8話『私の友達がなにかやらかしそうな予感がする。(エミアス視点)』
私はエミアスという。
伯爵家で働いているしがないメイドだ。
最近新人らしい新たな下女が入ってきてそいつのの前はリンネというらしい。
そのリンネは、いじめ行為を発見すると暴力沙汰に発展するまで相手を罵倒し、精神的にダメージをおわすという恐ろしいやつだ。
「最終手段…だな」
リンネは私とメーアの前で不吉な言葉を発しながらニヤリと笑ったのだ。
何をするかものすごく怖い。
そう恐ろしんでいた私だったが、なぜかこの家の当主の娘であるリオルトお嬢様に呼び出されたのだ。
何なのかと考えながら扉を開けると、そこにはもともとメーアを虐めていた集団が集まっていた。
あとからメーアも加わった。
そこで疑問に思ったのが。
「リンネさんいなくないですか?」
「…それ思ったよ」
メーアを虐めていた集団と被害者だがメーア、その友達である自分、このメンバーが揃えば、その仲裁に入ったリンネも呼ばれてもおかしくはない。
それなのになぜかリンネだけいないのだ。
そう思っていると、大きな音を立てて扉が開いた。
扉を開けたのは、緑目に茶髪のロングの女の子…リオルト様が立っていた。
私達は一斉にひれ伏す。
「御機嫌よう。リオルト・アシュリーと申します」
リオルト様はにこりと微笑みながらきれいな礼をする。
そしてリーシュが出しゃばるように声を発した。
「ご機嫌麗しゅうございます、リオルト様」
「そんなにかしこまらず、顔を上げてください」
リーシュの発言に、思わず私は眉をひそめてしまう。
馬鹿だろうか。
普通、立場の上の人間に名前呼びするなど不敬でしかないだろう。
「確か、貴方様はリーシュとか言いますよね?」
「はい」
「貴方、今日を持ってクビにさせていただくわ」
突然、あらぬことを言い出したリオルト様。
それに当然困惑するリーシュ、その他取り巻き。
リーシュは焦ったように口を開く。
「なっなぜでしょうか、私は今までこの伯爵家に尽くしたのですよ?」
「理由?あるにはあるのだけれど……」
曖昧に答えるリオルト様は我儘で有名だったのだ。
それに我慢できなかったのか、リーシュは顔を歪めて叫ぶ。
「元平民のくせに…成り上がって…なぜ、なぜ私は貴族に戻れないの⁉あんたみたいのがなれるなら私もなれるはずだわっ‼‼‼」
「…」
その様子を無言で見下ろすリオルト様の瞳は光っていなかった。
それどころか笑っていた。
「そうですよ。もっと怒ってください」
「…貴女、何様なの‼‼‼」
「あれ?お会いしたのは今日が初めてではないですけれど?」
「っっ?」
突然奇妙なことを言い出すリオルト様。
室内にいる人間全員が驚く。
「あぁ、そうですね、この顔なら見覚えがあって?」
そう言いながら手を顔の前にかざし振った…と思った瞬間、リオルト様の顔が変わり見覚えのある顔になった。
そして令嬢には似合わないほどの歪んだ笑顔になる。
あまりに突然なことで、私は目を見開き驚いた。
そして、誰よりも驚いていたのはメーアだ。
「リ、リンネさんっ⁉」
そう、そこにいたのはリンネだったのだ。
さ、最終手段って…まさかこういうこと⁉
というより、なんでリンネがいるのだ⁉
「さてと…」
何やら不穏なことをしようとしているらしいが、私には情報が多すぎていまいちこの状況について行けなかった。
「言い訳はあるのか?聞いてやるけど」
「っっ」
何も言えずに後退りするリーシュを冷ややかな目で見ている。
その冷酷な目に部屋の空気が凍った…と思えばフッと優しい表情に戻った。
「はぁ…ごめんごめん、追い詰めるつもりはないんだ」
「え」
「ほい」
そして、リオルト様が手に持っている紙をリーシュへ投げた。
リーシュは慌てて取る。
それは手紙だったようだ。
訝しみながら、リーシュは手紙を開き読み出した。
「…っこ、これって」
しばらくして、リーシュは震えた声でつぶやいた。
そんな様子のリーシュにリオルト様はにこりと笑いかける。
「ああ。お前の家、貴族に戻れるようだな」
「な、なんで」
リーシュは驚いたようにリオルト様を見上げた。
「なんでと言われても。私は何もしてない。貴族社会と言うものに感謝したほうが良いんじゃないか?」
「あ…」
「どうぞ、お帰りに。…一生目の前に現れないでくださいね!」
丁寧な言葉とは裏腹に棘が交じる言葉に、相変わらずだと安心してしまう。
そのまま、言われるがままにリーシュたちは退場した。
…だがしかし、私たちはリンネ及びリオルト様に引き止められた。




