第二十五話 「境界線」
「に………げ…………」
ミラクの意識は完全に消えた。
「コウ!ランチャー!」
「えぇ…?!」
コウは少し躊躇ったあと、チャージを始めた。
「ミラク…」
電磁球はミラクへ向かう。
しかし砂埃の中から、暴走したミラクは出てくる。
「また効かねぇのかよ!」
コウは一旦下がった。
(ミラク…ミラク…)
イオは見ることしかできなかった。
スコープを覗く暇はなかった。
心が騒いだままだった。
「イオ!」
アオギリが叫ぶが、聞こえない。
応援チームとアオギリがミラクと睨み合う。
「ミラク…!戻ってこい!」
「ཁ་བཙུམ་…」
アオギリは動けなかった。
過去の暴走にないからだ。
アフラテュスは原因不明の暴走で灰となった。
最初の適合者は任務中に暴走。
現在は戦死した隊員が処分。
しかしこのような姿ではなかった。
もっと人に近かった。
二人目は自滅。
暴走したが、すぐ灰となった。
三人目は暴走以前。
予兆を感じ取った適合者が処分を自己申告し、苦渋の決断だった。
「イオ!撃て!」
イオの指は震えていた。
指だけではなく、体全体が震えていた。
(無理…無理……無理だ………)
「えぇぃ…!行くぞ!」
アオギリが突撃し、応援チームも続く。
ミラクはゆっくり歩き出した。
アオギリがミラクにバーズムを突き立てようとした瞬間。
「?!」
ミラクの体が鋼鉄に変化し、跳ね返される。
「まさか…アイツの…?」
ミラクがまた動き出す。
「全員!下が…!」
指示を出そうとしたアオギリにミラクが飛びかかる。
ミラクはそのままアオギリの顔に拳を振り下ろした。
「ぐっ…!」
二発三発と叩き込んだ。
そして、飽きたようにアオギリの元を去って、応援チームに突撃した。
「まずい!」
一人、また一人と壁に叩きつける。
「ང་གིས་ཁོང་ཚུ་ག་ར་བསད་འོང་།…」
ミラクは辺りを見渡した。
息切れのアオギリ。
壊滅した応援チーム。
隠れているコウ。
膝から崩れ落ちたイオ。
つまらなさそうに上を向く。
(ミラク………)
イオはメイヘムを手から離した。
「イオ…!離れろ…!」
イオはフラフラとミラクのもとへ向かった。
「ག་ཨིན་ན?」
ミラクが戦闘体制に入る。
「イ…オ…!」
アオギリが叫ぶ。
ミラクがイオに向かって走り出す。
拳を振り上げた瞬間、イオはミラクに抱きついた。
「戻ってきて…」
ミラクは、動きを止めた。
「何をしてるんだ…!」
アオギリが向かおうとするも、痛みで動けない。
「お願い……」
ミラクは拳を振り下ろそうとするも、直前で止まる。
「ミラク…」
「………イ……オ……」
ミラクは崩れ落ちた。
イオは、しばらく抱きしめたままだった。
第二十五話 「境界線」 完




