36.作戦会議
俯き加減のダーディナ様はまだ踏ん切りが付かない様子で硬直していた。
それをただゆっくりと待つように寄り添うアリーレラス様の姿は聖母のようである。
「直ぐには無理だ」
「それは勿論。私だって今すぐ止めろなんて言わないわ」
「それに……それに…アリーと一緒に居られなくなるじゃないか」
「私はどんな形であっても貴方の側を離れる事はないわ」
「私も君と離れる事はない」
ピンクの空気に居た堪れなくなる。
私はここにいて邪魔じゃない?
目の前でイチャイチャし始めた二人に口を挟むことが出来ずに置物としてそこに存在だけしていた。
抱き合ってチュッチュし始めた辺りからは体を揺らしてみたり、咳払いをしたりと存在をアピールしてみたけど後の祭り。
美男美女の仲睦まじい様子に邪魔をせず落ち着くのを待った。
「そういえば居たんだな」
「ええ、どこにも行きようがないもので」
一頻りいちゃついてから私の存在を思い出したダーディナ様は晴れやかな顔で始めて笑顔を見せてくれた。
これはアリーレラス様の恩恵なんだろうな。
私の嫌味にもどこ吹く風だ。
「レイちゃんと私は王宮に戻るとしましょうか」
「レイちゃん?」
「え…」
マキスト様に戻るアリーレラス様に変なあだ名を付けられて困惑する私と一瞬で暗く落ち込んでしまったダーディナ様。
三者三様の様子に収集不可能。
「だって前世は玲子で今はレイディアでしょう?どっちもレイだからレイちゃん!」
太陽のように明るい笑顔を見せるマキスト様の顔のアリーレラス様はきっと大勢の人に慕われて人気者だったのだろうと思う。
彼女がダーディナ様を選らんでいなかったらこの人はもっと暗くて人助けなどするような人にはならなかったかもしれないなんて思ってしまった。
「それで大丈夫です」
「私はマキストで通しているからマキストでよろしくね」
「分かりました。宜しくお願い致します、マキスト様」
ちゃんと見るとマキスト様はダーディナ様に似ていらっしゃる。
ダーディナ様をモデルにして作られたものなのが分かる位だ。
サラサラの銀髪が似合うイケメン。
ただ瞳の色だけが違っていた。
ダーディナ様とアリーレラス様にご子息が居たらこんな感じのイケメンなんだろうなという妄想は捗る。
「……二人で盛り上がるな。私はここで留守番なのに」
「貴方も一緒に行こうよ。これまでの事もこれからの事も国王に説明する人は必要だし、レイちゃんが説明しても信じてもらえるわけないからさ」
「アリーも一緒?」
「勿論!」
駄々を捏ねる幼子のようなダーディナ様に不安が過る。
ここまで凄い魔法を使って国民を守っていると言っているが、大人と話している気があまりしない。
アリーレラス様の事が第一で、それ以外は魔力の事以外に関心が向いていない。
多くの事を考える事が苦手そうで、それを補っているのがアリーレラス様のような感じが強い。
「でも見た目はマキストだから側には居れないから」
「え…」
「マキストは王太子の護衛で、これからも監視として側に居る為には正体を明かす事は出来ない。ダーディナと一緒に居たら怪しまれるし、ダーディナの信用も得られない」
ふと疑問が出てきた。
前世からお世話になっている私は疑う余地もなく力を知っているが、王族との話し合いでどうやって信用させるのか。
追放で名前や姿が継承されていない建国王の弟。
それをどうやって証明するのだろうか。
「大丈夫だよレイちゃん」
マキスト様がダーディナ様のローブをはだけさせた。
え。
「ちょっ、何しているのですか!?」
「ここ、見て」
胸の中央から少しだけ左よりの心臓がある辺りに青い痣が存在していた。
一見どこかにぶつけたのかなと思わないでもないが、良く見ると片翼のように見える。
「羽…ですか?」
男性の裸体をこんなに直視していいのだろうかという思いとこれは何なのかと明らかにしたい思いに苛まれた。
でも最後はしっかり観察しましたとも。
「王族には男女関係なく全員この痣がある」
「これが…」
確かにあった。
彼は子供の頃に怪我をして痕が残ったと言っていたが王族の証だったとは知らなかった。
「この痣は王族しか知らないんだ。配偶者とか侍女侍従、執事にも周知されていない事で血筋の繋がりがある人間にしか知らされない。私も知らなかったし」
「捏造を避けるためだ」
これまでの王族でも遊び人っていたんだなぁという感想しか出てこなかった。
「それなら大丈夫なんですね?」
「今の王がアホでなければな」
今のヘライルよりは普通の思考回路の人だったと思いますとは言えなかった。
聖女に傾倒し始めている王族の人達の誰かに話が通じればそれで良い。
「では話し合いはダーディナが。私はレイちゃんをエスコートするよ。彼に少しでも焼き餅焼かせないと!」
楽しそうなマキスト様はちょこちょこ女性らしいアリーレラス様が出てきているが大丈夫だろうか。
今までのマキスト様にはそんな様子は窺えなかったが、この空間がそうさせているのか。
「では行こうか」
ダーディナ様がローブをきっちり着直してから手を軽く振ると空間に裂け目が出来る。
本当に見たことがない魔法が次々と使えてしまうダーディナ様に尊敬と共に少しの不安を感じてしまった。
本当にこんな凄い魔力を民に返して良いのだろうか。
チェリーナ姉様のお父様のように魔法の魅力に取り付かれて研究をし、怖いものを生んでしまう人達が出てくるのではないかと。
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