10話 『一件じゃなくて、二件落着した。』
「うんっまぁ…」
「私も食べたいです‼‼残してください‼‼」
「やだね」
「意地悪です〜〜〜!!」
エミアスとメーアがリオルトの前で飴を頬張りながら、微笑ましいやり取りを見せてくる。
前回、迷惑をかけてしまった分のせめてもの情だ。
そんな二人を見ながら先程の出来事を振り返った。
「こんなことですか?」
「むしろこっちがありがたいくらいだわ」
二人はあっさりリオルトの願いを受け入れてくれた。
『私の侍女になってほしい』
それがリオルトのお願いだった。
せっかくできた友達なのに、またはなれるのは悲しいと思ってしまったからだ。
(自分らしくないなぁ…こんな願い)
そうも思いながらもワイワイと騒ぐ二人を見、くすりと笑った。
コンコン、と扉がノックされた。
(勉強中は、普段メーア以外誰も入ってこないのに…)
そう思いながらも「はい」と返事をした。
カチャリと扉を開け入ってきたのはレンだった。
突然の訪問に、リオルトは衝撃すぎて羽ペンを落とし__そうになり、見事な反射神経で、羽ペンを守った。
(いや、あっぶねぇ〜〜…こんな高そーな羽ペン、落としたらどうなることやら…)
「はっ」
羽ペンの事態でうっかりレンが来てるのを忘れてしまったではないか。
リオルトは椅子から立ち上がり、お辞儀を無言でする。
「え、あ、おい」
その様子にレンは焦ったように声を出す。
(何だ?)
少し視線を上げ、前髪の間からレンの様子をうかがう。
レンはリオルトから視線をずらしており、気まずそうに立っている。
その立ち姿も均等な体から…__
(やばい、現実逃避しかけてた…しっかし、なんのようだ?邪魔すぎる。勉強ができない)
これは、こっちから聞くのが最適ルートだと判断したリオルトは口を開いた。
「…どうされたのですか」
「…、今日は家族集まっての晩餐だ。絶対遅れるな」
「はい」
「…」
「…」
言うやいなや、黙ってしまった。
(別に、今日が晩餐なんてエミアスかメーアのどっちかが言ってくれるんだし、何故にレンが?)
リオルトは頭の隅でそんな事を考えていたが、レンには沈黙が耐えれなかったのだろう。
「…今までのこと、俺はお前に対して強いあたりをしていた。…す、すまなかった…」
吐き出すようにゆっくりとこちらへ言ってきた。
レンは恥ずかしかったのか、プイとそっぽを向く。
ほのかに耳が赤くなってる。
はい、感想。
か、可愛いいいいっっ‼‼‼‼て、天使かっっ⁉
思いっきり目を見開いているリオルトに、レンは更に突っかかるように言う。
「ち、父上が、謝れって言ってきただけだからな‼‼俺は全然悪くないと思っているし、謝罪する意味もないと思っているからな‼‼‼」
そう言い残し、レンは慌てるように扉から出ていく。
一人残されたリオルトは、口元を抑え、言葉をこぼす。
「ええ…」
なぜならば。
ゲームでのレンは、冷酷非情で他のことには一切興味なし。
だが、ヒロインのことになるとほぼストーカー行為をし始める。
いわゆる『ヤンデレ』なのであるが、一部のファンの方たちからには『裏魔王』とまで言われているほど。
リオルト興奮ポイントは何と言っても照れていたところ。
幼くあろうが、ヤンデレの器が照れりゃ、この世は滅びる。
あくまで持論だが、『メンヘラ』『ツンデレ』『ヤンデレ』の照れ顔はこの世を滅ぼす。
全世界の人間に言う。
テレ顔を国宝にしろや‼‼
「ふぉぉ…ヤンデレ(器)の照れ顔たまんねぇ…」
リオルトはベッドに頭をボフボフぶつけている最中にメーアが呼びに来たのは言うまでもない。
「今までのご無礼、どうかお許しくださいっ‼‼」
晩餐が始まる前、家のものが集まった瞬間、リオルトは謝罪の言葉を発した。
リオルト父がなぜか慌てるように言ってくる。
「リオ、い、いきなりどうしたんだ⁉」
「そうですわよ」
「…」
レンは驚きのあまり無表情で固まっている。
リオルトは知っている。
余裕そうなやつはこころではどす黒い気持ちを隠しているのだ。
だからここで謝らなければ、更に反感を買ってしまう。
なので、全力で謝る。
「いいえ、私は平民の身でありながら家の皆様にご迷惑をかけるようなことをしていました。そのことは誤っても償えるものではありません…」
「リオ…」
「本当に、申し訳ありませんでした」
頭を下げていれば、いつの間にか目の前に義父がいた。
そして、リオルトの頭に手を置く。
「いいんだよ。そんなにかしこまらくても」
「ですが…」
「最近。君は勉学や、使用人にも気遣いがあるようだね。メーアとエミアスといったかな?彼女達はものすごくリオのことを慕っているようだ」
「…」
リオルトはうつむいてしまう。
さらに養父が優しく続ける。
「最初、君がこの家に来たときはたしかに横暴な振る舞いをしていたね」
「…はい」
「けれどね、君は私達の大切な家族だ。そしてまだ幼い。…甘えるのは良いんだよ?」
「…ごめんなさい」
「いや、違う。ごめんなさいじゃない。そういうときは、『ありがとう』と言うんだ」
養父はニコリと笑った。
リオルトはなぜか救われた気持ちになり、顔を上げ、口を動かした。
「あ、ありがとう、ございます…」




