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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


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第13話(5)氷の監視者と、ほどけない鎖 ―― 氷の隙間

◆◆◆


ゼピュロスとボレアスの沈黙が続く中、俺は腕を組んで天井を見上げた。

外套はまだ姿勢を強制しようとしているが、だいぶ力が落ちてきた。保管庫の冷気は相変わらずだが、さっきより少しだけ空気の質が変わった気がする。最初みたいに「ここから出ていけ」と押し返す一色じゃない。妙な言い方になるが、こっちを測りながら黙っている感じだ。


どうやってボレアスを助けるか。

鎖は空間と繋がっていて、雑に引き剥がすと均衡が崩れる。ボレアス自身も、すぐには動けない事情がある。理屈は見えた。でも理屈だけで動く相手なら、ここまで厄介にはなっていない。


俺が考えていると、不意にリィナが前へ出た。


直也「リィナちゃん?」


リィナは返事をしなかった。ゆっくりと、でもまっすぐに、ボレアスの前まで歩いていった。防寒外套が彼女の背筋を無理やり伸ばしているせいで、よけいに不器用な真っ直ぐさに見える。


ゼピュロス「ちょっと、リィナ! 近づきすぎ!」


ポン太「旦那、止めるか?」


直也「……いや、今は待とう」


ボレアスがリィナを一瞥する。


ボレアス「また小娘か」


リィナ「……ボレアスさん」


ボレアス「何じゃ」


リィナ「ずっと、ここにいるんですよね」


ボレアス「そうじゃ」


リィナ「寒くないんですか」


極めて単純な問いだった。難しい言葉も、理屈もない。ただの生活感から来た、真っ直ぐすぎる一言。

俺は思わず息を止めた。そんな聞き方があるのか、と少しだけ驚いた。ボレアスの事情とか理とか鎖の構造とか、そういうものを全部すっ飛ばして、「寒くないんですか」だ。


ボレアスは少し間を置いた。


ボレアス「寒さとは、感じるものではない。在り方の一部じゃ」


リィナ「……それって、寒くないんじゃなくて、寒さに慣れてしまったってことですか」


ボレアス「……」


リィナ「誰かのために我慢しているなら、つらいですよね」


ボレアス「妾は我慢などしておらぬ」


リィナ「そうですか」


リィナはそこで引かなかった。だけど、押しつけもしなかった。ほんの少しだけ首を傾げて、いつもの家事の相談みたいな声音で続けた。


リィナ「でも、寒いところに長くいると、最初は冷たいって分かるのに、だんだん分からなくなってきますよね。痛いのに、慣れたから平気だと思い込んでしまうというか……」


ボレアスの睫毛が、わずかに揺れた。


リィナ「私、お洗濯の時に冬の井戸水を使うことがあって……最初はすごく冷たいのに、続けていると、自分の手がどうなっているのか分からなくなるんです。だから」


リィナは一度だけ息を吸った。


リィナ「どうして、あんなに寂しそうな空気がするんですか」


沈黙だった。長い、冷たい沈黙。

だが、ボレアスの氷の瞳が、ほんの少しだけ揺れた。怒りではない。動揺でもない。もっと古い、長い時間をかけて固めてきた何かが、一枚だけ薄く剥がれたような揺れだった。


ボレアス「……貴様には、関係のないことじゃ」


その声は、さっきより少しだけ低かった。完全に切り捨てる声ではなかった。


リィナ「そうですか」


リィナは頷いて、静かに一歩下がった。それ以上は言わなかった。押しつけがましくなく、ただ言葉を置いて離れた。


直也……リィナちゃん


俺は何も言えなかった。俺が百の言葉を尽くしても届かなかった場所に、あいつはたった数言で触れた。

ボレアスの理屈を崩したわけじゃない。言い負かしたわけでもない。ただ、理屈の外側にある「冷え」を、生活の言葉で指さした。それだけで、あの氷みたいな少女の視線が揺れた。


ゼピュロス「……」


ゼピュロスも珍しく黙っていた。ボレアスを見る目が、さっきとは少しだけ違う。

ムカつく相手を見る目のままではある。だが、そこに「分からないけど嫌だ」だけじゃない何かが混じり始めていた。


ポン太「へへっ。さすが小娘。旦那より先に、氷の隙間を見つけやがる」


直也「笑うな。俺だって一応考えてたんだよ」


ポン太「考えてただけだろ」


直也「否定はしない」


ALMA『観測記録を更新。対象ボレアスの外部反応に、明確な揺らぎを確認しました。原因はリィナの発話内容に起因すると推定。……補足。理屈ではなく生活経験に基づく言語が、対象の防御的応答を部分的に鈍らせています』


直也「お前、今のをそんな分析の仕方するのか」


ALMA『事実です』


直也「事実だけど、もう少し言い方ってもんがあるだろ……」


リィナは何も言わず、元の位置へ戻ってきた。

その横顔は、少しだけ強ばっていた。怖くなかったわけじゃない。ただ、それでも聞かずにいられなかった顔だ。


ボレアスは再び静けさを纏っていた。

でも、さっきまでと同じ静けさじゃない。

ほんの少しだけ、そこに隙間ができた。

氷はまだ厚い。だけど、完全な一枚岩じゃなくなった。

その程度の変化が、今は十分に大きかった。


◆◆◆(氷の隙間)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回更新予定:6月23日(火)になります。

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