第十話 「まだ」
「イオ……大丈夫…?」
「ミラク……?」
イオは、少し意識を取り戻した。
「私は……逃げたの……?………逃げたことは……なかったのに………」
「でも……しょうがないよ……一応、アオギリさんとコウが足止めしてくれたから…」
「でも…二人とも近距離武器でしょ…?……どうやって……」
「僕もよく見てなかった…二人は軽傷で済んだみたい…」
「何だよ〜俺の話か〜…?」
「コウ…あの鉤爪でよく足止めできたね…」
「俺を舐めんなよ〜…」
「アイツは動きが鈍かった…だから近距離武器でもできたんだ…」
「アオギリさん…」
コウが間をおいて口を開く。
「俺…ノヴァの刃が欠けたから…直してくる…」
「私も、バーズムが少し刃こぼれしたので…」
治療室は、二人きりだ。
「まだ体調悪い…?」
「まだ…」
「そう…じゃあ…ゆっくりね……」
ミラクは、出ようとした。
「待って…………」
「どうしたの…?」
「まだ…一緒にいてほしい…」
「わかった…」
夜まで、ミラクは治療室から出なかった。
「じゃあ…僕もう寝るから…」
「うん……ありがとう…」
「じゃあね…」
「私……初めてワガママを言った……」
「たまにはいいよ………!」
「じゃあ……おやすみ……ミラク…」
「おやすみ……イオ…」
ミラクは治療室を出て、ロビーに向かった。
ケースからメイヘムを取り出す。
「これ…イオが30mくらいでスコープ覗いていたけど……30mならいらない気がするけど…」
「イオの事情もあって、スコープはあるの。」
「イオリさん…イオに詳しいんですか?」
「まあね…私はイオがここにきた時から一緒だからね…イオは目が生来少し悪いの。あと、あのスコープは、クロアネの弱点などを可視化できるの。だから覗いてるって訳。」
「そうだったんですか…」
「まあほんのちょっとよ、目が悪いのは。」
ミラクは俯く。
「目が悪いけど…見えるくらい親に特別な想いがあったんだな……」
イオリは自室に帰った。
「イオ…大丈夫かな……」
治療室からは、少し早いテンポの心拍の電子音がした。
第十話 「まだ」 完




