32.ミラリューク建国物語
これは遥か昔の物語。
ある兄弟の兄は魔力がほぼ無く、弟には多大な魔力があった。
兄には剣と知略の才能があったが、弟には戦う才は無かった。
兄には武将になる素質と民衆からの支持があった。
弟には婚約者からの愛と魔法使い達からの妬みがあった。
その二人が住んでいた国では暴政が普通で民達が虐げられている現状が問題にすらなっていなかった。
政治に関与する者達は皆、それを当たり前のように受け入れていた。
国外に逃げたくても大国である国を出て無事ではいられない。
出ていく為のお金も体力もなかったからだ。
そして奪い取る事が生き甲斐の王に命じられて戦で領土を広げてきた兄には限界がきていた。
根っからの真面目人間で人を愛する兄が戦で人を殺しに行く事に迷い、戦の為にと国民に無理を強いている事にも矛盾を感じていた。
そしてその時は来た。
戦のし過ぎで兵達も疲弊している所での出征命令。
兄が反発するも見せしめに仲間を目の前で殺されてしまう。
何もかもが壊れた瞬間だった。
兄は協力者を募り、謀反を企てたのだ。
国民は元より甘い汁を吸っていない貴族達も大勢いた。
彼らの手を借りて国王とその周辺の悪どい貴族達を一網打尽にしたのだ。
兄は人々からの熱い支持を得て玉座に座ったのだった。
兄の名前はダッタルシア・ミラリューク。
それがこのミラリューク国の始まりである。
そして物語は皆、幸せに暮らしましたとさ。
では終わらなかった。
暴政のおこぼれを頂戴していた者達はまだそこに居る。
そして前国王によって進められていた問題が明るみに出た。
《不老不死の研究》
魔法の中で生死に関わるとされている闇魔法は不老不死に関係するとされていたが誰も成功したことのないもので、術式の過程で異形の生き物を生む危険なものであった。
前国王が死んだ後も続けられていたという事にも驚いたが、それを推し進めたのは弟であった。
兄である新国王にそれが知れると直ぐに弟の国外追放が言い渡される。
死刑ではなかったのは前国王の命令で拒否出来なかったと判断された事と、建国時に血を流す事は避けようとする意見があったからだ。
国外追放よりも弟の心を傷付けたのは兄の一言。
「馬鹿な奴だ。愚かな事を…」
全ては兄の為だった。
前国王の口車に乗せられて兄の為にと研究を重ねてきた弟には生きる理由が無くなってしまった。
兄の為と騙した前国王に復讐したい衝動に駈られた。
だがもう既に兄によってこの世の者では無くなってしまっている。
弟はこの国が繁栄し、皆が幸せになれば復讐になるのではないかと考えた。
魔力が多過ぎると駄目。
無さ過ぎても駄目。
前国王のような者は掃いて捨てるほど存在する事を知っている。
だからこの世界の人達の魔力を自分の体に吸収し続けて均等を保つ。
そうすれば悪い事を考える人間も減るはず。
だが、魔力過多の人間は破裂してしまう事は分かっていた。
そしてここで前国王の支持でやっていた研究が役に立つ。
弟は自分に不完全ではあるが不老不死の魔法を掛け、魔力を吸い上げ続けました。
この国の幸せを信じて
いつまでも見守れるように
自分の存在理由として
弟が魔力を吸い上げると魔力がある人間は平均的な魔力になり、少ない者は無力とされ悪い事が少なくなった。
研究をしたとしても魔力量が足りなくて発展する事はない。
国は人の知恵と力だけで穏やかな発展をしていきます。
兄の作った国は自力で発展を遂げたのです。
弟の願いの通り。
そうして五百年という時間が過ぎ去った時に弟の体に限界がきてしまった。
不老不死の魔法も完全ではない。
弟という容器から溢れた魔力が国に瘴気として出現してしまいました。
人の手から離れた魔力は暴走し、害となる物に変わっていきます。
弟は悩み、更に研究を重ねて一つの答えに辿り着きました。
魔力の無い世界から救世主を呼ぼんで吸収してもらおうと。
そこで母国であるミラリュークに降り立ち、王族に召喚の儀を教えたのです。
弟の体は五百年に一度魔力で一杯になり、異世界の人間を呼ぶのに魔力を誰かに譲渡し呼んだ人間に浄化してもらう。
そしてまた五百年吸い続けるのを繰り返しました。
弟は自分を騙した国王に今でも復讐しています。
兄が築いた国の繁栄を支える事で。
その弟の名前はダーディナ・ミラリューク。
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