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25.娘と双子コーデ万歳

一度王弟を部屋から追い出して美華と共に身だしなみを整えた。

皺くちゃなドレスを着ていた私と寝間着の美華に気付いて素直に廊下で待機の王弟はさながらワンちゃんのようだ。

美華の意向で同じ部屋で準備をした私を観察するように見ているのはまだ母親だと疑っているのだろうか。

違うような気がするが、それならこんなに凝視するのはなぜなのか。


「レイディアさん、お肌綺麗。髪艶々。細いし、可愛い……何か負けた」


頬をぷくっと膨らませる姿は母親に敗北したという悔しさが溢れていて、あの強い視線はこれかと納得した。


「一応侯爵家の娘で王太子殿下の婚約者でしたからね。聖女様も綺麗ですよ」


笑いが込み上げてきて綺麗なドレスに衣装替えした美華の頭を優しく撫でる。

今回は同じスカイブルーのオフショルダー型ドレスが用意され、双子コーデが完成した。

オフショルダーや肘まである白い手袋は慣れないのか肩まで引き上げようとして侍女に止められていた。

こんな短時間で同じドレスを二つ用意なんて王家は本当に聖女に甘い。


「では王弟殿下をお呼びいたします」


「お願いします」


用意を手伝ってくれていた置物侍女は紅茶や茶菓子を用意して頭を下げ、そのまま出ていった。

あんなに監視していたのになんとも呆気ないものだ。


「失礼します」


入ってい来た王弟は勧めるまま一人掛けソファへと腰を落ち着かせ、両手を組んで膝の上に置いた。

話し合う気満々の模様。


「聖女様とレイディア様、逃げるとはどういう事でしょうか。こちらは何不自由なく過ごせるようにと配慮しておりました。ヘライルの暴走や婚約の問題などあるとは思いますが、お二方にとって悪いものではないと思いますが」


「は?」


王弟の言葉に血管を浮き上がらせてドスの効いた声を上げる美華の肩に触れて落ち着かせる。

口を出すものじゃないと納得したのか、口を噤んでまたドレスの肩部分を無意識に引き上げようと触っていた。


「それはそちら側の言い分ですよね。私達は何も納得しておりませんので悪いものではないという判断はどうかと考えております」


静かに反論するも、王弟も納得出来ていない表情。

そこで婚約解消の主が書かれた紙をテーブルに置いた。


「こちらは私と王太子殿下の婚約白紙の証書ですが、今までの時間の拘束やそれに伴うドッズ家の損害が入っておりません。そして王太子殿下との婚約解消に伴い、私のこれからの縁談への影響等を考慮してくれなかった事も残念に思っております」


「だ、だがそれは…」


「はい。これは私の意識が無い内に交わされたものだとしても、ドッズ家当主が関係していなくても、聖女様と陛下の会談で取り交わされた物なので問題には致しません」


私の言葉を聞いて明らかにほっとする王弟は会話が私主導になっている事に気付いていないようだ。


「ですが、聖女様に婚約を強要するのは話が別になります。王族と言えど、聖女様の事に関しては無理に話を進める事は禁忌ではありませんか」


「聖女様を思っての行動です。聖女様の地位を確実なものにするためです」


「聖女様に地位を確立する必要がありません。聖女様が聖女様である事を浄化をもって示しておいでですから」


私の言葉に押し黙る王弟はきっと婚約の話事態には乗り気ではないのだろう。

六歳も年下の令嬢に言いくるめられるような人ではないのだから。


「そしてここからが本題です。王弟殿下がこちらの衣装部屋から出てきた経緯をお聞かせ願えますか。こちらの部屋は聖女様のドレスだけでなく装飾品等が置かれている場所ですよね。そんな所に何の用があるのでしょうか」


王弟の体はビクッと揺れて目が落ち着きなくさ迷い始めた。

組んでいた手をもじもじと動かして当たり障り無い言い訳でも探しているのか。

言い訳なんて言えやしないわよね。


「それ以外にも有る部屋なのですよ?」


「…それ以外?」


扇を開いて口元に当て首を傾げると王弟も困惑した顔で同じ角度で首を傾げた。

私の含みを感じたのだろう、本当に分からないのだから王族は本当に人任せだ。

そんな所は変わっていない。


「聖女様の寝間着や下着類もありますのよ?」


「なっ!?そんな、したっぎなんてっ!」


扇をパチンッと鳴らしながら閉じ、真っ赤になる王弟に向かって突き出す。


「では何故あんな所にいらっしゃたのでしょう。まさかとは思いますが、聖女様の部屋に隠し通路なんてありませんよね?もしあったとしても安易に使用して良いものではありませんでしょうに」


強目の声音で問い詰めれば王弟の大きな体は少しずつ縮んでいった。

着ているいつもの白いローブのせいで団子のように見えてきてしまった。

ああ、日本食が恋しくなってきたじゃない。


「きっと信じてもらえないとは思うが…」


「話してみなければ分からない事もありますわ」


「これを…」


胸元から出してきたのは一冊の古い手帳。

白い表紙は黄ばんで茶色がかっていて、中の紙も少し脆くなっているようだ。

これは昔の聖女の日記。


「初代聖女の日記です。これを持ってある女性に会いたいと願ったら聖女様を召喚した魔方陣が反応を示し、こちらの部屋に居りました」


「それを証明出来ますか」


「証明というのは難しいですが、この日記の解読した方法をお話します。少し長くなりますが、お聞き頂けますか」


神妙な王弟に美華と顔を合わせて頷きあった。


「話をお聞きします」


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