか、みんなそわそわしてるから」
ゆいが教室を見回す。
確かに、いつもより少しだけ落ち着かない。
前のほうでは何人かが集まって話している。
「文化祭じゃない?」
誰かが言った。
「え?」
ありさが振り向く。
「文化祭?」
ちょうどそのとき、先生が教室に入ってきた。
「はい、席についてー」
ざわざわしていた教室が静かになる。
先生は教卓にプリントを置いた。
「今日は文化祭について連絡があります」
一瞬で、教室がまたざわついた。
「やっぱり!」
「何やるの?」
「出し物決めるの?」
ありさは目を輝かせていた。
「ゆい!」
「なに?」
「文化祭だって!」
「聞こえてるよ」
「何やろう!」
「まだ何も決まってないよ」
先生が説明を続ける。
クラスごとに出し物を決める。
必要なら実行委員も決める。
詳細はこれから。
そこまで聞いたところで、ありさが小さく手を挙げた。
「はい、ありささん」
「実行委員やります!」
ゆいが振り向いた。
「え?」
教室中から拍手が起こる。
「じゃあ一人決まりだな」
先生が笑う。
「もう一人必要なんだけど――」
ありさが、ゆっくり隣を見る。
「……ゆい」
「やらないよ」
「まだ何も言ってないじゃん」
「顔に書いてある」
「一緒にやろうよ」
「私はそういうの苦手だから」
「でも私一人だと絶対忘れる」
「それは……」
ゆいが黙る。
ありさがじっと見つめる。
「お願い」
「……」
「お願い」
「……もう」
ゆいは小さくため息をついた。
「分かった」
「やった!」
また拍手が起きる。
「二人とも決まりでいいね」
先生が黒板に名前を書く。
ありさ。
ゆい。
二人の名前が、隣に並んだ。
「なんか、始まっちゃったね」
ゆいが小声で言う。
「うん!」
ありさは嬉しそうだった。
昼休み。
二人は机をくっつけて、お弁当を食べながら話していた。
「文化祭って何するんだろう」
「まだクラスの意見を聞いてから決めるんじゃない?」
「食べ物がいい」
「ありさはそればっかり」
「だって文化祭だよ?」
「何か作るなら大変だよ」
「じゃあゲーム」
「それも準備大変そう」
「じゃあ……」
ありさが考える。
「何もしない」
「それは文化祭じゃないよ」
二人で笑う。
そのとき、教室の前から声がした。
「実行委員、放課後ちょっと集まって!」
「はーい!」
ありさが返事をする。
ゆいがありさを見る。
「……もう始まってるね」
「うん」
ありさは楽しそうに笑った。
放課後。
教室に残った実行委員たちが、黒板の前に集まった。
まだ何も決まっていない。
案も、役割も、準備も。
ただ一枚の紙に、
『文化祭 クラス企画』
と書かれただけ。
「これからどうなるんだろうね」
ゆいが言う。
「楽しみじゃん」
ありさがチョークを手に取る。
そして黒板の端に、小さく書いた。
『絶対おもしろいことする』
「……それ、企画?」
「目標!」
「大丈夫かなあ」
ゆいは笑った。
ありさも笑った。
二人の秋が、
少しだけ忙しくなりそうだった。




