第三十二話 「心」
イオは部屋であの子と話していた。
「……いつ生まれたの……」
「わかんない〜気付いたら生まれてた〜」
イオは頭を抱えた。
「何で最初は猫だったの……」
「偶然見かけて可愛かったから〜」
「じゃあ何であんなに大きかったの……」
「気分〜」
イオはもう意味がわからなかった。
「ママ〜」
「マ……マ……?」
「違うの?」
「……」
その子は笑ってみせた。
「からかっただけ〜」
イオはふて寝した。
その子は隣で眠った。
翌朝七時。
イオ向かった先は当たり前のように医務室だった。
「おはよう……」
珍しくイオからおはようを言った。
ただ恥ずかしがって、声は小さかった。
だいたいミラクがおはようを言う。
イオも言おうとするが、喉から出ず、ミラクに先を越される。
イオは少し達成感を味わった。
そしてミラクを起こした。
「おやすみ……」
ミラクはまだ寝ようとした。
「おはよう……!」
イオは体を持ち上げた。
「まだ眠い……」
「起きる……」
イオはミラクの頬をつっついた。
「歩ける……?」
「少しはね……骨はもう治ったっぽい。急速治療だったから……」
「そう……」
イオはまた撫で始めた。
「イオ……また……」
ずっと撫でるつもりだ。
そんな様子をアオギリとコウは覗いていた。
「心配して来たらこれかよ……!」
「まさか……」
ミラクはイオの手を止めようとしているが躱され、撫でられ続ける。
もう諦めた。
立ち上がって逃げようにも足は怪我、身長が6cm大きいイオにはそもそも普通に追いつかれるからだ。
(私より小さい……可愛い……)
ミラクは「’_’」みたいな顔だった。
「アイツ〜羨ましい〜……!」
「コウ、お前には合わないだろ。」
アオギリに冷静にツッコまれる。
「お前にはミナじゃないか?」
「ミナはうざい……!」
「じゃあどういう人がいいんだよ……!」
「知らない……!」
そんな事をずっと話していた。
「二人とも……業務は?」
後ろから低い声がする。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!」
コウはまた気絶した。
「あぁ……戻ったんですか……」
スクリーバだった。
ミラクが心配して駆け寄る。
イオは腕を掴んでまた定位置に戻し、撫で始めた。
コウはすぐメディに回収された。
「はぁ……患者増やさないでよ……ただでさえ負傷者が多くて医務班は十二人でキツいのに……」
「そこら辺置いといていいだろ。」
アオギリの一言で、メディはコウを部屋の角っこに置いた。
ミラクは、まだ撫でられていた。
「イオ……やめて……」
みんなが去った後も、一時間ぐらい撫でられていた。
無表情のイオに。
第三十二話 「心」 完




