12話『街歩き②』
長いし、少しグロデスクな描写のものが含まれています。
閲覧注意。
「大丈夫!?」
メーアの悲鳴にリオルトはすぐに駆け寄る。
「り、リオルトさん…すみません、カバンが…」
「いいから、怪我はない?」
「うう、はいぃ…」
どうやら、カバンをひったくられてしまい、それに驚いてこけてしまったのだろう。
メーアは申し訳なさそうにうつむく。
リオルトは、メーアが足を擦ったのに気がついた。
(こけたときに捻ったのか)
自分の侍女ながら手がかかる、とリオルトはメーアに手を貸し立ち上がらせ、近くのベンチに座らせる。
これじゃあどちらが侍女かわからない。
「じゃ、メーアしばらくここで待っておいて。いい?怪我してるんだから絶対に動くなよ!」
「で、でもぉ…」
「「でも」じゃない」
リオルトはなにか言いたげなメーアに釘を差し、その場を離れようとする。
「どこ行くんだ」
足を踏み出そうとした瞬間、違う声に呼び留められる。
レンだ。
「どこに…薬を買いにです。あと氷を買いに行ってきます」
なにかおかしい行動はしただろうか、と少々不思議に思いながらリオルトは応答する。
「なぜだ」
「なぜと言われましても…」
(別に侍女が怪我したから手当することの何が悪いというんだ…)
もしかして、はたから見ればおかしいのだろうか。
そうなればリオルトの行動に疑問をいだいでも仕方がない。
(おかしい行動を見せて怪しまれて首チョンパ…)
想像して顔が青くなる。
「お、…」
「お?」
リオルトは必死に言い訳を喉から絞り出した。
「お、おやつを買ってくるんです〜…!!!!」
「あ、ちょっとおい!」
レンの静止の声も聞かず、リオルトは聞かないふりをして走る。
(ごめんメーア、すぐ薬買ってくるから!)
心の奥で、メーアへの謝罪を残して。
___________
ずいぶんと走り、後ろを振り返ってもレンとメーアの姿が確認できなくなった。
リオルトは走って上がった息を落ち着かせながら、薬屋の看板を探す。
(文字が読める人間しか見つけれないような看板だなぁ…)
数分探し、質素な木の板に『Apothecary』とだけ書いた看板をぶら下げた店を発見した。
ドアを押し、その反動でパイプチャイムが鳴り、客の入店を知らせる。
「いらっしゃい、ずいぶんと小さい子だね」
「小さい子…」
店主にはなしかけられたのは良いが、小さいこと呼ばれたことに少しショックを受ける。
確かに、見た目は8歳である。
だがしかし転生を経て前世は何歳で死んだのかはわからないが、絶対に精神年齢は上のはずだ。
「貴族のお使いかい?偉いね」
「…氷と打ち身に効く薬をください」
子ども扱いされていることがすごく癪に触るが、こういうのは無視すれば良い。
それがいい、とひとりでに納得し、料金を渡して「また来てね」という店主の言葉を無視し、さっさと退散する。
店から出て、メーア達のいる場所に戻ろうと見を持ち直した瞬間、近くの路地裏から怒鳴り声と何かが壁にぶつかる音がした。
(酔っぱらいでも暴れてるのかな?)
リオルトは少し気になって路地裏を覗き込む。
すると一人の少年がガタイの良い男に暴力を振るわれているところだった。
「おい、こんなバッグすってきても意味ねぇよ」
「で、でも貴族のバッグみたいで…」
暴漢がイライラしながら少年のそばにあるからの酒樽を蹴り飛ばす。
大きな音に少年は体をビクつかせる。
「言い訳はいらねぇから、ほら今日の分の酒代は」
「あ、ありません…」
少年がかけ消えそうな声で返すと暴漢の怒りは頂点に達したのか、少年の頭を掴み、腹を思い切り蹴った。
苦しそうな声を出す少年とは対照的に暴漢の怒りは収まらなかった。
しばらくして殴っても反応しなくなった少年に飽きたようで、舌打ちしながら暴漢は去っていった。
リオルトは周りを確認し静かに倒れた少年のもとへ走る。
(ひどい怪我だ…)
少年の手を握り、治癒魔法を施す。
しばらくして、少年は目を覚ました…と思えばリオルトから距離を取り、獣を見る目でこちらを見ていた。
とてつもなく臨戦態勢である。
「…治癒魔法、貴族かよ、くそ」
「いや、えっと…」
少年は治癒魔法をかけたとはいえ、まだ痛む体を動かし、こちらを睨む。
「なんだ、貴族様の慈善活動かよ、それともさっきのがよほど可哀相だったか?」
「いや、ちょっと話を…」
(いやほんとに話聞けよ、こんなに私以上に話聞かないやつは始めてだよ!)
話を聞かない少年に少しイライラしてしまう。
まぁ自分も聞かない方ではあるが、と。
そんなふうにリオルト一人で考えていると、少年は何も言い返してこないリオルトに腹が立ったのか、ナイフを取り出した。
「今ここでお前みたいなお貴族様を殺してしまえばっ…」
「まじかよ…」
まさかこんなところで死ぬのか。
いや、早くないか。
(せめてさっき見たクレープぐらいは食べとけばよかった…)
そう考えていると、背後からリオルトの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「リオルト!」
声の主はレンだ。
その時リオルトは悟った。
妹の死→レンは自分のせいだと病む→闇落ち→ヒロインと出会う→ヤンデレ化
「なにそれみたぁい!!!」
死ぬ気満々だったのにそんな美味しそうなものが見れるなんて、死ぬに死にきれない。
リオルトは手の中の魔力を小さく練り、少年にぶつけようとした
すると、タイミング悪く駆け寄ってきたレン。
「あぶない!」
駆け寄ってきたレンにナイフを突き刺そうと、少年が振り上げる。
(ヤンデレは…)
「私が守る!」
思わず声に出てしまったが、それで良い。
少年の足を引っ掛け、少年はバランスを崩し床に倒れる。
そのタイミングを狙う。
「ちょっと失礼します!」
「は!?」
そういうとリオルトはレンの目を手で隠し、視界を塞いだ。
そして手の中で魔力をできる限り圧縮し、死なない程度の風魔法に変えてやった。
少年はリオルトの魔法を直で受け、はるか後方にふっとばされていく。
背後にある酒樽が良い感じのクッションとなって少年を受け止めていた。
(当たりどころ悪ければ痛いだろうなぁ…)
そう思いながら、ハッとする。
「う、わぁ、すみません!」
「いや…」
レンの目を手で隠したままだった。
慌てて手を離すと顔を赤くしたレンが出てきた。
(暑いのかな…)
レンは後方にふっとばされた少年を見て、リオルトを見た。
「まほ…」
「いえ、強風が吹いたんです」
「いや、ま…___」
「強風が吹いたんです」
「そうなのか?」
「そうです」
有無を言わせない。
疑うような目を向けられるがすぅ〜と逃げるようにそらす。
「そ、それよりも!メーアのもとに戻らないと!」
わざとらしく思い出したようにリオルトは走っていく。
レンはその場に1人残される。
死ぬと思った。
さきほどもしリオルトに助けてもらわなかったら、間違いなく死んでいただろう。
あのとき…
『私が守る!』
そう発したリオルトの横顔がなんとも…
(何だ、この気持ち…誰にも渡したくない、離したくないような…)
危なっかしく走る後ろ姿に、思わず囲ってしまいたくなるような衝動が走る。
(いやいや、最近様子が変わったが、ずっと俺や両親に迷惑かけていたやつじゃないか…)
けれど、なんだろう。
あの時の言葉に、救われてしまったのだろうか。
(男が「守られる側」か…なんともむずがゆい…)
そう思いながらもゆっくりと路地裏から足を踏み出した。
レンくんの心が動いちゃった〜
レンくんがコレにて極度のシスコンにジョブチェンジします。
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作者は喜びの舞を踊ることでしょう。




