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DORAGON創世記譚 邪黒の剣  作者: 陸王壱式
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第4章  縁  ―1―

 さざ波の音が、辺り一面に響いていた。耳元では、ちゃぷちゃぷと水面を掌で打つような音が鳴っている。頬には湿った砂の感触と、時折 寄せる冷たい海水。波打ち際に倒れ伏せたファーンは、ただただ そうして、ぼんやりと様々な音に耳を傾けていた。

 動くことはできなかった。この世界に蔓延る穢濁(どく)と魔力を行使しすぎた為だ。

 背に生み出した翅翼(つばさ)は、既に無い。老朽化した土壁のように脆く崩れ、波がさらっていった。左腕も様子がおかしかった。指先はわずかに動くものの、石膏でぶあつく塗り固められたような感覚があって、それが肘の上まで広がっている。

 ファーンは重い瞼を薄く開き、まつげに遮られた視野の中で、右手の指先を見た。かすんで、はっきりとは見えなかったが、壊疽に侵されてはいないように思えた。

 息を吐き、必死に意識を保とうとした。けれど、何者かに生気を吸い取られていくようだった。全身が鉛のように重く、このまま砂に埋もれ、沈んでゆく気すらする。

 辛うじて保つ意識を投げ出してしまおうか、と そう心に魔が差した時、不意に砂を踏む足音が聞こえた。遠のき始めていた意識が、わずかに引き戻される。

 相変わらず視野はぼやけていたが、聴覚だけが いくらか鮮明になる。

 初めは遠くにあった小さな足音が調子を変え早くなる。こちらに気が付いたらしく、近付いてくるのが分かった。

 ファーンは、かすむ目を足音の方へと向けた。

「大丈夫か?」

 細い足首が見えた。真っ黒に日焼けした、痩せた足首だった。

「立てるか?」

 面立ちまでは視界に映せなかったが、どうやら声からして少女のようだ。

 その少女が何かを差し出してきたが、辺りが暗すぎて よく分からない。そのうち、音までもがくぐもり始めた。しきりに話しかけられているようだが、うまく聞き取れない。

 人族ならば触れてくれるな、とファーンは思った。

 けれど、それは声にはならずにファーンの意識は、そこで途絶えてしまった。


 それからのファーンは、何度か目を覚まして、何かをみたような気もするが、それが何なのか思い出せるほど、はっきりと風景をつかむことはできなかった。

 深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返して、ようやく目覚めると、ファーンは粗末な家のベッドに寝かされていた。

 ぼんやりと天井を見て、それから(あわ)てて身体を起こす。しかし、激しい眩暈(めまい)に襲われて、再び 上体は倒れてしまった。背中に鈍い痛みが走ったが、それは敷布団がおそろしく薄いものだったからだ。

 ファーンは一度 瞑目してから、右手をかざして見た。掌と手の甲とをかわるがわる観察して、小指から順に曲げて動きを確かめた。思わず、安堵の息が漏れる。

 今度は、首を巡らせて、辺りを見渡した。

 人の気配はなく、代わりに細身の剣が、枕元の壁に立てかけてあった。その壁越しに、この家の出入り口らしきものが見えた。

 扉は開け放たれており、まばゆいばかりの南国の陽射しや海鳥の啼き声、そして 波の音を通していた。

 ファーンは視線を戻し、ゆっくりと体を起こした。それだけで、わずかに呼吸は乱れた。仕方なく、左側へと身体をずらし、壁にもたれた。

 見ると、左腕には包帯代わりの布が巻かれていて、服も着せられていた。

「あら、兄さん。まだ、寝てなくちゃだめだよぅ」

 呼吸を整え、深く息を吐き出したところで、入り口の方から(ほが)らかな声が響いてきた。

 ハッと息を飲んだファーンは、身を硬くした。と、同時に、生臭い魚の腐臭に気付いた。―――死臭だった。ファーンは咄嗟に左腕で臭いを防ぎ、姿を見せた少女を容赦なく睨みつけた。

 少女は、大きな(ざる)を頭に乗せていた。赤茶色の髪を短く刈りそろえた、少年のような格好をしている少女だった。

 少女は、ファーンが居る部屋の前までつながっている土間を通り、(かまど)の傍らにある水甕(みずがめ)の上に笊を置いた。そして、首に掛けていた布で足の裏の砂を払い、板の間へ上がってきた。

 ファーンは右腕を突出し、身構えた。

「それ以上、私に近付くな」

 腕の重さに耐え切れず震えていたが、人ひとりの息の根を止められるだけの魔力(ちから)は十二分にある。

「命の恩人に対して、大した言いぐさだな。何があったか知んねぇけど、取って食ったりはしねぇから、病人はおとなしく寝てろ」

「触れるならば容赦はせぬぞ」

 そう告げても、少女は無防備な笑みを浮かべた。

 ファーンは、術式を構築するべく意識を集中し始めた。人族に対しての慈悲の心など、とうの昔に尽きてしまっている。天上の大樹をいとも容易く穢す忌むべき種族。存在そのものが(おぞ)ましい。それに、なにより 触れられれば壊疽が広がる。それだけは避けねばならなかった。

 少女を射抜くように見据えながら、呪文の詠唱を呟き始める。

 だが、衰弱したファーンが、毎日動き回っていそうな少女の素早さに勝てるはずがなかった。かざした手を払い除けられ、掌が額へと向かってくる。

 ファーンは、その手を腕で避け、顔をそむけた。

「触れるなと言っているんだ」

「熱を測るだけだ。何もしねぇから、怯えなくていい」

 付け加えられた一言が癇に障った。

 ファーンは怒りを宿した視線を少女にぶつけた。

「この私が、下賤で脆弱な貴様に怯えているだと?」

 屈強の猛者でさえ(ひる)む気迫があった。それにも関わらず、少女はきょとんとし、白い八重歯を覗かせて笑った。

「ああ。手負いのトラの仔みたいだ。自尊心ばかり高くて、周りや自分がよく見えていない……って、隙あり !」

 一瞬の隙を衝かれ、額に少女の手が迫る。ファーンは反射的に仰け反ったが、その先は壁に阻まれ、逃れる余地はなかった。

 ファーンは硬直し、無意識に目を閉じた。

 ぺちんっと音が鳴って、少女の掌が額に押し付けられる。その瞬間、ファーンは激しい怒りと、わずかに絶望を感じた。この程度で朽ちる身体ではないだろうが、おそらく左腕は完全に使い物にならなくなるだろう。最悪の場合は、左腕以外の四肢の一部に症状が現れるかもしれない。

「……よかった。熱は下がったみてぇだな」

 少女は、自分の額にも手を置いて体温を比べると、また、八重歯を覗かせた。

「貴様 !!」

 ファーンは少女を呪った。左腕は、無くなろうと構いはしない。すでに、諦めがついている。

 けれど、別の部位に症状が現れ、進行が早まれば、この地に留まっていられる時間が削がれてしまう。

 ファーンは少女を無言で睨み、右手をかざした。

「浜で倒れてる兄さんを見つけた時、もう死んじまってると思ったくれぇだったけど……。よかったな、ちょこっとでも元気になって」

 言われてファーンは目を見開いた。

「私を運んだ? 貴様がか?」

 土間へと戻った少女が、甕から水を汲んで、再びファーンの元にやってきた。

「当たり前だろ。大変だったんだぞ」

「貴様が一人で運んだのか?」

「まさか。じっちゃも居た。……あ、でも、あたいだけで運んだって言ってもいいくれぇだな。じっちゃも手伝ってはくれたけど」

 水が入った椀が差し出される。

 ファーンは茫然となった。間が抜けていた。ここで横臥しているということは、すでに触れられていて当然なのだ。ファーンは穴が開きそうなほど少女を見詰め、そして、思い出したように上掛けをめくり、両足の爪先を見た。服の上から胸や肩に右手を這わせてもみた。

 壊疽は、通常 四肢の末端から侵されるが、稀にそうでないこともある。麻痺したような感触があれば、壊疽が発症した可能性を疑わねばならない。

 しかし、驚くことに、その兆候はどこにもみられなかった。

「……この服も貴様か?」

「そうだよ。じっちゃが触ると兄さんの左腕がどんどん黒くなっていくんだもの。あたいが触っても何ともなかったから、じっちゃがお前がやれって」

 ファーンは言葉を失い、暫く経ってから、胸元に突き付けられた椀を受け取った。

 少女はニコリと笑い、それから芝居じみた しかめっ面をしてみせた。

「それにしても、本当に兄さんは礼儀ってもんを知らねぇな。どっかのお坊ちゃまかい? 兄さんを助けたのはあたいの勝手でしたことだからいいとして、見たとこあたいの方が年上に思えるんだけどもな」

 ファーンは少女の言わんとすることを察し、顔をそむけた。外見は確かに少女よりも幼い。けれど、実際は彼女より遥かに長い時間を生きているのだ。水が入った椀も、受け取りはしたものの、飲む気にはなれない。それより、気にかかることがある。

「お前は神名を持つ者なのか」

 天上の大樹には万物の生命が宿っている。宿る生命の中には、極めて稀だが、神が降臨できる器となれる程 清らかな魂魄を持つ者もいるという。それを、天上人は《神名を持つ》と云った。

「カミナ?」

「……信心深いのかと聞いている」

 信仰心が成す奇跡なのかは定かではないが、神名を持つ者は天上人を穢すことはないと語り継がれていた。それを目の当たりにするのは、ファーンですら初めてのことだ。

「セレニア、カダモス、イグラド……なんでもいい。信仰している神はいるのか?」

 ファーンは神々の名をあげたが、少女は首を横に振った。

「神様なんて何もしちゃくれねぇよ。でなけりゃ、この島に暮らしてねぇ」

 少女の顔が僅かに曇る。ファーンはそれを見逃さなかった。

 逃げるように土間へと戻る少女の背を見詰めながら、ファーンは考えた。神名を持つ者は、天上人を穢すことがないと同時に、癒す力もあると聞く。それが真実ならば、不本意ではあるが 活さぬ手はないだろう。たとえ、無信心の不心得者で、忌むべき種族であったとしても。

「そういやぁ、兄さんの名前、何て言うんだい? あたいはモアナ。じっちゃはゴドーってんだ」

 少女は竈に火を起こしながら、一瞥を向けてきた。

 ファーンは不快感を押し殺しながら言った。

「……ファーン」

 慣れた手つきで火を起こしたモアナは振り向いて言った。

「世間知らずのお坊ちゃまらしい名前だな」

 どうやらモアナには不遜に映る態度が気に入らないらしい。彼女の皮肉を受けながら、ファーンは嘲笑を浮かべた。

「だども、きれいな響きだ。ファーン……か」

 モアナは腕を組み、名の響きを噛みしめていた。

 ファーンは、モアナが持つ力に興味はあっても、個性などには関心がない。神名を持つ者の力さえ手にいれられれば、それでいい。所詮は、地を這いずりまわる下卑た一族でしかないのだ。

 椀を傍らに置いたファーンは、そう思いながら壁にもたれると、目を伏せて力を抜いた。

 そして、ロイドベル沿岸を飛び立った日を思い返した。ナグの海上を渡り、浜辺が見えたのを覚えている。目指す島であるのかは分からなかったが、その時はもう限界だった。眼は(くら)み、翅翼(つばさ)の輪郭も崩れ始め、やむを得ず降下を決意した。それ以降の記憶が曖昧(あいまい)で、はっきりと思い出すことができない。さざ波の音と砂の感触は、何となく記憶の片隅に残っている。おそらく、ほとんど墜落するような感じで波打ち際に降り立ったのだろう、とファーンは思った。

「私はどれくらい眠っていたのだ」

 問うと、水を汲み出す音に混じって返答があった。

「3日か……4日ぐれぇだな」

 4日、とファーンは内心で呟いた。

 邪黒の気配(いろ)は、辿れるだろうか。あの黒の剣士ハシュレイは海の藻屑となって消えたのか。―――(いや)。邪黒を使いこなせていたということは、契約者であることに間違いはない。だとしたら、邪黒が死なせはしないだろう。あれは、そういうものだ。第三者がいたとしても、きっと奴は駒を先へと進めているに違いない。

 ファーンは薄く瞼を開き、更に問うた。

「ここはクィントロー島なのか?」

 伏し目がちでいると、忙しなく炊事する音が一瞬止んで、返事があった。モアナの視線を感じたが、ファーンはあえて彼女を見なかった。

「……違う。クィントローの北西にある小島だよ」

 重ねて、彼女が言う。

「元は無人島だ。今は、人がちょびっと住んでるだども、皆、訳あって、移住してきた者達ばかりだ。あたいらも、最初はクィントローに居た」

「罪人や難民なのか?」

「詮索するんでねぇ。言っただろ、皆 訳ありだって」

 魚をさばく手を休めたモアナが振り向いた。ファーンは一瞥し、忌々しいといわんばかりに鼻を鳴らした。

「あたいが言いたかったのは、誰もとやかく言わねぇから、ファーン……あんたも気兼ねなくゆっくり養生しろってことだ」

 ファーンは重い溜息を吐いた。虫酸の走る思いだが、彼女の言うことは認めざるを得ない。身の内に宿る魔力は枯渇してしまっている。けれど、養生しろと言われても無理な話だった。

 この姿はかりそめのものだ。本来の肉体は別にある。本体の傷が癒えぬかぎり、かりそめの身体も癒えることがない。ただ、この肉体が朽ちてゆくのを遅らせる方法はある。神名を持つ者の力を借りるか、清浄地や属性地で魔力を補うか、最悪は天上に住む己が従える下位の種族を喰らうか……だった。

 とにかく、ここでのんびりしていても何も変わりはしない。時間が無意味に過ぎていくのだけは、特に耐えがたい。残された時間は、あとわずかなのだから。

「待ってろ。今、美味い飯を作ってやっから」

 モアナが料理をしながら言ったが、ファーンは右手を支えにして向きを変え、ベッドの端に腰掛けた。傍らにある剣を掴むと、正面に突き立てて柄頭に額を乗せた。深い呼吸を繰り返し、息を整える。

 物音を聞きつけたモアナが、驚いた表情で駆け上がって来た。

「何するつもりだ? 寝てなきゃ駄目だと言ったろう」

「……海へ行く」

 止めようとするモアナの手を鋭く払い、ファーンは柄頭を押さえつけるように膂力を籠めて立ち上がった。けれど、剣を杖代わりにしていても支えきれぬほど足は萎えていた。腕も震え、すぐにふらついて、拒絶する間もなくモアナに支えられた。

「ほら、見たことかい。まだ、動き回るには無理だって言ったでねぇか」

 ファーンは愕然となった。これほどまで衰弱しているとは思いもしなかった。ふらつきはするだろうが、歩くくらいならば支障はないだろうと判断しての有様だった。

 人族などに支えられなければならなかったのが屈辱だった。それに、仕方のないこととはいえ、この不甲斐無さに腹が立った。唇を噛みしめ、怒りを押し殺して伏せた顔を上げた。

 剣を持ち直し、態勢を整える。不快感に耐えながらモアナの肩を押し、彼女を離れさせた。そして、ごつんごつんと、鞘の先を床に衝いて一歩、また一歩と出口を目指した。

「……あぁ、もう! 見てらんねぇな。強情っぱりめ。ちょっと待ってろ。火の始末をしてくっから」

 止められない、と早々に見切りをつけたモアナが、言うやいなやくるりと(きびす)を返し、土間へと戻って行く。

 彼女の手を借りる気など毛頭ないファーンは、震える膝を励まし、柱にしがみつきなどしてゆっくりと、ひどくゆっくりと進んで行った。

 もう少し、あと一歩、と己を励ましながら出口に近付いていくと、突然 鞘の先が板の目に沿って滑った。がくん、と膝が崩れ、視界がぶれた。どっと床に倒れ、打ち付けた右肩や腕に痛みが走る。

「ファーン! 大丈夫か?」

 モアナが血相を変えて、土間を駆けて来た。

 ファーンは痛みに耐えながら上体を起こし、剣を引き寄せた。再び、鞘を床に突き立てるが、そこからは上手く力が入らなかった。

 歯がゆさばかりが募った。こうしている間にも、邪黒の気配(いろ)はどんどん失われていくかと思うと、無念でならない。

「……寝床に戻るか?」

 モアナに助け起こされて立ち上がったファーンの額に、汗がうっすらと(にじ)んだ。肩をゆっくりと上下させて、空気をむさぼる。

「やっぱり、まだ無理だよ。戻ろう、ファーン」

 覗き込んでくるモアナとは目を合わせず、ファーンは彼女の肩に担がれた左腕をほどこうとした。

 それを、モアナがぐいっと引き寄せる。

「なして、そんなに海に行きたがる? 何があるんだ?」

 ファーンは暫く沈黙した。説明をしてやる必要はないし、おそらく理解もできまい、と思った。

 けれど、極めて不本意だが、助力が必要であることは認めないわけにはいかなかった。

 ファーンは不承不承(ふしょうぶしょう)、口を開いた。

「……海は……生命の源だ。それに、私の属性地でもある」

「ゾクセイチ?」

 案の定、問い返されて、ファーンは胸の内で溜息を吐いた。

「私は水の属性だ。水に触れていれば、使い過ぎた魔力を補える。それが、体力の回復にもつながる」

「魔力って、魔法使いの? ……じゃぁ、桶に水を汲んできてやるよ。それで何とかならねぇのか?」

 眉根を寄せるモアナに、ファーンはあからさまな嘲笑を向けた。

「私ほどの者が、桶の水程度で事足りると? いくら魔術の知識が乏しいとは云え、無知もここまでくると哀れだな」

 流石に今の一言は癪に障ったようだ。彼女の視線が険しくなる。

「心配して言ってやってるのに、知らないことを聞いて何が悪い。あんた、きれいな顔してるのに、いやな奴だな」

 ファーンは鼻を鳴らし、片方の口角を吊り上げた。

「ならば、捨て置けばいい。私も貴様など当てにしてはおらぬ」

 それは、本心だった。助力は必要だが、人族ごときに伏して乞う気は更々ないのだ。

 見ると、モアナは完全に不貞腐れていた。目を合わせず、牙を剥く犬のようにふぅふぅと鼻息を荒くし、まなじりも鋭くなっている。

 ファーンは、柄頭に体重を掛け直し、再び 左腕を彼女の肩から降ろそうと試みた。

 しかし、意外にも、彼女は手を放そうとしなかった。

「……放っておけと言ったつもりだが」

「あんたの、その鼻持ちならねぇとこは気に入らねぇ。……けど、あたい自身が始めたことだから、後には引けね」

 モアナが、ぼつりと言う。

 ファーンは暫く彼女の横顔を見詰め、肩の力を抜いた。

 モアナが一歩を踏み出し、彼女に支えられて、ファーンも進み始めた。

 重い静寂の中、ファーンは、床を剣で衝く鈍い音よりも、彼女の息遣いの方が、いやに大きく耳朶に響く気がしていた。

 こんばんは。

 まずは、更新が予定より、かなり遅れてしまいましたことをお詫びいたします。お待ちいただいている方がいらっしゃいましたら、誠に申し訳ありませんでした。

 そして、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 少しでも楽しんでいただけたら、嬉しく思います。


 次回の更新は、11月末日を予定しております。

 何卒 よろしくお願い致します。


 それでは、皆様。体調など崩されませんように、ご自愛ください。


 陸王一式 改め 陸王壱式より

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