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第12話、揚州の平定

孫策の次なる目標は、揚州統一の最後の砦、会稽郡であった。その太守は王朗。


孫策は、精鋭を率いて会稽へと進軍を開始した。待ち受ける王朗軍を危なげなく打ち破り、瞬く間に会稽城下へと到達。

速やかに城を包囲した。


しかし、城内で籠城の準備を進める王朗は、ただ無策に包囲されるのを待っていたわけではなかった。

包囲網が完成する寸前、彼は密かに数名の使者を城外へと放ち、近隣の反孫策勢力へ救援を求めていた。


孫策軍が、会稽を取り囲み攻撃の準備を整えようとしていた、その時だった。


「敵襲! 後方より敵襲!」


突如として、背後からけたたましい鬨の声と地響きが迫ってきた。

予期せぬ方向からの攻撃に、孫策軍は一瞬にして混乱に陥る。


「何事だ! どこの手の者だ!」


孫策が叫ぶ。駆けつけた伝令が息を切らせて報告する。


「はっ! 敵の新手は呉郡を追われた許貢と厳白虎。王朗の要請に応え、我らの背後を突いてきた模様!」


許貢、そして厳白虎。一度は孫策に破れた者達だが、彼等は反撃の機会を伺っていた。

孫策軍の混乱を見た城内の王朗は、これを待っていた。


「 開門! 全軍打って出るぞ。 若造に、我らの意地を見せてくれる。」


城門が開き、王朗自らが率いる守備兵が、決死の覚悟で孫策軍の本隊へと突撃してきた。


孫策軍は完全に前後から挟撃される形となり、一転して窮地に立たされた。

孫策自身も戟を振るって奮戦し、周瑜も指揮を執ろうとするが、兵たちの動揺は隠せない。

程普、黄蓋ら宿将も必死に兵を励ますが、前後からの激しい攻撃に、陣形は徐々に崩されつつあった。


「くそっ! このままでは…!」


孫策が歯噛みした、まさにその瞬間だった。


戦場の側面、誰も予期していなかった方向から、突如として新たな一団が現れた。

その数はおよそ数百。

そして、先頭に立つ一人の武将の弓から、一本の矢が放たれた。


その矢は、驚くべき正確さで、指揮を執っていた許貢の胸を射抜いた。


「ぐ、ぐわぁっ…!」


許貢は馬上から転げ落ち、そのまま動かなくなった。


「な、何者だ!?」


混乱する許貢・厳白虎軍。

その間隙を突き、矢を放った武将は、今度は刀を手に、凄まじい勢いで敵陣へと突撃した。


部隊を率いる男が檄を飛ばす。


「許貢は討ち取った! 敵は大将を失い、うろたえているぞ! 者ども、続け!」


一団は許貢・厳白虎軍の中核へと突入し、これを瞬く間に切り崩していく。

許貢を失い、さらに予期せぬ側面からの猛攻を受けた敵援軍は、完全に戦意を喪失した。


「あれは、太史慈か?」


孫策軍の中から、驚きの声が上がる。


太史慈は、孫策と別れた後、江東の情勢を静かに見守っていた。そして、かつての同僚からの話や、孫策に対して抵抗する者達の誘いを集めていた。


彼は王朗や許貢の動きを察知すると、自らの手勢と、孫策に従う意志のあるかつての仲間達を集め、この場に駆け付けたのだった。


後顧の憂いが断たれた。


「好機! 全軍、反撃! 王朗を打ち破れ!」


太史慈の加勢によって士気を取り戻した孫策軍は、城外に出ていた王朗軍に、今度は逆襲を仕掛ける。

挟撃の策が破れた王朗軍は、孫策軍の勢いを止めることはできず、たまらず城内へと戻り始める。


「追え! 一気に城を落とすぞ! 城門へ続け!」


孫策の号令一下、彼等は敗走する王朗軍を追いかける形で城門をくぐり抜け、城内へとなだれ込んだ。

太守・王朗は、わずかな手勢と共に裏門から脱出し、落ち延びていった。


こうして、揚州最後の抵抗拠点であった会稽は、太史慈という思わぬ助力を得て、ついに孫策の手に落ちた。


この勝利により、孫策は揚州の完全平定を成し遂げた。

そして、この戦いをきっかけに太史慈は孫策の幕下に加わり、彼の覇業を支えることになる。

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