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ドリーマー  作者: 滝本泉
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 文化祭で、私は衣装担当のリーダーになり、あずにゃんはクラス展示、林と笹井は行灯担当になった。私と林の意見としては、笹井もあずにゃんと同じクラス展示担当になって、作業中も仲を深めて欲しかったが、美術部の男子数人がクラス展示担当になったことから、圧倒的に男手が必要な行灯担当に、笹井は林と共に回されたのだった。

衣装は私を含む4名で作製しており、男子のトランプ兵、女子のチェシャ猫と、時計ウサギの耳と尻尾、その他のアイテムを他の3人に任せて、林が使うマッドハッターの帽子、ハートの女王とアリスの衣装を私が担当することになった。

こうして始まった文化祭準備期間初日、マッドハッターの帽子のサイズ合わせのために、メジャーで林の頭囲を測っていた。

「55cm…林、顔小さいね。日本人の成人男性の頭囲の平均って58cmらしいよ。これは、横に並びたくないな。」

私は苦笑いしながら、林に話しかけた。

「頭小さいから、メンズの帽子がなかなかサイズ合わないんだよね。ぶかぶかで。レディースの帽子被ってることもあるよ。小さいのは小さいので悩ましいんですよ。」

林も苦笑いしていた。

「可哀想かもしれないけど、やっぱり比べられるから並びたくないなぁ。私と並ぶときはちょっと前に出てね。常に。」

「いや、矢崎が常にちょっと下がれば良いじゃん。」

「私は面倒くさいから。」

「なんでだよ、俺も面倒くさいよ。」

いつものように他愛もないやりとりをしながら笑い合っていた。

林は行灯の作業をするために体育館に向かい、私は教室で衣装担当の女子達と話しながら作業を始めた。

「トランプ兵、こんな感じで良いかな?」

衣装担当のバスケ部の彩綾ちゃんが試作品を見せてくれた。ハートのAの絵を描いた白い紙を貼り付けた段ボール2枚を肩紐で結んで、住宅展示場の人間看板のようになっている。

「良いんじゃない!トランプ兵っぽい。女子の衣装に比べると、かなり簡易的だけど、そこは許してもらおう。」

私が言うと、

「全部の衣装、時間をかけて作ってたらキリがないから、いいんじゃない?女子の衣装が可愛い方が、良い順位になりやすいし。」

衣装担当で同じくバスケ部の絵麻ちゃんが笑いながら話していた。

もう1人の衣装担当は真理子ちゃんで、黙々とチェシャ猫の耳を作ってくれていた。

「男子は林以外みんなトランプ兵でいいんだよね?」

彩綾ちゃんに聞かれ、

「うん、その予定。林は元々オレンジのジャケット持ってたから、それ流用させたもらうつもり。帽子さえ作ればOKだからね。」

そう答えると、

「林君、マッドハッター似合いそうー、スタイル良いもんねー。」

絵麻ちゃんがしみじみ話していた。

「やっぱ、等身のバランスいいって羨ましいよねー。今まで何も考えずに横に並んでたけど、これからは顔の大きさ比べられる可能性もちゃんとと考えよう。」

私が笑いながら、話すと、

「えー、でも2人お似合いだよー。仲良いもんね。」

彩綾ちゃんがニヤニヤしながら言っていた。

「ここだけの話さ...付き合ってないの?2人。」

絵麻ちゃんに質問された。この手の質問も、今までたくさんされてきているので、こちらとしては慣れたものだ。

「付き合ってないよー。気が合う仲の良い友達。」

いつものように私は営業スマイルで答えた。そして、自分の話題を逸らすようにしてる。

「彩綾ちゃんと、絵麻ちゃんはどう?2人の話、聞きたいー。」

私が質問すると、2人は自分の恋愛話をしてきた。彩綾ちゃんは、バスケ部の男子と1年近く付き合っているので、馴れ初めと近況聞き、絵麻ちゃんは、なんと同じクラスに気になる男子がいるらしく、一通りその話で盛り上がった。

結局、自分の恋愛話をしている時の彼女たちの様子が一番楽しそうだった。みんな、恋愛について話している姿はキラキラしていて素敵だ。自分には分からない感覚だけど、あの表情を見れば、みんなが恋愛を楽しんでいるのだとよく分かる。

ふと、クラス展示の準備をしているあずにゃんを見た。彼女は集中してペーパーフラワーを作っていた。美術部の男子が中心になって製作しているので、装飾には彼らのこだわりが詰まっており、膨大な量のペーパーフラワーを壁一面につけるとのことだった。真剣に作業をするあずにゃんの横顔は、凛としていてきれいだ。ふと、いたずら心が湧いた。私は完成したチェシャ猫の耳を持って彼女の元へ向かった。

「あずにゃん、お疲れ様。どう?作業順調?」

私が声をかけると、パッと顔を上げ、

「ことちゃんお疲れ様。とりあえず言われた通り、ひたすらペーパーフラワーを作ってる。衣装はどう?」

笑顔でそう話してくれた。

「男子たちのトランプ兵とマッドハッターの帽子は目処が立ちそう。で、チェシャ猫の耳、試作品できたから、あずにゃん付けてみてよ。」

そう言って、チェシャ猫の耳を見せると、

「え?私付けちゃっていいの?別の子が付けるやつなんじゃない?」

そう言って戸惑っていたけど、

「あくまで私があずにゃんが猫耳つけてるところを見たいだけ。お願い〜付けて見せてよ〜、作業続いて少し疲れちゃったから、癒しをちょうだい。」

私がおどけたように言うと、あずにゃんは苦笑いしたあと、

「私が付けても癒やしになるか分からないけど...」

そう言って困ったように笑っていた。

私が彼女に猫耳を付けると、やっぱり予想通り可愛かった。

「えー可愛い!似合う!写真撮るねー。」

私がはしゃいで写真を撮ると、

「そんな、たいしたことないよ、恥ずかしい。」

そう言って、照れていた。これは笹井が見たら喜ぶだろうな。つくづく、彼がクラス展示担当になれなかったのが、悔やまれる。作業中は話も弾むし、仲良くなるにはもってこいなのだ。

日中の作業は学校が閉まる20:00まで行われた。残りの工程を考えると、家に持ち帰って続きの作業をやらなければいけないことは確実だった。夕方頃に林から、いつものファストフード店で夜ご飯を食べないか誘われていたので、私は持ってきていたミシンと材料をまとめて、大型のボストンバッグにしまっていた。片付けをしていると、林が教室にやってきた。

「矢崎、お疲れ様。それ持って帰る荷物?」

林は私のボストンバッグを指さして聞いてきた。

「そうだよ。やっぱり家でも作業しないと間に合わなそうだから、持って帰る。」

私が答えると、

「重いでしょ。持つよ。」

そう言って、ボストンバッグを持ち上げてくれた。

「ありがとう、朝持ってきた時、肩痛くなっちゃったから、正直助かる。でも、重いだろうから、途中で交代するからね。」

私がお礼を言うと、

「大丈夫だよ。俺、筋トレしてるから意外と筋肉あるよ。」

そう言って笑っていた。

2人でいつものファストフード店に入り、衣装と行灯の進捗具合について、話し合っていた。

「行灯どう?順調?」

私が聞くと

「リーダーの高野と、サッカー部らへんが中心になってやってるから、俺とか陽介は指示に従って動いてるだけで、全容はまだよくわからないんだけど、とりあえず今のところは揉めずにやってるよ。衣装はどう?」

林はそう答えていた。

「男子たちのトランプ兵は、目処が立ちそう。林のマッドハッターの帽子は大体できたよ。明日タイミングいい時に教室来て、付けてみてね。微調整したいし。帰ったら、ハートの女王の衣装から本格的に作り始める。明日はあずにゃんの採寸もしないと。ぶかぶかよりもピッタリの方が、アリスの服の形的に可愛いだろうから、あずにゃんの体型にしっかりサイズ合わせなきゃ。やることたくさんで頭パンクしそう。」

私は話しながら、今後の作業量の多さを想像して、苦笑いしてしまった。

「大変じゃん。無理しないでね。ちゃんと他の衣装のメンバーにも頼りなよ。」

林は心配そうに私のことを見ていた。

「ありがとう。でも、チェシャ猫とかの衣装は他のメンバーに頼んであるし、アリスとハートの女王はこだわりたいから自分の手でやりたいんだよねー。あずにゃんのアリスめちゃくちゃ可愛くしたい。」

彼女のアリス姿を想像して、私は思わず顔がニヤけた。

「そこまで気合い入れて作った衣装楽しみだなー。」

林は笑顔で話を聞いていた。

「明日も学校にミシン持って行くなら、朝、家に迎えに行こうか?重いでしょ。」

「えー、ありがたいけど、さすがに申し訳ないよ。私の家そこそこ遠いし。今朝も1人で持って来たから、大丈夫だよ。」

「いいよ、筋トレになるし。それに頑張ってる矢崎応援したいし。たぶん今日も夜遅くまで作業するんでしょ?寝不足で重い荷物運んでて、怪我でもしたら大変だし。いいよ。迎えに行くから。」

正直、重い荷物を運んでもらえるのはとても助かるので、ありがたくその言葉に甘えることにした。

「本当?じゃあ、よろしくお願いします。助かるー。林、本当にいい人だね。」

私がお礼を言うと、

「良いんだよ。同じ”地球の人”なんだから。」

林はそう言って笑った。









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