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「これで完成。いやー、あずにゃん!すっごい似合ってる!やっぱり私の目に狂いはなかった。」
ことちゃんが作ったアリスの衣装は、皆がアリスの衣装として想像する白いエプロンをつけた水色のワンピースで、ミニ丈になっており、用意してくれたパニエを下に履いたことで、まるでメイド服のようだった。足元は白色のニーハイソックスを履き、手首には白のレース製のリストバンドを着けて、頭には黒いリボンがついたカチューシャを装着した。肩からは白いフリルのついた小さなポシェットをかけた。髪の毛はエクステで、およそ2年ぶりにロングヘアになり、ことちゃんがかけてくれたヘアアイロンで緩いウェーブになっていた。ことちゃんはメイクもしてくれて、いつも鏡で見ている自分の顔よりも何倍も豪華になっていた。
姿見の前で自分の姿を初めて見て私は本当に驚いた。
「うわー…すごい…。自分じゃないみたい。こんなに短いスカート履いたのも幼稚園以来だ。…ちょっと派手じゃないかな?」
既に完璧なハートの女王の仮装をしていたことちゃんに、おそるおそる聞くと、
「何言ってんのあずにゃん!ものすごーく似合ってるから。膨張色の白のニーハイ履いても足がむくんで見えないなんて、細すぎだよ。
こんなにキレイな脚は出さなきゃ損だから。そして予想通りメイク映えするよねー。さて、皆に見せよう。」
そう言って、ことちゃんは、衣装担当の女子達の前に私を連れて行った。
「見て見て!3年6組のアリスです!」
歓声が上がり、皆が口々に褒めてくれた。
「やばい!可愛い!」
「てか、あずにゃん脚細すぎでしょ、羨ましいー」
「エクステもメイクも似合ってる!可愛すぎるー!さすがことちゃん!」
皆から褒められて、私は顔が真っ赤になった。
教室から歓声が上がったのを聞いて、廊下でトランプ兵に着替えていた男子達も教室の中を覗いてきた。
「え!山下さんすごいじゃん!」
「可愛い~」
「似合ってる似合ってる!」
男子達にも褒められて、居心地が悪いくらいだった。
「やっぱり、そもそもが可愛いだけじゃなくて、普段の頭が良くて清楚なイメージとのギャップもプラスに作用するよね。我ながら良い判断だった。」
そう言うと、ことちゃんは教室にいる面々を見渡した。
「…全く、タイミング悪いんだから。仕方ない、見せに行ってあげますか。あずにゃん行くよ。」
そう言って、ことちゃんに手を引かれて廊下に出た。
「え?どこに行くの?」
戸惑って、私が質問すると、
「まぁ、いいから、いいから。どうせトイレでしょ。しょうがないよねー。」
ことちゃんに連れられて廊下を歩いてると、すれ違う人たちに見られてる気がした。恥ずかしくてつい、俯いてしまった。
「やっぱり、トイレだった。ちょっと!林!笹井!」
トイレの前に、トランプ兵の格好をした笹井君と、鮮やかなオレンジ色のジャケットを羽織り、マッドハッターの仮装をした林君がいた。
「はーい、我らのアリスを連れてきました。どう?」
ことちゃんはそう言って、二人に私の姿を見せた。
「えー!めっちゃ似合ってる!可愛いね、山下さん!いつもと全然雰囲気が違う。」
林君はニコニコ笑いながら褒めてくれた。
「...ありがとう、ことちゃんのおかげでこんな感じです...。林君もマッドバッター似合ってるね。」
オレンジの衣装に負けていない、林君のスタイルの良さと着こなしはさすがだった。
「ありがとう。元々バンド衣装で使ってたやつだからね。矢崎も似合ってる。もう、女王様にしか見えない。ひれ伏さなきゃ。」
林君に讃えられたことちゃんは、
「ふふふ、頭が高いわよ、皆の衆。」
とノリノリで答えていた。
ふと笹井君を見ると、黙って頭を抱えていた。
ことちゃんはそんな様子の彼をしばらく見てから、
「...はい、もう時間切れです。全く意気地なし。いい?笹井。チャンスの神様は前髪しかないんだからね。じゃあ、また、のちほど。行灯行列で会いましょう。ごきげんよう〜。」
ことちゃんはそう言うと、私の腕を引いて、その場から連れていった。
「せっかくチャンスをあげたのに、本当に、ダメだねー。」
ことちゃんが何に対して文句を言ってるのか、よく分からないままついていき、3年5組の教室の前を通ったタイミングで、声をかけられた。
「あずちゃん!」
浪川君の声だった。アシタカの衣装を着た彼は教室から廊下に出てきて、驚いた様子で私の姿をまじまじと見ていた。
「...似合ってる。アリスの仮装。可愛い。」
そう言うと、笑ってくれた。
「...ありがとう。友達が色々やってくれたおかげで、こんな感じです。浪川君もアシタカ似合ってるね。」
浪川君が褒めてくれたのが、少し照れくさかった。
「...写真撮ろうよ、一緒に。いい?」
彼の申し出は意外だった。
「アリスとアシタカだと、全然世界観違うけどね。それでもよければ、どうぞ。」
アリスとアシタカの仮装姿が並んでいるのを、想像して、そのおかしさに笑いながら、私は答えた。そんな私たちの様子を見ていたことちゃんは
「...やっぱり、こうあるべきだよね。うんうん。では、私が写真を撮りましょう。」
そう言って撮影係を申し出てくれた。
廊下で浪川君と二人並んで、ことちゃんに写真を撮ってもらうと、
「ありがとう。あずちゃん、本当にその仮装似合ってるから、撮れてよかった。じゃあまたね。」
浪川君は満足したように、教室に戻っていった。
「...やっぱり、イケメンはいちいちスマートだよねー。これは、かなり差をつけられてる。」
ことちゃんは、また、ぶつぶつ呟いていた。




