2026年9月13日
# ふたり日和
## 2026年9月13日
「ねえ、今日って雨降るかな?」
昼過ぎ。
ありさがスマホの天気予報を見ながら言った。
「降水確率、そんなに高くないよ」
ゆいが横から画面を見る。
「じゃあ大丈夫だね」
「たぶんね」
「たぶん?」
「だって天気予報でしょ。絶対じゃないし」
ありさは少し考えた。
「じゃあ、傘持ってく?」
「持ってない」
「私も」
「じゃあ、いらないんじゃない?」
「うん」
二人はそのまま外へ出た。
空には雲が浮かんでいたけれど、雨が降りそうな感じはしない。
「今日は何する?」
「昨日ゲーム買ってないから、見に行く?」
「いいね!」
二人は並んで歩き始めた。
しばらく歩いていると、ありさが空を見上げた。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「なんか、暗くない?」
さっきまで明るかった空に、いつの間にか雲が広がっている。
風も少し変わった。
ぽつ。
ありさの腕に、小さな水滴が落ちた。
「……」
ぽつ。
もう一つ。
「ゆい」
「うん」
ぽつぽつぽつ。
「雨だ」
「うん」
二人は空を見上げた。
そして。
ザーッ。
「うそぉ!」
一気に雨が降ってきた。
「走って!」
「どこに!?」
「分かんない!」
「分かんないのに走るの!?」
二人はとりあえず近くの屋根のある場所まで走った。
「はぁ……」
ありさが息を切らしながら髪を押さえる。
「びしょびしょ……」
ゆいも制服の袖を見た。
「最悪……」
「傘……」
「ないね」
「持ってくればよかった」
「さっき、いらないって言ったの誰だっけ?」
「……」
ありさが目をそらす。
「ゆい」
「なに?」
「雨って、急に降るんだね」
「話をそらさないで」
「ごめんなさい」
二人は並んで雨を眺めた。
さっきまで普通の午後だったのに、急に世界が雨の音だけになっている。
道路を走る車。
屋根を叩く雨。
遠くで聞こえる人の声。
ありさは濡れた前髪を指で直した。
「でも」
「ん?」
「なんか、ちょっと楽しくない?」
ゆいがありさを見る。
「……何が?」
「こういうの」
ありさは雨の向こうを見ながら笑った。
「予定通りじゃない感じ」
「私は予定通りのほうが好きだけど」
「でも、今日のことは覚えてそう」
ゆいは少し考えた。
「……それは、そうかも」
雨はしばらく降り続いた。
二人は屋根の下で待った。
「ねえ」
「なに?」
「ゲーム、今日じゃなくてもいいよね」
「うん」
「じゃあ、今日は雨宿りの日にしよう」
「そんな日ある?」
「今作った」
「勝手に記念日を増やさないでよ」
「いいじゃん」
「……まあ、いいけど」
少しして、雨が弱くなってきた。
ザーッという音が、ぱらぱらという音に変わっていく。
ありさが外を見る。
「止みそう」
「ほんとだ」
「じゃあ行こう」
「まだ濡れるよ」
「もう濡れてるから大丈夫!」
「そういう問題じゃないよ」
二人は笑いながら歩き出した。
空の一部には、少しだけ青いところが見えていた。
「ゆい」
「なに?」
「明日は傘持ってこようね」
「学校に?」
「うん」
「明日も雨とは限らないよ」
「じゃあ持ってこなくていい?」
「……」
ゆいは少し考えた。
「やっぱり持ってきたほうがいいかも」
「なんで?」
「ありさが忘れそうだから」
「私そんなに忘れっぽくないよ!」
「今日のこと、もう忘れた?」
「……」
ありさは黙った。
そして、小さく笑った。
「明日は持ってく!」
「うん」
「絶対!」
「その言葉、信用していい?」
「……たぶん」
「またそれ?」
二人の笑い声が、雨上がりの道に響いた。




