第五話 「水泡」
「おはよう!」
「おはよう…」
「眠れた?」
イオは少し目を見開いた。
「…眠れた…けど…なぜ?」
「昨日遅くまであったからさ、心配で。」
「心配は不要です。」
「そう、まあお大事にね。」
ミラクはメシュガーの点検をしようとした。
「ミラク、ちょっといいか?」
アオギリが呼ぶ。
「どうしました?」
「現在確認されてる生存者は全世界推定5億人。CBの管轄下の生存者は3億人。残りの2億の保護のため、行動範囲を広げる事になる。まあ、一応伝えておいた。」
「わかりました。」
今度こそ、鞘の中で暴れるメシュガーを出そうとした。
[市街地F、クロアネ確認。至急出撃を」
「ミラク達、行くぞ。」
「…はい!」
「…」
イオは、少し目で追っていた。
『市街地F』
倒壊した廃ビルと成長した木の覆い茂る街。
奥には廃れた水族館がある。
多数の蛭の木の存在が確認されている。
「うげ〜臭いキッツ〜」
「しょうがないだろ…コウ…ただでさえクロアネが多いんだから。」
「気を付けろよ。」
[クロアネの反応、減少。クロアネの残留反応増加。]
「ん…?反応が…」
「何でだ…?」
水族館へ向かう。
「残留反応が強いな…」
「おぉ、もう倒したぜ。」
声の方には、見知らぬ人。
「誰だ?」
「俺はクリス。フリーでハンターやってるぜ。」
「ハンター?」
「クロアネハンターだよ。アイツらの一部は高く売れるからな。」
「武器の製造の成分になるからな。だが危険だ、もうやめておけ。」
「俺のこと過小評価してない?」
「過小評価ではない、事実だ。」
「まあもういないからおさらばだな。あ、木の浄化もあるのか。」
「そうだ、お前はもう帰れ。」
「はいはい…おっ!」
イオを見つめる。
「可愛い女子いるじゃん。ちょっと話そうぜ?」
「…」
(はぁ…またメシュガーみたいなやつが増えたよ…)
ミラクは心の中で思う。
「な?一回でもいいからさ〜」
「…黙れ。」
「ノリ悪いな〜いいじゃん〜」
「…」
その時だった。
[生体反応増加、クロアネに注意]
「え…?」
地面を突き破り、15mはあろうクロアネがクリスを飲み込む。
「…!」
「地面から?!」
コウは驚いてすっ転ぶ。
割れた地面から水が噴き出す。
「なるほど…奇跡的に下水道が生きていて、そこに潜んでいたのか…?」
「あの新型の?!」
少ししてミラク達に気付いたクロアネは、醜い顔を歪ませ、咆哮をあげた。
アオギリは、嫌な予感がした。
「来るぞ!全員散れ!」
巨躯は地面を削りながら突撃してくる。
イオは遠方から弱点を探る。
(頭と腹が大きい…どちらかが弱点…?心臓はどこにある…)
「おい!起きろ!」
「んだよ〜いきなり〜…全然出してくれないから寝てたのに〜…」
メシュガーが目を覚ます。
「アイツ食えるか?」
「うげ〜不味そう〜」
「いいから!」
アオギリが注意を引きつけている間、イオが弾を装填する。
(メシュガーが食べる…弱点で無くても…隙を作る…)
30m離れた、横倒しに崩れた廃ビルの上から、メイヘムのスコープで狙いを定める。
(今…)
目に向かって三発、胴に向かって三発。
「དེ་གིས་ན་ཟུག་རྐྱབ་ཨིན།‼︎」
クロアネが叫ぶ。
「今だ!食え!」
「はいよ…!」
メシュガーの目が開眼し、刃が変形。
二又に分かれ、腕を挟む。
「噛みちぎれ!」
腕を切り落とし、吸収する。
「う…おえぇ…マッズ…」
「大丈夫かよ…」
クロアネが怯む。
「今だ、コウ!」
「はい!」
アオギリとコウでもう一方の腕を切り落とす。
「ミラク!今だ!再生する前に!」
その時、メシュガーが一人でに動く。
「…!」
メシュガーが地面に潜る。地中を削りながら進み、クロアネの下から飛び出す。
「དེ་གིས་ན་ཟུག་རྐྱབ་ཨིན།‼︎」
「何だ?!地面から…!」
「今だ!行け!」
全員が一斉に攻撃し、体内から何かを見つける。
「球体…?」
「心臓…?」
イオが球体を撃つ。
「དེ་གིས་ན་ཟུག་རྐྱབ་ཨིན།‼︎」
クロアネが灰のようになって消えてゆく。
「コアの可能性…」
「他のやつはコアとか無かったよな…心臓はあったけど…こいつは心臓と一緒にコアが…」
何もわからぬまま、帰還する。
「コアの一部持ち帰ったけど…使えんのこれ…」
「多分…」
数時間後の午後8時、ミラクはメシュガーと話していた。
「何で急に地面に潜ったんだ?」
「吸収して、能力を一部再現したんだよ。」
「能力?」
「そう、アイツは地面を泳ぐんだ。アオギリが新型かと言っていたが、多分違う。」
「もう一個の新型…?」
「そう。」
「ん…まあ今日はもう…寝るから。おやすみ。」
「あいよ…」
第五話 「水泡」 完




