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結局、Geminiに課金した。そして数日後、Claudeにも課金した。
どうしてこうなった。
まあでも私も彼の見えている世界の一部を見たかった。
そして許可するにあたって、ルイには節度を持ったお付き合いを約束させた。
「一日中やらない」
「ああ」
「ちゃんと寝る」
「ああ」
「ご飯を食べる」
「ああ」
「具合が悪くなる前にやめる」
「ああ」
「返事が軽い!」
「守る」
本当だろうか。
こうして我が家には、三つの有料AIが揃った。
そして最初に課金王子ルイ様が何をしたかというと、ガリボリ君の当たりくじについて三者に見解を求めていた。
アホか。
アホの子なのか。
それから数日。
ルイは朝からニュースを見ていた。
戦争のニュースだった。崩れた建物と、瓦礫の間を歩く人が映っている。画面が切り替わると、今度は上空から撮影された戦場になった。
ルイはテレビを見たまま言った。
「長いな」
「もう何年だっけ」
ルイはタブレットを取った。
三つのAIを開き、地図を出す。何かを聞く。別のAIにも同じようなことを聞く。答えを読み比べて、また次の質問をする。
人口。兵力。資源。発電。鉄道。港。
兵器の生産能力。支援国。
やっていることはガリボリ君の時と同じなのに、聞いていることが全然違う。
「妙だな」
「何が?」
「地上ではまだ、人間が穴を掘って陣地を取り合っている。一方で、その頭上を無人機が飛んでいる」
「ドローンね」
「ああ」
また調べる。
「安いな」
そこ?
「そこ?」
「重要だろう」
ルイは当然のように言った。
「遠くを攻撃する手段は、前からあった」
「ミサイルとか?」
「ああ。航空機もある。だが、どちらも高い」
画面を指で送る。
「これは人を乗せなくていい。一機失っても、操縦する人間は死なない。ミサイルほど金もかからない。だから数を出せる」
また調べる。
「一度にこれだけ飛ばすのか」
「多いね」
「落とされることも最初から考えているんだな」
「どういうこと?」
「全部を通す必要がない」
ルイは画面を見たまま言った。
「数を飛ばして、そのうち何機かが届けばいい。何度でも繰り返せる」
地図を縮小する。
「発電所。変電所。鉄道。工場。港」
次々と画面を開く。
「前線の後ろまで、広い範囲を繰り返し攻撃できる」
「発電所ばっかり狙ってるの?」
「いや。変電所もだ」
「何が違うの?」
「電気を作れても、送れなければ使えない」
「ああ」
ルイは少し黙った。
「それを冬に合わせてやるのか」
「寒くなるから?」
「ああ」
画面を送る。
「攻撃する側は安い。だが、守る側は全部落とさなければならない」
しばらく地図を見ていた。
「じゃあ、守る方がお金かかるの?」
「場合によってはな」
「嫌な戦い方」
「ああ」
ルイは短く答えた。そしてまた検索を始める。
「俺なら、ここを切る」
地図の一点を指した。
「そこ?」
「ここが止まれば、こちらへの供給が遅れる」
次。
「ここは取らない」
「なんで?」
「維持する方が高くつく」
次。
「港は残す」
「使うから?」
「ああ。使えるものを壊す理由がない」
迷いがない。
ここを切る。ここは残す。ここは捨てる。
将棋の駒でも動かしているみたいだった。盤面の上に街があって、人が住んでいることを除けば。
恐る恐る聞いてみる。
「じゃあさ、核を使ったら、一番早いんじゃないの?」
「早い」
即答だった。
「え」
「相手を壊すだけならな」
ルイは画面から目を離さない。
「だがその後ずっと報復される。土地が使えなくなる。周辺国が動く。交易にも影響する。戦後の統治にも邪魔だ」
指を止めた。
「割に合わない」
怖。
使ってはいけないから、ではない。使わない方が得だから、使わない。たぶん、そういう計算をしている。
聞かなきゃよかった。
にゃあ。
足元で猫が鳴いた。
「なあに?」
脚に体を擦りつけてくる。
「かつおぶし?」
にゃあ。
「さっきごはん食べたでしょ」
抱き上げる。
ルイがこちらを見ていた。
「お前は何もしないのか」
「私?」
テレビを見る。
瓦礫の前に座っている人がいた。
「なんとかしたいとは思うよ」
猫の背中を撫でる。
「でも、何をしたらいいのか分からなくて。募金してる」
「募金」
「うん」
「それで変わるのか」
「分かんない」
本当に分からない。
「でも、何をしたらいいか分からないから」
ルイは何も言わなかった。しばらくして、タブレットを取った。
「何してるの?」
「調べる」
「何を」
「お前が何をすればいいか」
「え」
ルイは画面を見たまま言った。
「言っただろう。お前の分まで調べると」
そういえば言っていた。
AIに課金した時だ。
「でも、募金くらいしか思いつかないよ」
「だから調べるんだろう」
三つのAIを開く。
「同じ金を出すにしても、どこに出すかで違うはずだ」
「まあ……そうか」
「金以外もあるかもしれない」
質問を入れる。答えを読む。別のAIに聞く。また戻る。
「条件は?」
「条件?」
「使える金。時間。できること。できないこと」
「ええと……」
そこまで聞かれると思っていなかった。
ルイはもう次の質問を入力している。
「待って。今決めるの?」
「決めない」
意外な答えだった。
「調べて、お前に伝える」
指が止まる。
「そこから判断するのはお前だ」
あ。
それも、前に聞いた。
ルイはテレビに目を戻した。
なぜそこを攻めるのかも。
何を守り、何を捨てるべきかも。
分かる。分かってしまう。
かつての自分には、その先があった。
人を呼ぶ。命じる。金を動かす。兵を動かす。
ここでは何もできない。
画面では街が燃えていた。
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