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42.復讐は蜜の味

王宮の豪華な庭園では王族が勢揃いしているにも関わらず騎士の姿は見えない。

これからやる事に手出しされたら面倒だとダーディナ様の魔法の力で危険を回避出来るようにしてもらった。


「おい、剥がれかけているが大丈夫か」


わらわらと侍女達が集まっているのを傍観しているといつの間にか側に来ていたダーディナ様が真顔で言ってきた。

私は両手で顔を覆い隠しながら原因を考える。

汗をかくことはしていないし、水の側にも近づいていない。

油か!?

皮脂が剥がれ落ちている原因か。

でも先程まで一緒に居た侍女達は何も言っていなかったのにもしかして虐め?

これから私がやろうとしている事に対しての抗議かも。


「化粧の話じゃないよ」


反対隣に音も無く寄ってきたのはマキスト様。

顔を上げると苦笑しなあがら私の頭を優しく撫でた。

こうして並んでいると双子のように似ているのに周りはそんなに騒がないのが不思議。

ああ、ダブルのイケメン。


「では剥がれるとは何の事でしょうか」


「玲子の話だ」


急に出てきた名前に理解が追い付かなくてただ首を傾げるしか出来ない。


「レイディアから玲子が剥がれる。そのままの意味だ」


玲子が剥がれる。

何となく、ああこれがそういう事かという気分になった。

王太子から襲われた辺りから何かが食い違っているような気がしていたのだ。

釦の掛け違いのようなしっくりこない気持ちに何とも言えない違和感というか、自分では表現しきれない気持ちに戸惑っている。


「これも成長の一つなのかもな。ま、存分にやればいい」


ダーディナ様が勝手に自己完結して離れてしまうとマキスト様も一緒に行ってしまわれた。

王太子に近付くのを見ると、これから私がやる大罪にダーディナ様も準備をしてくれているのだなと分かった。

観覧席のように椅子が並べられた所には王妃様までお越しになられているではないですか。

そんなに大事にはしたくなかったのになと考えていた所にダーディナ様が戻ってきた。


「準備は出来たぞ」


「ありがとうございます」


これから王太子にする事は彼の怒りに火をつける事は必至。

攻撃や反撃はしない約束だが、この人は堪えられない事がままあるのを知っている。

だからこそダーディナ様の魔力で王太子の体を安全に拘束させて頂いた。

この頃の王太子の態度は驚くほど悪くなっているから仕方がない。


「私にこんな格好をさせて何をするつもりだ!」


そんな彼は既にご立腹のようで庭園のど真ん中、シルクのような薄いのに上質なシャツと同じ生地のパンツで立ったまま動かずに睨んできていた。

どうしてこんなに敵対心剥き出しなのか、そんなに嫌われるような事をした記憶はないのだが。


「それでは失礼致します」


王太子の目の前までゆっくり進んでは攻撃されない事を確かめながら目を見つめる。

こんなに真っ直ぐ目を見るのは一体いつぶりなのだろう。

聖女召喚の前は建前で仲良くしてもらっていたのだが、その時には少なくとも目を見て会話をすることが多かった気がする。

懐かしく思っているのは私だけのようで、王太子は不自由な体を動かそうと、もがき苦しんでいるようだった。


「お前…こんな事をしてただで済むと思っているのか」


「陛下より不問にするとのお約束を頂いております」


「ふざけるな!!」


野良犬が恐怖で唸り牙を剥くというのを聞いたことがあったが、今の王太子が正にそのような状態。

こんなに怒りを露にしているのに動かないのを見るとダーディナ様の魔力は間違いなく王太子を拘束しているとみた。


「まずは私から言いたい事を言わせていただきます」


「くそっ」


拘束を解こうともがく王太子に一歩近づいてお腹に力をいれる。


「私との婚約は王太子殿下の一存でなったと聞いています。それなのに用がなくなったら解消?謝礼をやるですって?人を何だと思っているの。恋に落ちたのなら仕方がないとでも思うのですか。それならそれ相応の態度というものがありましょう。王妃様に黙って王子妃の教育を私が聖女様にするなんて貴方の頭は大丈夫でしょうか。私はこの国の行く末が心配になってしまいました。婚約破棄をして清々した気持ちもあるのでこれ以上は言いませんが、上に立つ者の度量の大きさをお示しくださいませ」


「煩い…煩い…」


「それと人とは力の差がございます。特に貴族の夫人やご令嬢は非力な者が多いものと思われます。その者達は貶めたりするものでも力で従えるものでもございません。況してや夜の暗闇に紛れて乱暴するものではございませんのよっ!」


国王と王妃が観覧する中での事、不問にするとの約束はしているが最低限の礼儀と言葉遣いには配慮したが中身はなんとも説教くさくなってしまった。

これまで言えなかった事を言ったあとに王太子の来ていた物を引き裂いてやった。

見学していた侍女達は未婚の令嬢達の集まりなものでピンクい悲鳴がそこらで沸き上がっている。

王太子に乱暴されて寝間着を破られた恥ずかしさを体験させてやりたかった。

でも破いただけだったら恥ずかしくもなんともないじゃない。

だから観覧に侍女達の配置を希望しておいたのだ。

そして王太子の服は上だけでなく下も。

しかも王太子は動けないときた。

何これ、楽しい!

さあ私にした事を存分に反省しやがれ。


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