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ドリーマー  作者: 滝本泉
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 「見つかってよかったー、高かったからさ、これ。」

リップが見つかったと連絡をくれた、ことちゃんと林君と合流した。

「よかったね。どこにあったの?」

「落とし物として届けられてた!心優しい誰かに感謝です。」

ことちゃんは頷きながら言っていた。

「じゃあ、もう時間もないけど、最後にお化け屋敷行っておく?」

林君が言ったので、2年4組に向かった。

「あずにゃん、お化け屋敷平気?」

「...今まで行ったことないから分からない。たぶん目をつぶって通り抜けると思う。怖いから。」

一度だけ、家でホラー映画を見た時も、怖い場面になると両手で目を覆い、気になった時だけ、指の隙間から覗いたことを思い出した。

「なるほど。私、驚くと、手を振り回しちゃうから、林と行くね。殴っちゃう可能性が高いから。」

ことちゃんに指名された林君は、

「なんで、俺なら殴っていいんだよ。手加減してよ?」

そう言って笑っていた。

「笹井、ちゃんと、あずにゃんゴールまで連れていってね。」

「分かってる。」

ことちゃんは、笹井君に釘を刺した。

先にことちゃんと林君が入った。中からはことちゃんの声が聞こえる。

「ちょっと、これ踏んでも大丈夫?!わっ出てきた!待って!普通に怖い!」

ことちゃんの声を聞くと、入る前から怖くなってきた。

「山下、大丈夫?」

笹井君は私の様子を見て、心配そうに声をかけてきた。

「お化け屋敷に入ったことないから、自分がどんなリアクション取るか分からない...。

ちょっと、笹井君のシャツの裾掴んでてもいい?先に進んでもらえる?」

だんだん怖さが増してきた、私はお願いした。

「...好きに掴んでいいよ。」

笹井君は軽く笑って答えた。

いよいよ私たちの番になり、彼に先に入ってもらう。

入ると、窓からの光は完全に遮られており、真っ暗だった。出口付近から、ことちゃんの

「行って行って行って!!早く!!林!!」という叫び声が聞こえてきた。私は怖さの限界を迎え、笹井君を頼って、完全に目を瞑ることにした。彼のシャツの裾を握りながらピッタリと後ろについて歩く。周りから、驚かすための、叫び声や、風、水飛沫などがかかってくるが、目をつぶってるので、何が起こってるかは分からなかった。ただ、何かが起こるたびに、私はビクビクしてた。笹井君はビクッと身体を動かすことはあっても、大きく声を上げることはなく、最後の直進で軽く駆け足になり、ゴールまで辿り着いた。

外に出ると、ことちゃんと林君が待っていた。

「おかえりー、どうだった?2人ともめちゃくちゃ静かだったけど。」

ことちゃんに感想を聞かれ、

「...怖くてずっと、目を瞑っちゃってた。笹井君のシャツの裾を、音とかに驚くたびにものすごい力で握ってたと思う。」

そう言って、笹井君のシャツの裾を見ると、私が握っていたところだけ、明らかにくしゃくしゃになっていた。

「あ!ごめん!すごい皺ついちゃってる! 」

私がそれに気づいて、焦ってると

「本当に、そこだけ、シワシワじゃん!あずにゃんの恐怖が伝わる。」

そう言って、ことちゃんは笑っていた。

「大丈夫だよ。洗濯すれば、すぐ治るだろうし。」

笹井君は気遣って返事してくれた。

「矢崎、リアクションデカすぎてすごかったよ。最後の直進で、壁から手が出てきて。壁ごと動いてくるじゃん?早く行けって、背中叩かれすぎて、痛かったー。赤くなってない?ここ?」

林君は笑いながら背中を指さしてた。

「だから、ごめんって。あれは壁ごとくるとは思わなくて、叩いちゃった。」

ことちゃんは笑いながら謝っていた。

4人で笑いながら話していると、

“なんだか、青春っぽいな。”とぼんやり思った。

こういう思い出を、大人になってから、青春として思い出すのかもしれない。


 17時になり、生徒全員が体育館に集められ、結果発表が始まった。

行灯部門から各学年ごとに発表される。発表の時には、舞台上のスクリーンに行灯の写真が大写しになる。各学年、3位から順に1位まで発表され、発表の度に大きな歓声が上がる。

いよいよ、3年生の番になった。全員が固唾を飲んで見守っていると、我々のチェシャ猫の行灯が2位と発表された。

「あー、2位か。完全優勝狙ってたのに。」

ことちゃんは少し悔しそうだった。

「まだ、衣装と展示あるからね。そこがよければ総合優勝はあるよ。」

林君は慰めるように言っていた。

次に衣装部門が発表される。ことちゃんは祈るように両手を握りながら結果を待っていた。

3位は1組、2位は5組で、1位で我々6組が呼ばれ、スクリーン上に私たちの仮装写真が写された。クラスメートから大きな歓声が上がった、

「やったー!頑張った甲斐があった!」

ことちゃんはガッツポーズで喜んでいた。

「よかったね!頑張ってたもんね。」

私も笑顔になった。

展示部門も6組が1位と発表された。

「あずにゃん良かったね!」

ことちゃんは拍手で称えてくれた。

「ありがとう〜皆のおかげだよ。ペーパーフラワー作り続けた甲斐があった。」

残すは総合順位の発表を残すだけになった。

全ての部門の得票数を加算して、一番投票数の多いクラスが総合優勝となる。ことちゃんは

「3年6組、3年6組、3年6組...」

と小声で呟いていた。

3位、2位と発表され、緊張感が高まる。

「3年生の総合順位、第1位は...3年6組!」

発表された瞬間、クラスメート全員が歓声を上げた。みんなでハイタッチをして喜びを分かち合った。

「山下、お疲れ様。」

笹井君が両手を出してきたので、私もハイタッチで応えた。

「笹井君もお疲れ様、良かったね。優勝できて、嬉しい。」

クラス全員が大盛り上がりの中、閉会式は終了した。

 興奮した雰囲気の中、一旦クラスに戻り、参加者は打ち上げに移動することになっていた。

廊下を歩いてると

「あずちゃん、おめでとう。優勝。」

浪川君がそばまで歩いてきた。

「ありがとう。みんなで頑張ったから、嬉しかったよ。5組も、2位おめでとう。」

浪川君たちの5組は総合順位2位だった。

「ありがとう。リーダーたちは落ち込んでたけど、正直、衣装も展示も6組が強いのはみんな分かってたから、2位取れて良かったねっていう雰囲気だった。...腕どうしたの?」

浪川君が、私の右腕を指差して聞いてきた。午前中に負った火傷で、今は大判の絆創膏を貼っていた。

「あぁ、これ?クラス展示の調理で、油飛んできて、火傷しちゃって。でもちゃんと保冷剤で冷やしたから、もう大丈夫。」

そう答えた後に、保健室で笹井君と過ごした時のことを思い出し、少し顔が熱くなった。

そんな私の様子を見た浪川君は、少し考えた後、

「...6組も打ち上げあるの?参加する?」

そう質問してきたので、

「あるよ、参加する。食べ放題だから、たくさん食べるつもり。」

私が答えると

「じゃあ、うちのクラスと場所一緒だな。うちのクラス18時から予約してるけど、6組は?」

市内で大人数で利用できるレストランは少なく、食欲旺盛な高校生たちには、ここのビュッフェレストランが一番人気だった。

「一緒の時間だよ、18時から20時。」

そう答えると、浪川君は私の顔をじっと見た後に、

「今日、打ち上げの後、一緒に帰らない?」

昨日のクラス展示で、一緒に回らないかと誘われたときも意図を図りかねたが、2回も誘われると、いよいよ、よく分からない。

「えーっと、今日は約束があって、難しいかな。ごめんね。」

そう言うと、浪川君は少し黙って何かを考えていた。しばらくすると

「わかった。また誘うから。」

そう言って、軽く笑うと立ち去っていった。










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